平成21年5月27日(火)Vol.106
内需は造船除く製造業向け前年比4割減続く
日本鉄鋼連盟発表 鉄鋼需給の動き2009年5月
〔概 況〕
昨年秋以降の金融危機により急速に悪化した内外経済は、各国政府・中央銀行による景気対策、金融対策等によって経済・金融マインドが落ち着きを見せており、足元では安定に向かいつつある。国内統計においても、機械受注統計、輸出数量指数は大幅な減少に歯止めがかかり、3月の鉱工業生産指数が前月比1.6%増と6ヵ月振りに上昇するなど、底入れの兆しが伺える。
国内鉄鋼需要は、造船を除く製造業向けで大幅に落ち込んでおり、前年比4割減が続いている。粗鋼生産量も6ヵ月連続で減少し、08 年度計では過去最大の減少率となる前年度比13.2%減の1億550 万トンとなった。他方、3月末の普通鋼鋼材国内在庫は前月末比31 万トン減の516 万トンと3ヵ月連続で減少し、在庫率も150.7%と高水準ながら前月末より20.7 ポイント低下した。このような中、経済産業省は09 年度第1四半期の生産計画集計結果を、前年同期比では41.1%減ながら前期比では4.0%増となる1,829 万トンと発表した。
海外では、欧米先進国を中心に鋼材需要が大幅に落ち込んでおり、3月の粗鋼生産量は5ヵ月連続で2割強の減産となる9,171 万トン(前年同月比23.5%減)となった。中国は、消費・投資活動が比較的堅調に推移しており、4月の粗鋼生産量は同3.9%減の4,341 万トンであった。なお、worldsteel は09 年の世界鋼材見掛消費量を、前年比14.9%減となる10 億1,860 万トンと予想している。
海外経済は、金融と実体経済悪化の負のスパイラルが断ち切られておらず、一方、雇用情勢の悪化を背景に保護主義的な動きが顕在化している。引き続き、内外の経済動向、鋼材需給動向、各国の経済政策に細心の注意を払う必要がある。
経済動向
~鉱工業生産は依然として低水準ながら上昇に転じ、在庫調整も進展~
・3月の鉱工業生産(確報)は、前月比1.6%上昇の70.6と6ヵ月振りに上昇に転じた。内訳では、電子部品・デバイス、一般機械、電気機械等が上昇に寄与。先行きは、4月(+4.3%)、5月(+6.1%)ともに上昇と予測。基調判断は「急速に低下している」から「停滞している」へ4ヵ月振りに変更された。出荷は1.5%上昇、在庫は3.6%低下、在庫率は5.3%低下。
・4月の乗用車販売は22.3%減と9ヵ月連続の減少で、内訳では普通車、小型車、軽四輪いずれも二桁減となった。
・3月の小売業販売額は3.8%減で7ヵ月連続の減少。基調判断は「減少傾向」から「減少している」へと5ヵ月振りに下方修正された。3月の全世帯消費支出は0.4%減で13ヵ月連続減。
・3月の機械受注は、前月比1.3%減の7,279億円と再び減少した。内訳は、製造業が21.8%増で3ヵ月振りに増加、うち、一般機械(2倍増)を中心に15業種中10業種が増加。非製造業は3.1%減少。基調判断は「減少が続いている」から「減少のポが緩やかになってきている」へ上方修正された。なお、1~3月期計は前期比9.9%減、4~6月期は同5.0%減の見通し。
・4月の乗用車販売は22.3%減と9ヵ月連続の減少で、内訳では普通車、小型車、軽四輪いずれも二桁減となった。
・3月の小売業販売額は3.8%減で7ヵ月連続の減少。基調判断は「減少傾向」から「減少している」へと5ヵ月振りに下方修正された。3月の全世帯消費支出は0.4%減で13ヵ月連続減。
・3月の完全失業率は4.8%と前月比0.4ポイント上昇。同月の完全失業者数は前年比67万人増の335万人と5ヵ月連続で増加し、増加幅としては過去最大であった99年2月に並んだ。
・3月の有効求人倍率は前月比0.07ポイント低下の0.52倍と、10ヵ月連続で低下し、02年2月以来の低水準を記録。
・3月の輸出数量指数(原指数)は前年同月比41.1%減と8ヵ月連続で低下し、依然として低水準ながら、下落幅は過去最大を記録した前月(45.4%減)から若干戻した。季調済指数は前月比8ヵ月振りに上昇、向先別では、EUは引き続き減少したが、米国、アジアがともに8ヵ月振りの上昇となった。実質輸出(日銀、季調済)も前月比横ばいで低下傾向が一服。
・09年1~3月期の日本の実質GDP成長率(速報)は、季調済前期比4.0%減(年率15.2%減)で、下落幅は2期連続で戦後最大となり、また、初の4期連続マイナス成長となった。輸出(26.0%減)が過去最大で落ち込み、設備投資(10.4%減)も4期連続で減少。この結果、08年度計では前年度比3.5%減となり、98年度の同1.5%減を上回り過去最悪となった。
2.鉄鋼需要産業動向
~金融危機の影響を受け、建設、製造業ともに低迷が続く~
<土木>
〇3月の公共土木前払金保証請負金額は前年同月比8.9%増。
・ 国の機関が同6.5%増と2ヵ月振りにプラスとなったのに加え、地方の機関も12.3%増と6ヵ月振りにプラスとなった結果、合計では同8.9%増となり、6ヵ月振りのプラスとなった。
〇3月の公共土木受注金額は前年同月比12.7%増。
・ 地方の機関(18.4%増。5ヵ月振りのプラス)、国の機関(9.0%増。3ヵ月振りのプラス)ともに主要部門である道路、治山・治水が増加し、全体では12.7%増と5ヵ月振りのプラスとなった。
〇3月の民間土木工事受注金額は前年同月比14.7%減。
・ 電気・ガス業(52.6%増)が増加したものの、ウェイトの大きい運輸通信業(18.7%減)、製造業・鉱業・建設業(28.3%減)が減少したことから、全体では2ヵ月振りのマイナスとなった。
<建築>
〇3月の新設住宅着工戸数は前年同月比20.7%減、08 年度では0.3%増と2年振りのプラス
・ 雇用情勢や資金調達環境の悪化等が影響し、持家(13.1%減)、貸家(11.2%減)、分譲(42.1%減)といずれも大きく減少し、全体でも同20.7%減の6.7 万戸と3ヵ月連続の2桁マイナス。
・ 3月の年率換算着工戸数は、88.8 万戸と2ヵ月連続の90 万戸割れ。
・ 08 年度は、後半の急速な景気悪化により下半期は大幅な減少が続いているが、改正建築基準法の影響で落ち込んだ昨年度とほぼ同水準の103.9 万戸となった。
〇3月の非住宅着工床面積は前年同月比27.0%減、08 年度は6.6%減と3年連続で減少
・ 用途別では、鉱工業用(25.5%減)、商業・サービス業用(24.7%減)、公益事業用(64.4%減)、公務文教用(14.3%減)といずれも減少し、全体では2割を超える大幅な減少となった。
・ 使途別では、店舗(20.3%減)が5ヵ月連続の減少となったほか、事務所(41.7%減)、工場 (20.2%減)、倉庫(48.9%減)といずれも2桁のマイナスとなった。
・ 08 年度は、住宅と同様、後半の急速な景気悪化の影響を受け、前年度比6.6%減の5,956 万㎡となり、3年連続の減少となった。
<自動車>
○4月の国内販売(除く輸入車)は前年比 22.6%減の27 万台と9ヵ月連続のマイナス。
・ 車種別では、乗用車(22.3%減)は、普通車(37.0%減)、小型車(19.4%減)がともに9ヵ月連続、軽(14.4%減)も5ヵ月連続の減となり、乗用車全体では9ヵ月連続の前年割れとなった。一方、トラック(24.1%減)は、普通車(47.3%減)が30 ヵ月連続、小型車(35.0%減)は32ヵ月連続、軽(9.8%減)も17 ヵ月連続の減となり、トラック計では32 ヵ月連続のマイナスとなった。四輪車計では27 万台と単月としては82 年1 月(26 万台)以来の低水準となった。
○4月の完成車輸出は前年比64.7%減の21 万台と7ヵ月連続のマイナス。
・ 4月の完成車輸出は、主力の北米向け(67.7%減・9ヵ月連続)やEU 向け(43.5%減・9ヵ月連続)が大幅な減少となったこともあり、全体では64.7%減と7ヵ月連続のマイナスとなった。
・ 4月の米国新車販売は、82 万台(34.3%減・18 ヵ月連続)となり、季節調整済み・年率換算では929 万台と、4ヵ月連続で1,000 万台を下回った。米ビッグスリーはGM、フォードは3割超、クライスラーは4割超の大幅な減。日系ブランド車もトヨタが4割超、日産は3割超ホンダが2割超の大幅減となった。
○4月の四輪車生産は、前年比47.1%減の49 万台、7ヵ月連続のマイナス。車種別では、乗用車は、軽(7.8%減)が3ヵ月連続の減となったのをはじめ、普通車(47.2%減)が7ヵ月連続、小型車(30.8%減)も6ヵ月連続のマイナスとなったことから、全体でも47.2%の減と7ヵ月連続のマイナスとなった。トラックも小型車(39.9%減)が12 ヵ月連続の減、普通車(70.5%減)は7ヵ月連続、軽(7.1%減)が6ヵ月連続のマイナスとなり、トラック計では46.1%減と7ヵ月連続のマイナスとなった。なお、四輪車生産計では前年同月比で47.1%減となった。
<産業機械>
○3月の受注は前年同月比39.8%減と8ヵ月連続のマイナス。08 年度計も6年振りのマイナス。
・ 内需(41.6%減)は、官公需が横ばいとなったが、製造業を中心とした民需(47.0%減)が9ヵ月連続で減少した。また、外需(36.4%減)は、原動機(80.6 %増)が3ヵ月振りに増加したものの、運搬機械(75.9%減)、建設機械(81.5%減)、工作機械(83.9%減)等の減少から、6ヵ月連続のマイナス。全体では39.8%減と8ヵ月連続の減少となった。なお、日本工作機械工業会によると、4月の工作機械受注実績(確報)は前年同月比80.4%減の252 億円と、低水準が続いている。
・ 08 年度計(21.9%減)では、内需(18.8%減)、外需(25.2%減)ともに減少し、6年振りに減少した。
○3月の生産は前年同月比40.8%減と13 ヵ月連続のマイナス。08 年度計も6年振りのマイナス。
・ 化学機械(18.0%増)が2ヵ月振りに増加したが、ボイラ・原動機(7.0%減・6ヵ月連続)、土木建設機械(73.0%減・11 ヵ月連続)、運搬機械(27.9%減・3ヵ月連続)などが減少。
・ 08 年度計では、土木建設機械の大幅減などにより、全体では18.8%減と6年振りに減少した。
<電気機械>
○3月の生産は前年同月比37.9%減と6ヵ月連続のマイナス。08 年度計も7年振りのマイナス。
・ 重電(25.6%減)は、回転電機(49.7%減・8ヵ月連続)、静止電機(11.4%減・3ヵ月連続)、開閉制御装置(18.4%減・6ヵ月連続)いずれも減少し6ヵ月連続のマイナス。
・ 民生用電機(15.8%減)は白物家電が低調に推移し5ヵ月連続のマイナス。民生用電子(32.5%
減)も液晶テレビ(21.0%減・4ヵ月連続)、デジタルカメラ(37.1%減・6ヵ月連続)と軒並
み減少し、6ヵ月連続の減少。
・ 08 年度計では、主要機種が軒並み減少し、全体では14.9%減と7年振りに減少した。
<造 船>
○4月の新造船受注(建造許可ベース)は、前年同月比7.9%増の151 万G/T と3ヵ月連続のプラス。
○3月の起工量は、前年同月比25.4%減の108 万G/T と2ヵ月振りのマイナス。
○4月末手持工事量は、前月比2.2%減の6,235 万G/T と7ヵ月連続のマイナス。
・ 4月の輸出船契約量は前年同月比73.8%減の41 万G/T と7ヵ月連続で7割を超える減少で推移している。
3.鋼材受注(内需)
~2008 年度鋼材受注、普通鋼、特殊鋼とも前年比で2桁の大幅減~
○3月の普通鋼鋼材受注(内需計)は、前年比 45.6%減の266 万トン、8ヵ月連続のマイナス。
・ 建設用(34.4%減)は、建築(34.2%減)、土木(29.9%減)、その他建設用(39.7%減)のいずれも下げ幅を拡大して、8ヵ月連続のマイナスとなり、全体でも8ヵ月連続で前年実績を下回った。
※その他建設用:建築金物、建築用付属資材(配管・配線用、サッシ、シャッター等)、仮設材(足場鋼管、メタルフォーム等)など。
・ 製造業用(47.8%減)は、自動車(63.5%減・8ヵ月連続)、産機(74.8%減・6ヵ月連続)、電機(56.8%減・11 ヵ月連続)で大幅減が続き、全体でも8 ヵ月連続のマイナスとなった。唯一、造船(4.2%増・24 ヵ月連続)はプラスを維持した。
・ 08 年度計では、造船が好調を持続したものの、建設、造船を除く製造業、販売業者向けの年度後半からの急激な落ち込みにより、前年度比で2 桁の大幅減(17.0%・971 万トン減)となった。
○3月の特殊鋼鋼材受注(内需計)は、前年比 66.9%減の41 万トン、6ヵ月連続のマイナス。
・ 製造業用(69.9%減)は、自動車(67.8%減・8ヵ月連続)、産機(78.5%減・5ヵ月連続)、次工程用(70.2%減・6ヵ月連続)いずれも大幅減が続き、全体でも6ヵ月連続の前年割れとなった。販売業者向け(61.8%減・6ヵ月連続)も前年実績を大きく下回り、内需全体では前年比66.9%減の41 万トンと6ヵ月連続のマイナスとなった。
・ 08 年度計では、製造業(21.5%減)、販売業者向け(21.7%減)ともに2 割を超える減少となり、内需全体では20.7%減の1,122 万トンと、7年振りに前年割れとなった。
4.鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)
~4 月の粗鋼生産(速報)は前年同月比43.6%減の572 万トン、7ヵ月連続の減少~
○4 月の粗鋼生産・普通鋼鋼材生産、3月の普通鋼鋼材出荷・在庫動向・4 月の粗鋼生産は、前年同月比43.6%、442 万トン減の572 万トンで7 ヵ月連続の減少となった。うち転炉鋼(43.6%減)は424 万トンで7 ヵ月連続、電炉鋼(43.6%減)は149万トンで8 ヵ月連続の減少となった。
・4 月の普通鋼鋼材生産は、前年同月比43.8%減の398 万トンで7 ヵ月連続の減少となり、1968 年6 月の390 万トン以来の低水準となった。
・3 月の普通鋼鋼材国内向け出荷は、前年比40.6%減で8 ヵ月連続の減少となった。輸出向け出荷は、前年比36.1%減で5 ヵ月連続の減少となった
・3 月末の普通鋼鋼材国内向在庫は、前月末比31 万トン減の516 万トンと3 カ月連続の減少となった。なお、在庫率は同20.7 ポイント低下して150.7%となった。
特殊鋼鋼材需給
~ 2008 年度の特殊鋼鋼材生産は、前年度比15.6%減の1,741 万ト
ン、7年振りに減少~
○3月の生産、出荷、在庫動向
・3月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比65.2%・125 万トン減の67 万トンと5ヵ月連続の2桁減、3ヵ月連続で100 万トン割れとなった。また、1~3月計では前年同期比58.5%減の226 万トンと2期連続の減少。2008 年度計では前年度比15.6%、322 万トン減の1,741 万トンと6年連続で過去最高を更新してきたが、7年振りに減少となり01 年水準に戻った。
・3月の特殊鋼鋼材出荷は、国内向け(62.9%減)、輸出向け(48.0%減)ともに5ヵ月連続の減少となった。08 年度計では、国内向け(15.9%減)が7年振り、輸出向け(8.6%減)は2年連続の減少となった。
・3月末の特殊鋼鋼材在庫は、前月末比 17 万トン減の127 万トンとなり、在庫率は32ポイント低下し153.1%となった。
5.鋼材流通、鋼材輸入
~2008 年度の普通鋼鋼材輸入は前年度比9.4%減の332 万、3年連続の減少~
○3月における鋼材流通の動向
・市中販売(確報)は前年同月比29.6%・96.1 万トン減の229 万トンと8 ヵ月連続の減少ながら、過去最低を5 ヵ月振りに脱した。品種別には、鋼管(25.9%減)が5 ヵ月連続で過去最低水準にあり、H形鋼(20.5%減)、小棒(17.7%減)、厚中板(30.0%減)、熱薄類(39.9%減)、冷薄類(42.8%減)、亜鉛めっき(33.0%減)等は過去最低を脱したが低水準で推移している。
・市中在庫(自社所有分)は、前月末比 2.8%・7.7 万トン減の269 万トンと3 ヵ月連続で減少した。品種別には、厚中板(1.3%増)、H形鋼(6.1%減)、小棒(2.3%減)、熱薄類(3.1%減)、冷薄類(5.1%減)、亜鉛めっき鋼板(6.3%減)と厚中板を除く殆どの品種で減少した。
〇3月の普通鋼鋼材輸入の動向
・ 3月の普通鋼鋼材輸入は、前年同月比41.6%減の17 万トンと5ヵ月連続で減少した。
品種別には、線材(2.7 倍)が2ヵ月連続で大幅増となったものの、厚中板(17.4%減)、熱延薄板類(54.1%減)、冷延薄板類(49.2%減)、亜鉛めっき鋼板(63.3%減)等の薄板類は2ヵ月連続で5割前後の大幅な減少となった。
・ 国別には、韓国、台湾、中国の主要3ヵ国いずれも減少が続き、最もウェイトの高い韓国(51.0%減)は5ヵ月連続の2桁減少となった。
・ 2008 年度計では、国別では中国(12.5%増、65 万トン)が4 年振りで増加したが、韓国(12.4%減、191 万トン)が2年振り、台湾(18.4%減、64 万トン)が2年連続で減少となった。また、品種別には熱延薄板類、冷延薄板類などが減少し、前年度比9.4%減の332 万トンと3 年連続で減少した。
6-. 鉄鋼輸出
~3月の全鉄鋼輸出は、前年同月比32.7%・127 万トン減の262 万トン、6ヵ月連続のマイナス。2008 年度は3年振りのマイナス~
○ 3月の全鉄鋼輸出は、前年同月比32.7%・127万トン減の262万トンと6ヵ月連続で減少したが、2008 年12 月以来の250 万トン超えとなった。仕向先別では、韓国向け(17.2%減) が6ヵ月連続で減少となったものの、前月に比べて減少幅は縮小した。中国向け(27.7%減)、ASEAN 向け (55.1%減)ともに5ヵ月連続で減少し、前月に続いて主要な仕向先全てが減少となった。品種別では、厚中板(7.5%減)が2ヵ月連続で減少し、熱延鋼板類(31.7%減)が6ヵ月連続で減少する等、主要品種でも前月に続き軒並み減少した。
○ 2008 年度の全鉄鋼輸出は、韓国、ASEAN 等アジア向けの落ち込みを中心に、過去最高を記録した前年度の3,845 万トンから11.2%・430 万トン減の3,415 万トンと、3年振りの減少となった。
○ 3月の輸出平均単価は、全鉄鋼ベースで前月の1,281 ドルを149 ドル下回る1,132 ドルと、4ヵ月連続で低下した。一方、08 年度では1,287 ドルと前年を282 ドル上回り、2年連続の1,000ドル超えとなった。
7.海外市場
~一部で明るい兆しが表れるも依然厳しい情勢、粗鋼生産は 3 月も大幅減~
(1) 概 況
世界経済は、景気対策効果もあって米国や欧州で消費者心理が上向き始めるなど、一部で明るい兆しが表れ始めているものの、主要国の大半で今後雇用情勢の更なる悪化が見込まれるなど、その先行きはなお予断を許さぬ情勢にある。
3 月の粗鋼生産は、中国でほぼ前年並みの高水準を記録したほかは、各国とも大幅減が続いている。中国では消費刺激策が奏功し、自動車、家電をはじめとする需要産業の活動が上向いてきているが、鉄鋼生産増に伴い需給緩和傾向が目立ってきており、今後の動向に注視が必要である。
(2) 主要国の鉄鋼需給動向
米国
09 年1~3 月期の実質GDP 成長率(季調済)速報値は前期比年率-6.1%と、約35 年振りに3 期連続のマイナス成長となったが、個人消費がプラスに転じるなど一部で明るい兆しも表れ始めている。鉄鋼需要産業では、2 月に増加に転じた住宅販売が再びマイナスとなる中、3 月の鋼材出荷は前年同月比54.8%減と急落が続いている。一方、鋼材貿易では3 月の輸出が同34.4%減と昨年9 月以来減少傾向を辿っており、3 月の輸入(速報)も同41.5%減となった。なお、4 月の鋼材市況は依然全面安の展開が続いている。
欧州
09 年1~3 月期の実質GDP 成長率速報値は前期比-2.5%と、過去最大の落ち込みを記録した模様である。しかしながら、ユーロ圏の景気信頼感指数が13 ヵ月振りに上向くなど、企業や消費者マインドに改善の兆しもみられる。鉄鋼需要産業では、販売奨励策を導入した一部諸国で自動車販売が増加に転じているものの、EU 全体としては引続き減少基調を辿っている。こうした中、3 月の粗鋼生産は前年同月比45.3%減と4 ヵ月連続で4 割超のマイナスとなり、鋼材市況は4 月も弱含みの展開が続いている。
〇中国
09 年1~3 月期のGDP 成長率は前年同期比+6.1%と、過去10 年間で最低水準となり、4 月の工業生産も輸出不振を受けて前年同月比7.3%増と前月(同8.3%増)からさらに鈍化した。しかしながら、鉄鋼需要産業では、3 月の自動車生産台数が月間過去最高を更新し、冷蔵庫や洗濯機など一部の家電生産がプラスに転じるなど、需要部門の活動が回復基調にある。こうした中、4 月の鋼材生産(重複分を含む)は同2.6%増と3 ヵ月連続でプラスとなった。4 月の鋼材貿易では、輸出が同70.5%減と6 ヵ月連続でマイナスが続く一方、輸入は同8.0%増と9 ヵ月振りの増加となり、3 年4 ヵ月振りに輸入超過となった。なお、鋼材市況は4 月も依然下落傾向を続けている。
韓国
09 年1~3 月期の実質GDP 成長率(季調済)の速報値は前期比+0.1%と、対中輸出の好調等もあり、2 期振りのプラス成長となった。また、鉱工業生産指数が前年同月比では10.6%減と依然2 桁台のマイナスとなったが、季調済・前月比では3 ヵ月連続でプラスとなるなど、一部で明るい兆しも表れ始めている。こうした中、3 月の粗鋼生産は前年同月比18.3%減と昨年12 月以来4 ヵ月連続で2 桁減となった。3 月の鋼材貿易では、輸出が9.0%減と3 ヵ月連続のマイナスとなる一方、輸入はウォン安等の影響もあり、同44.4%減と3 ヵ月連続で4 割超のマイナスとなった。
タイ
輸送機器、電子機器などの輸出の急減を受けて、足下では工業生産の大幅な落ち込みが続いており、自動車や建築も依然低調で推移している。一方、3 月の鋼材生産は棒・形鋼、熱・冷延薄板、亜鉛めっき鋼板のいずれも大きな落ち込みとなった。こうした中、タイ鉄鋼協会は09 年の鋼材消費を前年比13.5%減とする見通しを発表している。
マレーシア
鉄鋼需要産業は自動車の前年割れが続いているほか、輸出の急減を受けて電気・電子機器を中心とする製造業も引続き低調で推移している。こうした中、2 月の鋼材生産は棒鋼・線材が前年同月比35.7%減、亜鉛めっき鋼板が同66.7%減、溶接鋼管が同43.6%減といずれも大幅な落ち込みが続いている。
インド
景気は引続き減速傾向を辿っているものの、足下では、政府による景気対策や金利引下げ等による効果に期待感が拡がっている。鉄鋼需要産業は小型乗用車を中心に生産、販売ともに堅調に推移している。こうした中、3 月の鋼材生産は前年同月比2.6%減と3ヵ月振りのマイナスとなった。なお、3 月の鋼材市況は冷延コイルと亜鉛めっきが上昇に転じている。