平成21年11月12日(木)Vol.137
用船料引き下げ46%、委託船の船主収入30?60%減少 下請法や独占禁止法の特殊指定に違反する恐れの事例も
国交省が内航海運の取引実態調査結果を公表
国土交通省は11月11日、「内航海運における取引実態(経済不況に伴う影響含む)に関するアンケート調査結果」を公表した。
今回の調査は、内航5組合所属の内航海運事業者2,629事業者を対象に7月中旬に開始し、年8月下旬に回収、9月~10月に集計した。アンケート回収数は774(回収率29.4%)。業種別にみると運送業161(同21%)、貸渡業481(同62%)、兼業131(同17%)。回答事業者中、67%の518事業者が下請法適用対象だった。
超の主眼である主な取引実態は、過去1年間程度の期間で、特に条件が悪いと思われる代表的な事例について、該当する各契約(定期用船契約・運航委託契約・トリップ契約・運送契約)毎に設問した。
国交省ではこの調査結果について、「昨年度までは、下請法等の整備と内航海運市場の回復により改善方向にあった内航取引の実態は、昨年秋以降の内航市場の悪化に伴い、かつての状況に逆戻りしている傾向がみられた。下請法等によりその程度は抑制されているものの、特に、下請法及び独占禁止法の特殊指定の違反となる恐れがある問題も見受けられ、今後とも総連合会と協力し、なお一層の取引環境の改善が必要と考えられるため、引き続き環境の整備に努めていきたい」としている。
公表された調査結果は、大要次の通り。
(1) 定期用船契約期間中の一方的契約変更(用船料減額、返船等全285 件)
定期用船契約については、半数強は何らかの変更が回答し、「用船料引き下げ」との回答が46.3%(210社)と多い割合であった。また、運航委託契約への変更における下請代金(手取り収入)の減少は、「3割~6割」との回答が多く、「7割以上」との回答もあった。
(2)運航委託契約における最低保証の有無(「なし」全該当件数82 件)
運航委託契約については、輸送量や代金の最低保証については、「ある」は23.3%にとどまり、「ない」が63.6%と多い割合であった。
(3)手形の受領時期(60 日超の全該当件数55)
各契約のうち、現金と手形の場合及び手形のみの場合において、受領期間が60日を超える割合が特に多い割合であった。
(4)銀行振込料を事前取決めなく代金からの減額(全248 件)
各契約のうち、「支払代金から減額」と約2割から4割程度が回答。
(5)陸上側作業実施の対価支払(貨物船・タンカー)
貨物船おいては、ダンネージ片付け対価の支払いに対し、「不十分」及び「不払い」が全116件、特に船艙内のクリーニング対価支払いに対しては、同様に全137件であり、作業の要請を断れるかについては、最終的に断れないが全236件と多い割合であった。また、タンカーについては、封印作業対価の支払いに対し、「不十分」及び「不払い」が全110件、特にホース・ジョイント作業対価支払いに対しは、同様に全130件であり、作業の要請を断れるかについては、最終的に断れないが全168件と多い割合であった。
(6)取引先とトラブルが生じた場合、第三者(裁判所、公正取引委員会、国土
交通省、内航総連等)へ相談等を行うことについて(「できない」全該当件
数349 件)
運送契約を除く、各契約において、「堂々と相談や申告ができる」の回答は
少数で、「必ず取引を失うのでできない」及び「不利となるリスクがありでき
ない」との回答が4割を超える多い割合であった。特に運航委託契約においては、「必ず取引を失うのでできない」が昨年度調査7.9%から14.0%へと大きく増加した。
(7)公正な取引環境をつくるために、行政、業界団体(組合)で取り上げるべき課題及び内航海運市場の改善に有効な方策(複数回答あり)
取り上げるべき課題は、契約・約款の解説書作成と説明(45%)、定期的な調査等による実態把握(37%)、下請法等の説明会(28%)の順で多かった。また、内航海運市場の改善に有効な方策は、契約ルールの明確化・徹底(47%)、グループ化等オーナーの組織体制づくり(30%)、多重構造の是正(25%)の順で多かった。
【定期用船契約期間中の一方的契約変更の具体的な内容】
○あるオペに3 隻用船に出していたが、全部返船された。その中には1 年半の新造船も含まれている。
○定期用船期間1.5 年残し、用船料協定期間0.5 年残し、一方的に返船。
○定期用船契約中、運航委託契約に突然変更。
○運航委託と言われても月に1 回も航海なし。
○運航委託はやむなく繋船しても何の保証もない。
○ 一方的に34%も用船料が減額された。
調査結果報告書 PDF