平成21年4月24日(金)Vol.100
粗鋼生産量41年振りの低水準
日本鉄鋼連盟、『鋼材需給の動き2009年4月』発表
日本鉄鋼連盟は4月22日、『鉄鋼需給の動き2009年4月』を次の通り発表した。
【概 況】
足元、米国経済指標の一部に下げ止まりの兆しが見られ、日本においても鉱工業生産指数、機械受注統計など急降下した指標に一服感が見られるが、実体経済は急速に悪化しており、政府は4月10日に15.4 兆円(事業規模56.8 兆円)の財政出動を決定した。
2月の鋼材受注量は、内需向けが前年同月比で48.1%減、輸出向けも同38.7%減と、大幅な減少が続いている。粗鋼生産量も同44.2%減の548 万トンと41 年振りの低水準となった。2月末の普通鋼鋼材国内在庫は、前月末比で30万トン減の547 万トンと2ヵ月連続で減少したが、在庫率は同6.2 ポイント上昇して171.4%に達し、過去最高水準が続いている。このような中、経済産業省は09
年度第1四半期の粗鋼需要見通しを、前期比では0.8%増と横這いながら前年同期比では42.6%減の低水準となる1,783 万トンと発表した。
海外では、中国を除いて前年比で2~5割減となる大幅な減産が続いており、2月の世界粗鋼生産は前年同月比で22.0%減の8,385 万トンと、4ヵ月連続で2割強のマイナスとなった。中国は同4.9%増の4,042 万トンと世界生産の48%を占めたが、需要の本格的な回復には至っておらず、鋼材在庫は高水準で推移している。G20 での総額5兆ドル(2010年まで)の財政出動合意を受け、各国は景気対策を強化しており、その効果が期待されるが、金融不安と雇用環境の悪化を背景に世界経済は依然予断を許さない状況にある。引き続き内外の経済動向、鋼材需給動向および通商政策を含む各国の経済産業政策に注意を払う必要がある。
経済動向
~短観による企業の景況感は大企業製造業で過去最悪の水準に~
・2月の鉱工業生産(確報)は、輸送機械をはじめほぼ全業種が低下し、前月比9.4%減の69.5と5ヵ月連続で低下。下げ幅は1月、昨年12月に次いで過去3番目となった。先行きは、3月(2.9%)、4月(3.1%)ともに上昇と予測。しかし、基調判断は「急速に低下している」と3ヵ月連続で据え置かれた。出荷
は6.1%低下、在庫は4.2%低下、在庫率は5.5%上昇。
・2月の機械受注は、前月比1.4%増の7,281億円となり、5ヵ月ぶりに増加した(原系列では前年同月比30.1%減)。内訳は、製造業が8.1%減で2ヵ月連続の減少、また、電機機械(19.1%減)、一般機械(14.5%減)を中心に15業種中9業種が減少した。非製造業は3.3%増と2ヵ月連続で増加。基調判断は「大幅に減少」から「減少が続いている」へと上方修正された。
・3月の乗用車販売は24.3%減と8ヵ月連続減。普通車、小型車の二桁減に加え、軽四輪(11.0%減)も二桁減となった。
・2月の小売業販売額は5.7%減と7年ぶりの大幅減少で6ヵ月連続のマイナス。基調判断は4ヵ月連続で「減少傾向」としている。2月の全世帯消費支出は3.5%減で12ヵ月連続の減となった
・2月の完全失業率は4.4%と前月比で0.3ポイントの上昇に転じた。同月の完全失業者数は前年比33万人増の299万人と、4ヵ月連続で増加し、雇用情勢は厳しさを増している。
・2月の有効求人倍率は前月比0.08ポイント低下の0.59倍と、9ヵ月連続で低下し、03年2月以来の低水準を記録。
・2月の輸出数量指数(原指数)は前年同月比45.4%減と7ヵ月連続で低下し、下落幅は比較可能な98年以降、4ヵ月連続で最大を更新。季調済指数も前月比7ヵ月連続で低下、向先別では米国、EU、アジアのいずれも7ヵ月連続で低下した。実質輸出(日銀、季調済)も前月比5.5%減と、前月の二桁減からは下げ幅がやや緩和したが、7ヵ月連続で低下。
・日銀の3月短観によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業がマイナス58で、74年の調査開始以来最悪の水準となった。前回(12月)からの低下幅も34ポイントと過去最大であった。大企業非製造業はマイナス31で同22ポイントの低下、中小企業製造業もマイナス57で同28ポイント低下し、ともに前回からの悪化幅は過去最大となった。
2.鉄鋼需要産業動向
<土木>
〇2月の公共土木前払金保証請負金額は前年同月比7.7%減。
・ 国の機関は同4.9%減と2ヵ月振りにマイナスとなったのに加え、地方の機関(同10.0%減・5ヵ月連続)も減少、合計では同7.7%減となり、5ヵ月連続のマイナスとなった。
〇2月の公共土木受注金額は前年同月比13.6%減。
・ 地方の機関(3.0%減)では治山・治水が増加したものの、下水道、公園などの減少から4ヵ月連続のマイナス。国の機関(20.1%減)はウェイトの大きい道路の減少もあって2ヵ月連続のマイナス。全体でも13.6%減と4ヵ月連続のマイナスとなった。
〇2月の民間土木工事受注金額は前年同月比67.6%増。
・ 製造業・鉱業・建設業(295.6%増)、農林漁業(147.1%増)が著増した他、ウェイトの大きい運輸通信業(15.9%増)も増加となり、合計では2,453 億円と2008 年9月以来、5ヵ月ぶりに2,000 億円を上回った。1,463 億円と落ち込んだ前年同月の反動もあり、同67.6%増と大幅なプラスとなった。
<建築>
〇2月の新設住宅着工戸数は前年同月比24.9%減の6.2 万戸。
・ 雇用情勢や資金調達環境の悪化等が影響し、持家(9.9%減)、貸家(28.5%減)および分譲(34.4%減)といずれも大きく減少、全体でも同24.9%減と2ヵ月連続の2桁マイナス。改正建築基準法の影響で大幅に落ち込んだ2007 年9月の6.3 万戸を下回り、1966 年1月(5.4万戸)以来の記録的な低水準となった。
・ 年率換算着工戸数は86.6 万戸と2ヵ月連続で100 万戸を下回る。
〇2月の非住宅着工床面積は前年同月比1.0%増。
・ 用途別では、鉱工業用(18.6%減)、公益事業用(7.5%減)が減少したが、商業・サービス業用(18.0%増)、公務文教用(5.8%増)が増加となったことから、全体では同1.0%増と4ヵ月振りの増加となった。年率換算値は5,633 万㎡と2ヵ月振りに6,000 万㎡を下回った。
・ 使途別では、事務所(65.1%増)は大幅に増加したが、工場(25.9%減)が3ヵ月振りに減少したほか、店舗(24.9%減)も4ヵ月連続の減少となった。
<自動車>
○3月の国内販売(除く輸入車)は前年比 25.2%減の52 万台と8ヵ月連続のマイナス。
・ 車種別では、乗用車(24.3%減)は、普通車(39.1%減)、小型車(25.4%減)がともに8ヵ月連続、軽(11.0%減)も4ヵ月連続の減となり、乗用車全体では8ヵ月連続の前年割れとなった。一方、トラック(30.4%減)は、31 ヵ月連続のマイナスとなった。四輪車計では52 万台と3月としては77 年(48 万台)以来の低水準となった。
・ この結果、1~3月の国内販売は、前年同月比23.4%減と12 期連続のマイナス。また、年度では前年比11.0%、56 万台減の450 万台と3年連続で前年を下回った。車種別では、乗用車は普通車(16.2%減)が上期は昨年下期からの新型車効果もあり好調に推移したが、下期以降は昨年の反動減等もありマイナス、軽(2.6%減)は上期に新型車投入効果によりプラスも、下期に入り減少に転じ前年比減。トラックは16.3%減と前年を大きく下回った。
○3月の完成車輸出は前年比64.3%減の23 万台と6ヵ月連続のマイナス。
・ 3月の完成車輸出は、主力の北米向け(61.1%減・8ヵ月連続)が大幅な減少となったのをはじめ、EU 向け(60.6%減・8ヵ月連続)も下げ幅が拡大し、全体では64.3%減と6ヵ月連続のマイナスとなった。
・ この結果、1~3月の完成車輸出は67 万台(62.5%・2期連続減)と75 年4~6月(63 万台)以来の低水準。年度計では、560 万台(17.2%・7年ぶり減)と93 年度(18.3%減)以来の大幅な落ち幅を記録し、3年ぶりの600 万台割れとなった。
・ 3月の米国新車販売は、86 万台(36.7%減・17 ヵ月連続)となり、季節調整済み・年率換算では984 万台と、3ヵ月連続で1,000 万台を下回った。
○3月の四輪車生産は、前年比50.1%減の55 万台、6ヵ月連続のマイナス。
・ 車種別では、乗用車は全体で50.8%の減と6ヵ月連続のマイナスとなり、トラックは44.6%減と6ヵ月連続のマイナスとなった。
・ この結果、1~3月の四輪車生産は、前年同期比49.4%減と2期連続のマイナス。また、年度では前年比15.2%、180 万台減の999 万台と7年ぶりに1,000 万台をわずかながらも下回った。車種別では、乗用車は普通車(22.8%減)が下期以降に前年の新型車効果の反動減等に加え、金融危機後の大幅な減産を受け10 年ぶりの前年割れ、小型車(7.7%減)は3年連続の減少、一方、軽(2.1%増)は年度前後半の減少分を、年央の新型車投入効果によりカバーし前年比増。トラックは14.7%減と前年を大きく下回った。_
<産業機械>
○2月の受注は前年同月比52.7%減と7ヵ月連続のマイナス。
・ 内需(28.1%減)は、官公需(8.2%減)は2ヵ月ぶりに減少し、製造業を中心とした民需(29.5%減)が大幅に落ち込み8ヵ月連続のマイナス。また、外需(75.1%減)も、原動機(79. %減)、運搬機械(63.4%減)、建設機械(87.0%減)、工作機械(81.7%減)等の主要機種が軒並み6割を超える大幅な減少となり5ヵ月連続のマイナス。全体では52.7%減と7ヵ月連続のマイナスとなった。また、日本工作機械工業会によると、3月の工作機械受注実績(確報)は、前年同月比85.2%減の209 億円と、10 ヵ月連続のマイナスとなる低水準で推移している。
○2月の生産は前年同月比48.8%減と12 ヵ月連続のマイナス。
・ ボイラ・原動機(44.9%減・5ヵ月連続)、土木建設機械(66.8%減・10 ヵ月連続)、化学機械(37.3%減)、運搬機械(0.9%減)、農業機械(25.4%減)、金属加工工作機械(51.1%減)、冷凍機(56.7%減)など全てが減少、全体では48.8%減と12 ヵ月連続のマイナス。
<電気機械>
○2月の生産は前年同月比43.0%減と5ヵ月連続のマイナス。
・ 重電(36.5%減)は回転電機(53.8%減)、静止電機(19.7%減)がともに大幅に減少し5ヵ月連続のマイナス。
・ 民生用電機(18.2%減)は冷蔵庫、洗濯機、エアコン等が落ち込み4ヵ月連続のマイナス。民生用電子(33.5%減)は液晶テレビ(19.9%減)等デジタル家電の不振により5ヵ月連続のマイナス。また、通信機械(41.3%減)が13 ヵ月連続、電子部品(41.0%減)は5ヵ月連続で減少した。
<造 船>
○3月の新造船受注(建造許可ベース)は、前年同月比著増の460 万G/T と2ヵ月連続のプラス。
・ 08 年度の新造船受注は前年比44.4%増の2,269 万G/T と2年ぶりのプラスとなり、9年連続の1,000 万G/T 超え、現行の建造許可基準の下では初の2,000 万G/T 超えを記録。
○2月の起工量は、前年同月比29.9%増の118 万G/T と2ヵ月ぶりのプラス。
○3月末手持工事量は、前月比1.8%減の6,376 万G/T と6ヵ月連続のマイナス。
・ 08 年度の輸出船契約量は前年比46.8%減の1,456 万G/T と2年ぶりの減少となっており、01年度1,043 万G/T 以来の1,500 万G/T 割れとなった。
3.鋼材受注(内需)
~2月の鋼材受注、普通鋼の自動車、産機は70%超の減少、特殊鋼も引き続き著減~
○2月の普通鋼鋼材受注(内需計)は、前年比 44.1%減の268 万トン、7ヵ月連続のマイナス。
・ 建設用(29.9%減)は、建築(30.4%減)、土木(20.5%減)およびその他建設用(38.2%減)がそれぞれ7ヵ月連続でマイナスとなったため、全体でも7ヵ月連続で前年実績を下回った。
※その他建設用:建築金物、建築用付属資材(配管・配線用、サッシ、シャッター等)、仮設材(足場鋼管、メタルフォーム等)など。
・ 製造業用(52.0%減)は、自動車(71.5%減・7ヵ月連続)、産機(75.9%減・5ヵ月連続)および電機(50.6%減・10 ヵ月連続)の減少幅が拡大したため、全体でも7ヵ月連続のマイナスとなった。一方、造船(0.5%増・23 ヵ月連続)は伸びが鈍化したもののプラスを維持した。
・ 販売業者向け(41.8%減・7ヵ月連続)も大幅減が続き、内需全体では44.1%減の268 万トンとなった。
○2月の特殊鋼鋼材受注(内需計)は、前年比 64.5%減の42 万トン、5ヵ月連続のマイナス。
・ 製造業用(66.8%減)は、自動車(71.4%減・7ヵ月連続)、産機(76.0%減・4ヵ月連続)、次工程用(61.1%減・5ヵ月連続)いずれも減少幅が拡大、全体でも5ヵ月連続の前年割れとなった。
・ 販売業者向け(64.9%減・5ヵ月連続)も著減、内需全体では64.5%減の42 万トン、5ヵ月連続のマイナスとなった。
4.鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)
~2008 年度の粗鋼生産は前年度比13.2%減の1 億550 万トン、前年度比の減少率は過去最大~
○3 月の粗鋼生産、普通鋼鋼材生産
・3 月の粗鋼生産(速報)は、前年同月比46.7%、503 万トン減の574 万トンで6 ヵ月連続の減少となった。うち転炉鋼(44.4%減)は445 万トンで6 ヵ月連続、電炉鋼(53.4%減)は129 万トンで7 ヵ月連続の減少となった。
・2008 年度計は、前年度比13.2%、1,601 万トン減の1 億550 万トンとなり、2001 年度の1億206 万トン以来の低水準であった。前年度比の減少率は記録の残る1948 年度以降、最大となった。うち、転炉鋼は7,973 万トン(11.9%減)、電炉鋼は2,571 万トン(17.0%減)であった
・3 月の普通鋼鋼材生産は、前年同月比43.1%減の437 万トンで6 ヵ月連続の減少となり、4ヵ月連続で500 万トン台を割った。2008 年度計は、前年度比14.0%、1,206 万トン減の7,377万トンとなり、1998 年度の7,041 万トン以来の低水準であった。
特殊鋼鋼材需給
~2月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比61.1%減の69 万トン、4ヵ月連続の2桁減 ~
○2月の生産、出荷、在庫動向
・2月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比61.1%・107 万トン減の69 万トンと4ヵ月連続の2桁減、前年同月から100 万トンを超える大幅減となった。鋼種別には、ステンレス鋼をのぞき減少幅が拡大、すべての鋼種で同50%以上の落ち込みとなった。
・2月の特殊鋼鋼材出荷は、国内向け(60.9%減)、輸出向け(44.2%減)ともに4ヵ月連続の減少となった。
・2月末の特殊鋼鋼材在庫は、前月末比9万トン減の 145 万トン、在庫率は出荷数量の急減により23.5 ポイント上昇し185.6%となった。
5.鋼材流通
~鋼材輸入 2ヵ月連続の20 万トン割れ~
○2月における鋼材流通の動向
・市中販売(確報)は前年同月比31.0%・100. 万トン減の223 万トンと7ヵ月連続の減少で、過去最低を4ヵ月連続で更新した。品種別には、H形鋼(20.5%減)、小棒(18.2%減)、厚中板(31.0%減)、熱薄類(43.4%減)、冷薄類(49.0%減)、亜鉛めっき(34.1%減)、鋼管(21.9%減)等、全ての品種が4ヵ月連続で過去最低水準を更新した。
・市中在庫(自社所有分)は、前月末比2.7%・7.7 万トン減の276 万トンと2ヵ月連続で減少した。品種別には、厚中板(0.1%減)、H形鋼(5.8%減)、小棒(2.4%減)、熱薄類(3.7%減)、冷薄類(2.2%減)、亜鉛めっき鋼板(3.9%減)と殆どの品種で減少した。
~2月の普通鋼鋼材輸入は前年同月比48.7%減の14 万トン~
〇2月の普通鋼鋼材輸入の動向
・ 2月の普通鋼鋼材輸入は、前年同月比48.7%減の14. 万トンと4ヵ月連続の減少で、1985 年3月(12.4 万トン)以来の低水準となった。品種別には、線材(2.4 倍)は前年大幅減の反動から増加したものの、厚中板(48.7%減)、熱延薄板類(58.2%減)、冷延薄板類(57.7%減)、亜鉛めっき鋼板(49.7%減)等の鋼板類は5割前後の大幅な減少となった。
・ 国別には、韓国、台湾、中国の主要3ヵ国いずれも減少となり、最もウェイトの高い韓国(51.3%減)は4ヵ月連続の2桁減で、1986 年6月(9.7 万トン)以来、約23 年ぶりの10 万トン割れ。
6-. 鉄鋼輸出
~2月の全鉄鋼輸出は、前年同月比46.7%・166 万トン減の188 万トン、5ヵ月連続のマイナス~
○ 2月の全鉄鋼輸出は、前年同月比46.7%・166 万トン減の188 万トンと5ヵ月連続で減少し、比較可能な1964 年1 月以降で、過去最大となった前月(34.4%減) の下げ幅を更新した。また、2月としては1999 年の173 万トン以来の200 万トン割れとなった。仕向先別では、韓国向け (39.8%減) が5ヵ月連続で減少、中国向け(29.5%減)、ASEAN 向け(63.5%減)がともに4ヵ月連続で減少し、主要な仕向先全てで減少した。品種別では、厚中板(3.1%減)が3ヵ月ぶりに減少し、熱延鋼板類(63.6%減)が5ヵ月連続で減少するなど、主要品種が軒並み減少した。
○ 2月の輸出平均単価は、全鉄鋼ベースで前月の1,407 ドルを126 ドル下回る1,281 ドルと、3ヵ月連続で低下した。
7.海外市場
~景気回復はなお期し難い状況、主要国は依然大幅減産を継続~
1.概 況
昨年央以来悪化の一途を辿ってきた世界経済は、米国の住宅関連指標や中国の工業生産活動など、一部で好転の兆しが表れはじめている。しかしながら、主要国の大半で雇用環境はむしろ厳しさを増しており、消費に牽引された自律的な景気回復はなお期し難い状況にある。主要製鉄国では中国を除き依然大幅な減産が継続しており、需要産業がいち早く回復に転じたとみられる中国でも、年初来の鉄鋼生産の増加を吸収するほど内需の勢いはない。各国で在庫調整途上にある中、鉄鋼生産が回復に向かうには今後暫くかかりそうな
情勢である。
2.主要国の鉄鋼需給動向
○ 米国 08 年10~12 月期の実質GDP 成長率(季調済・年率換算)の確定値は-6.3%と、改定値の-6.2%から下方修正された。鉄鋼需要産業は2 月の住宅販売が低水準ながらも増加に転じるなど回復の兆しもうかがわれるものの、2 月の鋼材出荷は前年同月比52.9%減と引き続き大幅な前年割れとなった。2 月の鋼材貿易では、輸出が同35.9%減と3 ヵ月連続で減少し、輸入も同36.0%減となった。なお、3 月の鋼材市況は全面安の展開が続いている。
欧州
08 年10~12 月期のユーロ圏の実質GDP 成長率改定値(季調済)は前期比-1.6%と、2月中旬に公表された速報値から更に0.1 ポイント下方修正された。鉄鋼需要産業は依然低水準ながらも、販売奨励策を導入したドイツなどでは自動車販売が増加に転じている。こうした中、2 月の粗鋼生産は前年同月比41.5%減と3 ヵ月連続で4 割超のマイナスとなり、3 月の鋼材市況は再び全面安の展開となった。
〇中国
09 年1~3 月期のGDP 成長率は前年同期比+6.1%と前期(+6.8%)から一段と鈍化し、3 月の工業生産も前年同月比8.3%増と再び1 桁台に低下した。鉄鋼需要産業は3 月の自動車販売が月間過去最高を更新し、家電生産もプラスに転じるなど、一部で底入れの兆しが表れはじめている。こうした中、2 月の鋼材生産(重複分を含む)は同8.3%増と7 ヵ月振りに増加に転じた。3 月の鋼材貿易では、輸出が同59.9%減と5 ヵ月連続のマイナス、輸入が同15.9%減と8 ヵ月連続のマイナスとなった。なお、3 月の鋼材市況は軒並み下落を続けている。
韓国
鉱工業生産指数をはじめ、主要経済指標の前年割れが続く中、韓国銀行は今年のGDP成長率見通しを通年で-2.4%と昨年12 月発表の+2.0%から大幅に下方修正した。鉄鋼需要産業は引き続き低調となるも、政府は個別消費税減税などの自動車産業救済策を発表している。こうした中、2 月の粗鋼生産は前年同月比24.8%減と3 ヵ月連続で2 割超のマイナスとなった。鋼材貿易では、2 月の鋼材輸出が同17.5%減と2 ヵ月連続で2 桁減となり、輸入は同48.8%減と2 ヵ月連続で4 割超のマイナスとなった。
タイ
輸出機器、電子機器などの輸出の激減により工業生産の大幅な落ち込みが続いており、2 月の鋼材生産は棒・形鋼、熱冷延薄板、亜鉛めっき鋼板のいずれも大幅減となっている。
マレーシア
鉄鋼需要産業は建設の前年割れが続いているほか、輸出の急減を受けて製造
業も低水準で推移している。こうした中、1 月の鋼材生産は棒鋼・線材が前年同月比53.1%減、亜鉛めっき鋼板が同58.6%減、溶接鋼管が同48.9%減といずれも大幅な落ち込みとなった。
○インド
鉄鋼需要産業は昨年12 月、今年2 月と相次いで実施された消費刺激策の効果が自動車などの耐久消費財販売に表れはじめている。こうした中、1 月の鋼材生産は前年同月比1.2%増と小幅ながらも増加した。なお、鋼材市況は依然下落傾向を辿っているものの、冷延コイルなど一部製品では上昇に転じている。