平成27年度事業の概況

 本年度の我が国経済は、第2次安倍政権において導入された大胆な金融緩和政策により、円安に伴って輸出産業が好況を博し、失業率や有効求人倍率が改善され、経済は好循環を示していた。しかし、年央から中国経済の伸びに陰りが見え始め、世界経済は減速傾向に転じ、原油など資源価格が低迷する反面円高が進行して輸出が弱含みとなり、国内にあっては消費増税の影響から引き続き個人消費は伸びず、総労働人口の減少による人手不足も相俟って、全産業において景気の停滞感が強く感じられた。

 加えて、東日本大震災の復興需要、東京オリンピック・パラリンピックの招致成功による公共事業等の推進と相俟って内需の拡大を期待していた処であるが、団塊世代の離職時期を迎え、総労働人口が減少して労働力不足に陥ったことにより、期待していた景況感は得られなかった。

 斯様な背景の中、内航海運を取り巻く環境は、主要元請けオペレーター60社の輸送動向調査によれば、台風などの荒天等による輸送障害に加え、国内需要の低迷から総輸送量は減少傾向にあった。

 特に、貨物船にあっては昨年度に引き続き、自動車が消費増税の影響から抜け出せず、更に若者の車離れが減少傾向となっており、鉄鋼もその影響を受けると共に、中国の廉価な鉄鋼製品の攻勢に晒されて生産・在庫調整を強いられる中、人手不足により建設工事が停滞し、建設資材の受注が低迷したことから輸送量に大きく影響が出た。その他品目も内需の伸びが見られなかったことから、燃料・雑貨を除き軒並み前年度割れと言う状況であった。

 また一方、老齢船は総船腹隻数の71%をも占めており、解撤等処理は依然として進捗せず、安全・安定輸送が危惧される中で総船腹量は増加傾向にあり、船腹過剰状況は解消されないまま運賃・用船料の低迷は続いている。

 更には円安傾向から燃料油価格は高値で推移していたが、下期になって漸く下落傾向になったものの、組合員が厳しい事業経営を強いられている状況は改善されず、閉塞状態が続いている。

 斯様な状況にある中で、本年度に於ける新船建造は、内航主力の499GT型を中心に300~500GT未満船の建造等が進められ、暫定措置事業の現行ルールに基づく建造等受付が最終年度となったことから、例年にない大量申請となった。

 一方、交付金申請の対象となる引当資格を有する船齢16年未満船が1隻存在するも交付金交付申請は為されず、この結果、実質5月期交付金交付受付を以て、交付金制度は終了した。

 また、建造等納付金は政府保証借入金の返済資金に充当され、今年度は50億29百万円返済し、年度末借入金残高は329億71百万円に縮小された。

 更に、運賃・用船料適正化を目的に活動展開している船主連絡協議会では、契約更改に向けた用船料修復運動の一環として、平成15年度を皮切りに毎年、鉄鋼・石油・ケミカル等の各主要オペレーターを訪問し、用船料の修復方協力要請と共に船主とオペレーターが共生していくための意見交換を行って来ている。本年度に於いても毎年算定している「新造船のあるべき船舶経費」を見直し、個々の用船契約交渉の参考資料として提供する一方、九州・博多に於いて地方大会を開催し、船主の意見を聴取して参考にしながらオペレーター訪問を実施した。

 また、数年来社会的問題となっている少子化傾向に伴い、全産業における若年労働力の絶対数が毎年減少傾向にあるが、特に内航海運業界においては船員の高年齢化が進む一方、若年船員の安定的な確保が困難な状況となっている。

 船舶の安全運航に大きな要素を占めている船員労働力の安定的確保と言う課題については、労働条件・労働環境等、組合員事業者自ら魅力ある職場環境の整備を進めると共に、若年船員OJT(船上教育訓練)制度の活用と日本船員雇用促進センター(SECOJ)との連携によるトライアル制度の活用により、若年者の内航海運への就労を促進している処である。

 斯様な中、昨今は労働人口減少の中にあって、船員教育機関への応募者が増加傾向にあり、定員枠から漏れた若者を如何にして海運業界に取り込むか、今後の課題とするところである。

 内航海運業界としては、船員不足問題が指摘されている中で、若年船員の確保と定着率の向上等、労働環境の改善と魅力ある業界構築が急務の課題となっており、小型船に叶った船員養成システムである「一般社団法人海洋共育センター」に対し、当連合会は全面的に支援している処である。

 本年度においても船員労働力の安定的確保問題は、内航海運業界喫緊の最重要課題の一つであった。

 更に、36年度を以て暫定措置事業が収束されることを受け、内航海運活性化プロジェクトチームにおいて「次世代内航海運における事業者と組織の在り方」報告書を取り纏め、平成27年3月18日開催の第319回理事会に提案・承認を得た後、平成27年4月8日総連合会政策委員会に提案した。

 同報告書では、内航海運を取り巻く関係各位の英知を結集し、将来の内航海運のあるべき姿(青写真)「新しい内航ビジョンの作成」を提言したところであるが、現在各位の協力の下、国交省において議論が始められている。

 更に、当連合会はホームページを通して組合員各位への迅速な情報提供とあらゆる情報の共有化推進に努めているが、見やすく親しみのあるページにリニューアルし、一層の迅速な情報提供と共有化に努めると共に、広く一般世間に対する内航海運業界の広報媒体としての定着を目指し、現在も試行錯誤中である。

 斯様な状況の中で、当連合会は多様な問題に対し、構成機関等の審議を通じて広範な意見集約を行い、全海運意見として関係方面へ具申した。

以 上