内航船 船員不足に思うこと

 

人手不足は内航業界だけでなく、物流、建設業界は特に大変な時代に入って行くのでしょう。

問題を提起する前に、少し乗船履歴を書かせて頂きます。

私は、昭和30年代半ばに15歳で内航機帆船に乗船、甲板員見習として雇入れ、主業務は『かしき』という炊事係りで、これをしながらいろいろと教えてもらいました。約1年半。150㌧積みの船に7名乗船していました。当時は乗船履歴が4年以上、20歳以上で航海士の受験資格が出来たので、下船し、航海学院(私立)で3~4カ月の講習を受け受験、取得し、今度は航海士の履歴を付け、また講習を受け、船長(乙種船長、現3級海技士・航海)免状を取得。その後、正式船長を目指し航海士の職歴で乗船していましたが、内航業界の不況で大改革があり、業界では乗る船が少なくなり近海、陸上へとの転籍が増えました。

私も20代半ばで陸上勤務となりました。

当時は海上勤務者と鉱山関係は過酷な労働環境ということで、船員給与は陸上の3倍近くありました。(私の初任給は支給額で6,000円、陸上では2,000円)

また、乗組員数も今では考えられませんが、1,000㌧船で15~18名位。乗船しながらの経験しました。高給料等、荷主の理解もあり、運賃が良かったから出来たと思います。

昭和30年台半ばから高度成長の時代に入り、10年間程は凄い勢いで成長し、国内であちこちコンビナートが出来、輸送量が増え、船腹(数)も増え、乗組員が不足し、休暇も取れない中、給料も大幅にアップしていましたが、昭和46年頃は景気も下り傾向で不況と同時に運賃も上がらず、人件費のアップ等で各社とも経営が圧迫される状況になり、強い海員組合を脱退して、未組織化が進んでいきました。これは乗組員を減らし、人件費を抑えるためです。ちなみに現在の給与は、陸上の1.5倍くらいでしょうか。

その後も内航船員不足の時代が続きましたが、漁船の200海里問題等で内航船は漁船船員の流入でかなりカバーができた状態でした。

現在は、本当に船員補充(特に急な場合)が出来ず、一時停船するという事態が、一杯船主さんに起こっていると聞いてまいす。昭和40年半ば位のまでの内航船員さんは、ほぼ義務教育後乗船し、乗船しながら勉強し、資格をとり職員として乗船。また出身地は瀬戸内、九州の島々の方が大半だったと思います。

今の若手船員さんとでは経済的、考え方等雲泥の差があるのではないでしょうか。例えば、経済的には裕福でなくても、給料が良いので親・兄弟の面倒をみられる。考え方としては、経済的なことがあるので、少々の事は我慢する。また、帰っても仕事がないし、行動範囲が狭いが、乗船していれば、あちこちに行くことができるなどです。

本題の船員不足対策についてですが、組合議事録、業界紙、国交省等の方針、考え方では (順不同)

◎ 若手、女性船員の育成強化

◎ 離職防止対策として待遇面、休暇、居住環境の整備、食事の改善、若手の考え方

◎ 早期免状取得の教育

◎ 水産高校、海員学校等の業界との定期的な情報交換

◎ 荷主への運賃アップの要請

◎ 組合からの船員育成のための補助

◎ 活性化プロジェクト等の活動

◎ 船員もモチベーションの向上

◎ タンカー等の荷役作業、タンク掃除の陸上化への改善

等々ありますが、今回問題提起したいのは、「もっと乗組員さんを大事にして下さい」ということです。内航船員の地位向上が外航、その他の物流機関に比べて著しく低いことにより、船員そのもののモチベーションが保てない事が大きな要因ではないでしょうか。

昔の言い方で三方、即ち馬方(トラック運転手)、船方(船員)、土方(建設従事者)と見下した見方をされてました。(今では禁句でしょう)

そのくせ、この方達が居なければ大変なことになるはずですが、(今、まさに人手不足の最中) 同じ運搬(送)に従事する人を比較すると、外航船員、電車の運転士等と比較して、一般的には かなり下に見られているのではないでしょうか。資格は国家試験で取得しているのです。

船舶は、一旦事故が起きれば大変なことにつながります、特にケミカル船、油送船は積荷の性 格上大変になるため、海技免状以外にいろいろな講習を受け、資格等を取得し、安全運航に努めているに係わらず、荷主側の考えが何か勘違いをしているのではないでしょうか。

出荷主から受荷主への輸送は、船社こそ違うものの、船舶は両荷主を繋ぐパイプラインとして考えた場合、もの凄く大事な生命線のはずです。

何かことがあれば一大事のはずが、現在の荷主側の考え方はとに角、船側には安全を建前に あれもダメ、これもダメ、これは守れ等、何か自分(荷主)の荷物を安全に輸送してくれる船舶に 対し、荷物さえ積み揚げ出来れば良いので、それ以外はさっさと桟橋から離れてくれと、見方に よれば邪魔者扱いされているように思います。

船側は甘える気持ちは当然ありませんが、自分(荷主)の荷物を安全に輸送してくれている船 (乗組員)に対し、愛情、謙虚な気持ちを持って接して頂き、自分(荷主)の会社の大事な社員と いう心で接して貰えれば、乗組員ももっとプライドを持って仕事に従事できるのではないでしょう か。但し、安全に対する考えを疎かにするつもりはありません。

現状で荷役に携わる人達は社員ではなく、場内作業会社に委託されている場合が多いので、従事者は、安全第一ですから、当然遵守事項を守りながら業務に当たっているものと思います(これは当然の事です)。

でも、自分(荷主)の荷物を安全に輸送を委ねているのであれば、社員が出荷時、受荷時、乗組員に労いの言葉の一つでも掛けていただくことによって、乗組員もただ輸送するだけでなく、使命感を持てるのではないでしょうか、ちょっとした積み重ねで、良いプライドが持て、生涯の仕事となり、船員不足解消にちょっとでも繋がるのではないでしょうか。

それと、ケミカル船、油送船等は荷役も早く、雨天も関係なく ハードスケジュールの運航になっています。空船等問題がないのであれば、着桟での待機等を要望したいものです。

日本人の考え方、気持ちは昔も、今も変わりませんが、安全第一ですので、これらは昔と今で 雲泥の差があります。また、人的、時間的に余裕がありませんので難しいと思いますが、私が乗 船していた時代は、荷主側の責任者、担当者が必ず来船し、苦労話しを聞いて貰ったり、時に は船内で一緒に昼飯を食ったりと 人間としての交流があり、また、「皆さん(船員)が安全に、納期 に間に合うよう輸送してくれているので、工場も順調に稼動出来ている」との考え方があり、立場、現場こそ違え 同じ土俵で仕事をしている一体感がありました。

いずれにしても、船員としてプライドを持って仕事が出来る環境を作るためには、国交省、組合、 船社(船主)が、主になって荷主を巻き込むべきと思います。

「荷主は、金(運賃)を払えばそれで良しの時代ではない」。最後に困るのは荷主かも?

※昔は、運賃も良く乗組員を余分に乗船させ、現場で覚えさえ一人前の船員に育てて居ましたが、現在は経済的負担力もなく、船室もなく、現場での教育は難しい。

国ももっと内航船員の育成に力を注ぐべきです。

以上

 “陸に上がった怒っているカモメさん”より

(2017.10)