平成20年3月26日(水)Vol.35
国内需要、輸出とも底堅く推移
日本鉄鋼連盟が『鉄鋼需給の動き』(2008年3月)を発表
日本鉄鋼連盟は3月25日、『鉄鋼需給の動き』(2008年3月)を発表した。概要は次の通り。
07 年10~12 月期の実質GDP成長率(改定値)は、前期比年率3.5%増と前期の同1.2%増から加速した。しかしながら、同期の法人企業統計では経常利益が2四半期連続、設備投資が3四半期連続の前年同期減となっており、企業を取り巻く環境は厳しさを増している。海外は、米国経済が減速しており、欧州も成長率見通しが下方修正された。一方、新興国経済はインフラ投資、建設投資、個人消費等内需が依然高水準で推移している。
国内需要を見ると、1月の普通鋼鋼材受注は改正建築基準法の影響もあり、建設向けと販売業者向けの前年同月比減が続いているが、製造業向けは7ヵ月連続、特殊鋼は6ヵ月連続での前年比増となり、鋼材内需全体では0.2%増と底堅く推移している。
一方、外需は、1月の全鉄鋼輸出が前年同月比9.7%増の305 万トンと同月の過去最高を更新するなど好調に推移しており、1月の粗鋼生産量も前年同月比1.8%増の1,025 万トンと、同月の過去最高を更新した。他方、1月末の普通鋼鋼材国内在庫は、前月末比では減少したものの前年比では10 万トン増の562 万トンと依然高水準で推移している。
海外鉄鋼市場では、減速が続く欧米を除き世界の鉄鋼需要は底堅く推移している。特に中国は生産の拡大傾向に歯止めがかからず、2月の粗鋼生産は前年同月比7.0%増の3,888 万トンに達した。
他方、2月の鋼材輸出は、年初に実施された輸出関税率の賦課/引き上げの影響もあり、前年同月比29.0%減の311 万トンと、18 ヵ月ぶりの300 万トン台に低下した。欧米経済減速が新興国の鉄鋼需要に与える影響を慎重に見極めるとともに、中国の生産拡大と輸出動向には引き続き注視が必要である。
1. 経済動向
鉱工業生産は高水準ながらも一進一退
・1月の鉱工業生産は、前月比2.2%減の109.5と2ヵ月ぶりに低下した。また、先行きは2月2.9%減、3月2.8%増の見通しとなっている。こうした状況から経済産業省では、「横ばい傾向」との基調判断を据え置いた。
・1月の機械受注は、製造業・非製造業ともに増加し、全体では前月比19.6%増の1兆2,152億円と、3ヵ月ぶりの増加となるとともに、96年10月(1兆3,062億円)以来の高水準となった。しかしながら、大型案件の受注が全体を押し上げた特殊要因を考慮し、内閣府は1月の基調判断を「一進一退で推移」と8ヵ月連続で据え置いた。
・07年10~12月期の実質GDP成長率(改定値)は、設備投資と輸出が堅調に推移したこと等から、前期比年率3.5%増となり、2四半期連続のプラス成長となった。また07暦年では2.1%増と、8年連続のプラス成長となった。
2. 鉄鋼需要産業動向
住宅は回復傾向も7ヵ月連続減、非住宅は減少幅が再び拡大
<土木>
〇1月の公共土木前払金保証請負金額は前年同月比0.6%増。
・ 国の機関(24.7%増)が2ヵ月連続増。地方の機関(6.1%減)が10 ヵ月連続の減少も、合計では9ヵ月ぶりのプラス。
〇1月の公共土木受注金額は前年同月比16.3%増。
・ 国の機関(38.7%増)が9ヵ月連続、地方の機関(6.0%増)が2ヵ月連続してそれぞれ増加し、全体では3ヵ月連続のプラス。
〇1月の民間土木工事受注金額は前年同月比12.6%増。
・ 製造業・鉱業・建設業(48.2%増)、電気・ガス業(57.5%増)、運輸通信業(3.0%増)等、主要部門がいずれも増加し、全体では4ヵ月ぶりのプラス。
<建築>
〇1月の新設住宅着工戸数は前年同月比5.7%減の8.7 万戸。
・ 持家(4.2%減)、貸家(2.7%減)は1桁減、分譲(11.6%減)も前月からは減少幅縮小。また、前年の半分程度に落ち込んでいたマンションも12.0%減まで回復。全体では5.7%減と7ヵ月連続減少も、減少幅は次第に縮小。
・ 年率換算着工戸数は119 万戸で、月を追って回復傾向も、06 年度の129 万戸にはなお届かない状況。
〇1月の非住宅着工床面積は前年同月比13.2%減と、減少幅が再び拡大。
・ 用途別では、商業・サービス業用(6.6%増)が3ヵ月連続増も、鉱工業用(28.3%減)、公益事業用(44.1%減)、公務文教用(26.3%減)はいずれも2桁台の落ち込みが続き、かつ減少幅が再度拡大に転じた。
・ 使途別では、店舗(3.0%増)が3ヵ月連続増。一方、事務所(8.3%減)、工場(19.3%減)、倉庫(11.0%減)は減少続く。
・年率換算値は6,130 万㎡と、06 年度の7,210 万㎡を再び割り込んだ。
<自動車>
○2月の国内販売(除く輸入車)は前年比0.5%減の48 万台と2ヵ月ぶりのマイナス。
・ 車種別では、乗用車(1.0%増)は、小型車(4.9%減)が2ヵ月ぶり、軽(0.3%減)は減少幅は縮小したものの11 ヵ月連続の減となったが、新型車効果により普通車(12.6%増)が8ヵ月連続の増加となり、乗用車全体では2ヵ月連続のプラスとなった。一方、トラック(8.2%減)は排ガス規制需要の反動減が依然として続いており、軽(5.7%減)は3ヵ月連続、普通車(6.5%減)が16 ヵ月連続、小型車(12.8%減)も18 ヵ月連続の減となり、トラック計では18 ヵ月連続のマイナスとなった。
○2月の完成車輸出は前年比13.1%増の59 万台と31 ヵ月連続のプラス。
・ 2月の完成車輸出は、主力の北米向け(5.5%増)は3ヵ月連続の増、EU向け(8.4%減)
・ は5ヵ月連続の減となり、全体では13.1%増の59 万台と31 ヵ月連続の増加となった。なお、2月の米国新車販売は、ガソリン価格の高騰やサブプライムローン問題等の影響もあり、前年比6.5%減と4ヵ月連続のマイナスとなった。米ビッグスリーでは、GM、クライスラー及びフォードがSUVやトラックの落ち込みを受け、軒並み大幅減となった。日系ブランヨタは減少した。なお、トヨタはフォードを下回り3位に後退となった。
○2月の四輪車生産は、前年比9.0%増の110 万台、7ヵ月連続のプラス。
・ 2月は、車種別では、乗用車(9.0%増)は、軽(9.3%減)が9ヵ月連続でマイナスとなったが、小型車(1.5%増)が2ヵ月連続、普通車も18.2%増と28 ヵ月連続のプラスとなり、全体では7ヵ月連続のプラスとなった。トラック(5.8%増)は、小型車(9.2%減)が13ヵ月連続の減少となったものの、普通車(15.6%増)が7ヵ月連続の増加、軽(4.6%増)は3ヵ月連続のプラスとなり、トラック計では2ヵ月連続のプラスとなった。
<産業機械>
○1月の受注は前年同月比35.5%増と7ヵ月連続のプラス。
・ 内需(24.8%増)は、官公需(14.7%減)は減少したが、製造業を中心とした民需(30.9%増)の大幅増により3ヵ月連続のプラス。また、外需(46.0%増)は原動機(5.8 倍)が欧州向け大型発電設備案件の成約により大幅増となった他、運搬機械(17.3%増)、建設機械(17.6%増)なども好調に推移しプラス。全体では35.5%増と7ヵ月連続の増加。
○1月の生産は前年同月比4.6%減と3ヵ月連続のマイナス。
・ 土木建設機械(7.9%増)は好調を維持したが、ボイラ・原動機(12.3%減)、化学機械(28.5%減)、運搬機械(12.7%減)が2桁減となった他、農業機械(4.5%減)、金属加工工作機械(7.3%減)、冷凍機(3.4%減)も減少し、全体では3ヵ月連続のマイナスとなった。
<電気機械>
○1月の生産は前年同月比6.9%増と30 ヵ月連続のプラス。
・ 重電(0.4%増)は回転電機が引き続き堅調に推移し7ヵ月連続のプラス。
・ 民生用電機(14.9%減)は、冷蔵庫(23.6%減)、洗濯機(3.4%減)、ルーム・エアコン(19.6%減)など白物家電の不振から12 ヵ月連続のマイナス。一方、民生用電子(27.3%増)は、液晶テレビ(58.4%増)、デジタルカメラ(50.6%増)等の好調により12 ヵ月連続の増加。
・ また、通信機械(6.8%増)は3ヵ月連続のプラス、電子部品(13.4%増)は30 ヵ月連続のプラスとなった。
<造 船>
○2月の新造船受注は、前年同月比52.1%増の142 万G/T と3ヵ月連続のプラス。
・ 撒積船を中心に12 ヵ月連続で100 万G/T を超える高水準を維持。
○1月の起工量は、前年同月比61.3%増の110 万G/T と2ヵ月連続のプラス。
○2月末手持工事量は、前月比0.7%増の6,522 万G/T 、約4年分の工事量を確保。
・ 輸出船契約量は前年同月比49.3%増の183 万G/T と高水準で維持し、手持工事量は再び過去最高記録を更新した。
3. 鋼材受注(内需)
1月の鋼材受注、普通鋼は3ヵ月連続でマイナス。一方、特殊鋼は6ヵ月連続でプラス、月間ベースで過去最高を更新
○1 月の普通鋼鋼材受注(内需計)は、前年比1.4%減の465 万トン。
・ 建設用(4.4%減)は、土木(3.4%減・2ヵ月連続)、建築(4.1%減・5ヵ月連続)、その他建設用(6.4%減・5ヵ月連続)いずれもマイナス、全体でも5ヵ月連続で前年実績を下回った。
※その他建設用:建築金物、建築用付属資材(配管・配線用、サッシ、シャッター等)、仮設材(足場鋼管、メタルフォーム等)など。
・ 製造業用(4.4%増)は、電機(7.3%減)が2ヵ月連続で減少したが、自動車(8.0%増)、造船(6.0%増)は引続き好調持続、産機(5.1%増)も再びプラスに転じており、全体では7ヵ月連続で増加。
・ 建築向けが大部分を占めるとみられる販売業者向け(8.8%減)は8ヵ月連続でマイナス。
○1月の特殊鋼鋼材受注(内需計)は、前年比6.7%増の123 万トン、6ヵ月連続でプラス。
・ 製造業用(9.4%増)は、産機(12.7%増)、次工程用(12.6%増)が2桁増、自動車(8.0%増)向けも堅調を維持しており、9ヵ月連続でプラス。
・ 販売業者向け(7.4%減)は低調も、内需全体では同6.7%増の123.3 万トンと6ヵ月連続で増加、
月間ベースとしては06 年11 月(123.1 万トン)を上回り過去最高を更新した。
4. 鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)
2 月の粗鋼生産量(速報)は前年同月比6.5%、60 万トン増の981 万トン
1 月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比2.9%増の176 万トン、3 ヵ月連続のプラス
○2 月の粗鋼生産、普通鋼鋼材生産、1月の普通鋼鋼材出荷・在庫動向
4.鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)
・2008 年2 月の粗鋼生産(速報)は、前年同月比6.5%、60 万トン増の981 万トンで21 ヵ月連続の増加となり、2 月としては1980 年(閏年)の924 万トンを超え史上最高となった。うち転炉鋼(8.5%増)は729 万トンで21 ヵ月連続、電炉鋼(1.2%増)は252 万トンで2 ヵ月振りの増加となった。
・普通鋼鋼材生産は、前年同月比6.9%増の692 万トンで3 ヵ月連続の増加となった。
・普通鋼鋼材国内向け出荷は、前年比1.1%減で5 ヵ月連続の減少、輸出向け出荷は同15.2%増で7 ヵ月連続の増加となった。
・1 月末の普通鋼鋼材国内向在庫は、前月末比3 万トン減の562 万トンとなり、在庫率は同2.0 ポイント低下して112.1%となった。
○1 月の特殊鋼鋼材需給
・1 月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比2.9%、5 万トン増の176 万トンと3 ヵ月連続の増加となり、月間生産量では過去3 番目の水準を記録した。鋼種別には、ステンレス鋼が2 桁減となったほか、高抗張力鋼が減少したものの、ばね鋼、軸受鋼が2 桁増、機械構造用炭素鋼、構造用合金鋼も増加した。
・1 月の特殊鋼鋼材出荷は、国内向け(5.2%増)が5 ヵ月連続の増加となったが、輸出向け(2.0%減)は2 ヵ月ぶりに減少した。
・1 月末の特殊鋼鋼材在庫は、前月末比3 万トン増の152 万トンとなり、在庫率は3.0ポイント上昇し89.8%となった。
5. 鋼材流通、鋼材輸入
1月の普通鋼鋼材輸入は前年同月比9.0%減の32 万トン、線材の入着増続くも鋼板類はすべて減少
○1月における鋼材流通の動向
・市中販売(確報)は前年同月比0.4%、1.3 万トン増の301 万トンで3ヵ月ぶりの増加となった。品種別には、小棒(8.3%減)、鋼管(4.7%減)は減少したが、H形鋼(0.8%増)、厚中板(3.3%増)、熱薄類(5.7%増)、冷薄類(3.4%増)、亜鉛めっき鋼板(2.4%増)は増加した。
・市中在庫(自社所有分)は、前月末比0.2%、5千トン減の275 万トンと2ヵ月ぶりに減少した。品種別には、厚中板(0.4%増)、熱薄類(1.8%増)、亜鉛めっき鋼板(2.8%増)は増加したが、H形鋼(2.6%減)、小棒(1.4%減)、冷薄類(0.7%減)は減少した。
〇1月の普通鋼鋼材輸入の動向
・ 1月の普通鋼鋼材輸入は、前年同月比9.0%減の32 万トンと4ヵ月連続で減少した。品種別には、線材(18.0%増)は4ヵ月連続の2桁増となったが、厚中板(23.4%減)、熱延薄板類(1.2%減)、冷延薄板類(9.6%減)、亜鉛めっき鋼板(19.7%減)など鋼板類はすべて減少した。
・国別には、中国(15.8%減)が再び減少に転じた他、韓国(5.9%減)が2ヵ月連続、台湾(22.2%減)も9ヵ月連続の減少と主要3ヶ国いずれも減少した。
6. 鉄鋼輸出
1 月の全鉄鋼輸出は、前年同月比9.7%、27 万トン増の305 万トン、1 月としては初の300万トン台
○ 1 月の全鉄鋼輸出は、前年同月比9.7%、27 万トン増の305 万トンと2ヵ月連続で増加した。1月としては04 年1 月の296 万トンを上回り過去最高を更新、初の300 万トン台となった。仕向先別では、米国向け(23.4%減・11 ヵ月連続)は依然低調も、中国向け(2.2%増)が2ヵ月連続プラス、アジア向け(14.8%増)は4ヵ月連続で2桁増となった。ASEAN 向けは同23.9%増と2 ヵ月連続で2 割を超える大幅増となっている。品種別にみると、熱延鋼板類(8.1%増)、冷延鋼板類(10.4%増)は増加したが、亜鉛めっき鋼板(3.0%減)は2ヵ月振りに減少した。
○ 1 月の輸出平均単価は、全鉄鋼ベースで前月比▲37.8 ドルの985.5 ドルととなり、6ヵ月振り
に1,000 ドルを下回った。
7. 海外市場
欧米景気の低迷や原油高等から世界の経済は先行き不透明な情勢
1.概 況
世界経済は新興経済・資源国が高成長を持続しているものの、米国が減速傾向を強め、欧州も先行き不透明感が増して来ている。特に、米国はサブ・プライム問題が深刻化して景気減速が顕在化している。米・欧景気の成行きやエネルギー価格の動向次第では新興経済・資源国にも影響を及ぼす可能性もあり、先行きは予断を許さない情勢となっている。
しかしながら、世界の鉄鋼需要は減速の続く欧米を除いて今のところ底堅さを保っており、直ちに需給バランスに変調を来たす可能性はまだ低いとされるものの、今後の中国の生産及び輸出の動向が注視される。
2.主要国の鉄鋼需給動向
○ 米国
米国経済は失速懸念を強めているが、FRB は資金供給の拡大と金融緩和で景気下支えを図っている。1 月の鋼材出荷は昨年同月が需要低迷下にあったため前年同月比7.3%増となり、輸出もドル安を反映して同29.3%増となった。一方、輸入は1 月も中国などからの減少が続いて同9.6%減となった。国内需給は輸入減/輸出増からタイトな状況にあるが、GM 社プラントが関連会社のストで稼動停止に陥っているため先行きは不透明である。なお、製品価格は原燃料高を反映して上昇が続いている。
○ 欧州
欧州経済は減速傾向が鮮明となり、鉄鋼実需には力強さが失われつつあるが、輸入が減少傾向にある一方、先高感なども相俟って流通やユーザーの鋼材手当てが積極化するなかで、域内鉄鋼市場ではタイト感が強まってきている。1 月の粗鋼生産は前年同月比0.7%減と僅かながらも再び減少しているが、主要ミルは鉄鉱石長期契約価格の値上がりを織り込んで薄板類の更なる値上げを打ち出した。鉄鋼市況は域内全般に亘って幅広い品種で上昇傾向を辿っている。
○ 中国
中国経済は原燃料高や雪害の影響など不安定要素が散見されつつも引き続き高成長を持続している。鉄鋼内需は旺盛で鋼材生産は1~2 月累計で前年同期比12.3%増となった。一方、1~2 月の鋼材輸出は前年同期比17.2%減となっているが、これは輸出抑制策に加えて1 月下旬の雪害も影響したとの見方がされている。減少基調が定着するか3 月以降の需給動向が注目される。こうしたなかで、流通在庫は雪害を一部反映したかたちで高水準に達し、国内市況は原燃料高もあって昨年から上昇が続いている。
○ 韓国
韓国経済は輸出と民間投資が下支えして安定成長が続いている。鉄鋼内需は製造業を中心に概ね好調で、1~11 月の鋼材生産はやや伸びが鈍化しながらも前年同期比6.7%増となっている。一方、1 月の鋼材貿易をみると、輸出は前年同月比5.5%増となり、輸入は同31.2%増となっている。なお、輸入は国内供給量が限られている半製品や厚板、国内価格が高騰している条鋼類を中心に大幅な増加を辿っているが、このところロシアやブラジルなどの遠隔地からも増加している。
○ タイ
タイ経済は輸出と政府消費が下支えするとともに民間投資が加速するなど回復傾向を辿っている。1 月の鋼材生産は熱延・冷延薄板類がプラスとなるなど緩やかな回復傾向を辿っている。2007 年累計で鋼材貿易をみると、輸出は前年比24.2%増となったが、輸入は同12.1%減と輸出増/輸入減となった。なお、12 月の輸入はこれまで減少基調を辿ってきた鋼塊・半製品や冷延薄板類に加えて、熱延薄板類が15 ヶ月振りに前年同月比マイナスとなっている。
○ マレーシア
マレーシア経済は個人消費と投資に牽引されて高成長が続いている。鉄鋼需
要は建設や製造業などいずれも順調な回復過程を辿っている。鋼材内需は引き続き旺盛なものの、12 月の鋼材生産は棒鋼・線材や溶接鋼管が前年同月を下回った。なお、2007 年累計では亜鉛めっき鋼板と溶接鋼管が前年比2 桁増、棒鋼・線材は半製品価格の高騰もあって前年比マイナスとなっている。一方、鋼材貿易は2007 年1~8 月まで判明しているが、輸出が前年同期比11.4%減、輸入が同22.2%増と輸出増/輸入減の傾向である。
○ インド
インド経済は高成長を持続するも鈍化の兆しが窺われ、インフレ圧力も再び台頭している。鉄鋼需要が堅調に推移するなかで、鋼材生産は1~11 月累計で前年同期比9.4%増、粗鋼生産は2008 年1 月が前年同月比8.8%増と、着実な増産が続いている。一方、1~11 月累計の鋼材貿易は、輸出が前年同期比33.4%減となり、輸入が同52.6%増となっているが、輸入は年央以降伸びが次第に縮小してきている。なお、鋼材価格は原料コストの上昇等もあって国内ミルによる値上げが行なわれている。