平成21年12月11日(水)Vol.146
措置事業の早期終了に努め、毎年度の資金管理計画を公表
国は着実な債務償還で政府保証額が前年度以下となる監督
内閣府の規制改革会議、今後の規制改革の課題をとりまとめ
内閣府の規制改革会議はこのほど、「更なる規制改革の推進に向けて」をまとめ発表した。同会議は、平成19年1月に発足以来、広く国民から規制改革要望を受け付けつつ、不適切な規制の見直しや過剰な規制強化の阻止、官による業務の民間開放に向けた取り組みを進め、3回にわたり答申したが、今回の取りまとめは、これまでの取り組みを踏まえ、どのような規制改革を実現すべきか、当会議の考え方をまとめたもの。
このとりまとめは、政府の各行政分野毎になっており、そのうち運輸分野、とりわけ内航海運の関わる問題として、以下のように表記されている。
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更なる規制改革の推進に向けて
~今後の改革課題~
規制改革会議 2009年12月
運輸分野
はじめに
規制改革会議は、平成19年1月に発足以来、広く国民から規制改革要望を受け付けつつ、不適切な規制の見直しや過剰な規制強化の阻止、官による業務の民間開放に向けた取り組みを進め、3回にわたり答申を行った。この取りまとめは、これまでの取り組みを踏まえ、政策を担う政治家、更に一般の国民の方々に読んでいただくために、どのような規制改革を実現すべきか、当会議の考え方をまとめたものである。
現在の日本には、緊急に取り組まなければ手遅れとなる重要課題が山積している。少子高齢化が急速に進行し、社会保障の負担が耐えられないほど大きくなりつつあり、労働力が減少し国力が衰退する危機にある。官が肥大化を続け、国や自治体の借金に歯止めがかからない。日本経済の成長を促すことが不可欠にもかかわらず、医療・介護・保育・農業など成長の可能性を秘めた分野での政策転換が進んでいない。こうした難局にあって、政治がリーダーシップを発揮し、国民の合意を得て、政策を根本から見直していくことが今ほど求められている時はない。
こうした重要課題に取り組む際に、大胆な規制の見直しと官の事業の民間開放を徹底させる必要がある。第二次大戦後日本が復興を遂げる途上で、官が強く関与する形で社会保障制度や農業など産業政策の基本が形成された。これらは当時は日本の復興に大きく貢献するものであったが、今や成熟した現在の日本経済に適合するよう、自由な経済活動を可能とする合理的で効率の良いものに改革する必要がある。官の過剰な関与を排除し、時代遅れの規制を改革するべきだ。
規制改革の源流は、1980年代に国鉄・電電・専売公社を民営化した土光臨調にある。その後、90年代半ばから民間出身者の意見を活かす形で政府内に規制改革を推進する組織が数次にわたり設置され、今日に至っている。当初は主に経済分野の規制緩和に力を入れ、これは大きな経済的効果をあげた(注) 。
2000年以降は、医療・保育・農業・教育など官が需給を調節し価格を決定する「官製市場」と言われる分野での規制改革に取り組んだ。上述の通り、こうした分野は第二次大戦後復興過程で形成された諸制度の上に成り立ち、無駄と非効率を温存しているため、これらの改革が日本経済を大きく成長させる可能性を持つ。しかし、こうした分野では「族議員」と言われる政治家、規制と天下り先を温存したい官僚、既得権を持つ事業者・団体が「鉄のトライアングル」として結託し、改革を阻んできた。
こうした強固な抵抗を突破する実行力の点で、脱官僚政治と「族議員」の排除を掲げ、政権交代を果たした新政権に期待するところは極めて大きい。この取りまとめは、新政権に対する意見具申として、政治的な抵抗勢力に斟酌せず本来あるべき規制改革の姿を述べたものだ。しがらみに囚われること無く、あるべき規制改革が実現されることを一国民として切望するとともに、可及的速やかに改革を強力に推進する後継組織の構築を求めたい。
思えば、我々「規制改革会議」任期3年間は、規制改革への逆風が日増しに強くなり、反比例して政権のサポートが希薄の度を加えていった、いわば退嬰の期間であった。そんな生産性の極めて低い作業であることを熟知しながら、専ら「世のため、人のため」に、時に本業を擲ってまで、全力投球で共に闘ってくれた当会議の15人の同志、そして苦吟しながらそれを支えてくれた事務局の皆さんに、心からの謝意と敬意を捧げて、私の結びとしたい。
規制改革会議 議長 草刈隆郎
(注) 内閣府の調査によれば、規制改革の経済的効果は90年代より2005年までの期間で累計18兆円、国民1人当たり14万4,000円に達すると推定されている。
基本的な問題意識
運輸分野は、国民生活の基盤をなすものであり、安全・安心には十分に配慮しつつ、事業者の創意工夫による、より一層の利用者利便の向上や事業活動の効率化・活性化を目指した取り組みが必要である。とりわけ、高齢化が進展する中、日々の交通手段として、公共交通は必要不可欠なものとなっており、地域のニーズや事業者の創意工夫に対応した取り組みを進めていくことが重要である。
(略)
◇改革の課題
(1)内航海運暫定措置事業について
内航海運暫定措置事業については、交付金を先に交付し、後から納付金で収支を相償わせるという事業構造であり、収支が相償い終了するまでには相当程度の期間を要するものと考えられる。
そこで、内航海運暫定措置事業については、できるだけ早期に終了するよう努めるべく、引き続き毎年度ごとの暫定措置事業の資金管理計画を明確にさせ、これを公表すべきである。
また、国としても着実な債務の償還が図られ、本件業務に係る政府保証額が前年度以下となるように監督することが必要である。
(2)地域交通機関について
地域における交通機関である、離島航路と乗合バスにおいて、輸送人員が減少し、事業者の経営悪化が進んでいる状況にある。今後も国や地方自治体の助成のもと、離島航路および乗合バスを維持・改善していくためには、効率的 で利便性の高いサービスを提供する必要がある。
そこで、離島航路や地方バス路線を維持するために行われている補助制度について、事業者の経営努力を促進し、地域や事業者の創意工夫が十分に活かされるようにすることによって、離島航路や地方バス路線を活性化するとい う観点から、例えば、入札制による事業者選定など、補助金の更なる効率的な活用に向けた方策を推進する必要がある。