平成22年5月28日(金)Vol.187
内航フィーダー船に暫定措置の特例求める
国交省が外航海運検討会報告書とりまとめ
国土交通省は5月27日、外航海運検討会報告書をまとめ発表した。注目されるのは、この中で「拠点となる港湾の地位を確固たるものにするため、国内フィーダー輸送を一層機能的に確立させることが重要である」とし、「内航フィーダー船の競争力強化のために船舶を大型化し、輸送効率をあげて輸送単価を下げることが課題となる。納付金が船舶の大きさに比例して増えていく仕組みの暫定措置事業は、内航総連合会が内航フィーダー船等について船舶建造負担軽減が図られる特例措置を講じる必要がある」としている点である。
さる5月17日の国交省の成長戦略会議最終取りまとめに基づき、内航総連合会は20日の理事会で既報のように「大型フィーダー専用コンテナ船の取扱について」で特例措置を決めたが、今回の報告書ではこうした一連の動きとリンクした内容となっている。
国交省では、昨年10月設置された成長戦略会議で「海洋立国日本の復権」が検討テーマに掲げられたことから、昨年12 月から関係有識者による外航海運検討会(座長・東京大学柳川範之准教授)を開催してきた。
同検討会では、我が国外航海運の国際競争力強化及び我が国外航海運を支える海技人材や内航海運、造船業を含む海事産業クラスター全体の連携や競争力強化に関し検討を行い、成長戦略会議での議論に貢献するとともに、今後の施策の方向性等について、次を柱とする報告書を取りまとめた。
1.日本籍船を中核とする日本商船隊の国際競争力強化
2.「海洋立国日本」を支える船員(海技者)の確保・育成のための基盤整備
3.日本籍船増加を妨げる各種規制の見直し
4.内航海運の競争力強化、内航海運・港湾との連携
5.海運分野におけるその他の制度の改革等
6.造船・舶用工業の競争力強化、国際競争条件の均衡化
以下は、内航海運に関する記述箇所である。
(略)
【主な論点】
効率的で安定した港湾と海運の実現に向けて、主な論点としては以下のようなものがあると考えられる。
(港湾関係)
効率的で安定したサービスを提供する港湾を実現していくためには、選択と集中により、物流トータルコストの削減、港湾運営の効率化等を進めることが必要である。
また、海洋ネットワークの観点から拠点となる港湾の地位を確固たるものにするため、その港湾と国内各地を結ぶ国内フィーダー輸送を一層機能的に確立させることが重要である。
(略)
【内航海運の競争力強化、内航海運・港湾との連携】
~日本の海の玄関口として、東アジアの主要港となることを目指す国際コンテナ戦略港湾施策と連携して、内航海運の競争力を強化し、もって海洋ロジスティックスの面から我が国の経済活動・生活を支えることに貢献~
○内航フィーダー網の充実のための総合対策 ≪速やかに≫
・内航海運暫定措置事業の改善
・内航フィーダーを担う海運事業者に係る負担の軽減
・港湾コストの低減 等
(考え方)
戦略的な港湾が国際コンテナ戦略港湾としてその機能を十二分に発揮していくためには、内航フィーダー網を充実するとともに、荷主から見てトータルのコストが下がるよう、内航フィーダーに関わる全ての関係者が総合的な取組みを行うことが必要である。
・内航フィーダーにおいて内航海運が競争力を強化するために船舶を大型化し、輸送効率をあげてコンテナ1本当たりの輸送単価を下げることが課題となる。一方、暫定措置事業については、その納付金が船舶の大きさに比例して増えていく仕組みとなっていることから、内航フィーダーを担うコンテナ船等について船舶建造負担軽減が図られる特例措置を講じる必要がある。(日本内航海運組合総連合会による暫定措置事業の特例)
・あわせて、内航フィーダーを担う海運事業者の競争力強化のためには、資本費や運航経費等のコストの低減が課題であり、船舶の建造・維持に係るコストや海上輸送に係るコストの約3割を占める燃料費の負担軽減等についての措置を講ずることが必要である。加えて、内航フィーダー事業者の競争相手は韓国などの外航海運事業者であり、公租公課などの点で我が国内航フィーダー事業者はもともと不利な状況に置かれているという指摘があることからも早急な対応が必要である。具体的な施策としては、燃料にかかる石油石炭税や固定資産税の軽減措置、輸送を担う内航フィーダー船やバージに対する経営効率化に対する支援強化が考えられる。
・また、内航フィーダーの競争力強化のためには、港湾における諸料金が国際競争力を有するものとなるよう、「民」の視点による港湾経営の実現、ターミナルの一体運営、公設民営化の推進などにより港湾コストの低減、運用の効率化を進める必要がある。今や我が国の港湾の国際競争力の確保のためには、一刻の猶予も許されないことから、内航フィーダー輸送に係る関係者の総力を結集することが必要である。ここではゲートオープン時間の24時間化に向けた拡大、貨物位置などの情報の関係者での共有という課題もある。
※ 内航フィーダーの効率化については、カボタージュ制度の解禁が内航フィーダーのコスト低減に資するとの意見があり、かなりの意見交換と議論が行われたが、外国企業に対して一方的に解禁することは国益を損なう恐れがあるとともに、国内安定輸送を阻害する要因になるとの意見も強くあった。
○内航海運の競争力強化に向けた低炭素化等に資する税制措置 ≪速やかに≫
(考え方)
内航海運については、事業者の99.6%が中小企業であり、また船舶のオーナーの約7割が船舶を1隻しか所有していない「一杯船主」であるなど、脆弱な産業構造により成り立っていることから、競争力強化に向けた抜本的なコスト低減等の取組みが期待できない状況にある。特に、こうした産業構造を背景に船舶の代替建造が進んでいないことから、事業者が所有する船舶全体の7割程度を、環境性能の観点から劣後する耐用年数を超えた老朽船が占めており、内航海運の競争力強化の阻害要因となっている。
このため、内航海運の競争力強化に向けて、船舶の環境性能向上や船舶の大型化等を促進することによりコストを低減するとともに、競争力強化に向けた抜本的な取組みを実施することができるようグループ化の促進など内航海運の産業構造の改善を促すような施策を講じることが必要である。具体的な施策としては、内航海運の低炭素化、大型化、グループ化に向けた船舶の特別償却制度、買換特例制度の維持・拡大、船舶に係る固定資産税の軽減等が考えられる。
(略)
外航海運検討会 メンバー名簿
【政務三役】
三日月大造 国土交通大臣政務官
【成長戦略会議委員(海洋分野とりまとめ)】
(座長)柳川範之 東京大学大学院経済学研究科准教授
【海事関係有識者】
太田 和博 専修大学商学部教授
羽原 敬二 関西大学政策創造学部教授
村井 基彦 横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
永田 高士 公認会計士(有限責任監査法人トーマツ)
遠藤 修身 日本海事新聞社専務取締役
【関係団体】
宮原 耕治 (社)日本船主協会会長、(社)日本物流団体連合会会長
上野 孝 日本内航海運組合総連合会会長
元山 登雄 (社)日本造船工業会会長
【成長戦略会議委員(海洋分野担当)】
坂村 健 東京大学大学院情報学環教授
中条 潮 慶應義塾大学商学部教授
御立 尚資 (株)ボストンコンサルティンググループ日本代表
大上二三雄 エム・アイコンサルティンググループ(株)代表取締役社長
○開催実績
第1回 平成21年12月 8日
第2回 平成21年12月24日
第3回 平成22年 1月15日
第4回 平成22年 1月22日
第5回 平成22年 2月22日
第6回 平成22年 3月11日
第7回 平成22年5月19日(水)18:00~