平成20年4月28日(月)Vol.47
鉄鋼国内需要は依然堅調に推移
日本鉄鋼連盟が『鉄鋼需給の動き』(2008年4月)を発表
日本鉄鋼連盟は4月25日、『鉄鋼需給の動き』(2008年4月)を発表した。概要は次の通り。
2月の鉱工業生産指数が2ヵ月連続のマイナスとなる中、原燃料価格の高騰が企業収益を圧迫しており、3月の日銀短観による大企業製造業の業況判断指数は2四半期連続の悪化となった。また、1月に大幅増となった機械受注(船舶・電力を除く民需)は、2月は大幅減となり、ほぼ一進一退で推移している。海外においては、新興経済国並びに資源国は堅調に推移しているが、米国は金融収縮と企業業績の悪化が雇用に波及して一段と減速感を強めており、欧州も金融市場の混乱と物価上昇並びに建設投資の調整から、ドイツを除いて景況感が悪化している。
国内需要を見ると、2月の普通鋼鋼材受注は建設向けが6ヵ月ぶりに前年比プラスに転じ、販売業者向けは引き続き前年割れとなったものの、製造業向けが好調を維持したこともあり、全体では堅調に推移している。これを受けて、2月の粗鋼生産は前年同月比6.6%増の981万トンとなった。
他方、2月末の普通鋼鋼材国内在庫は前月末比24万トン減の538万トンとなったが、前年比では依然として3万トン増の高水準で推移している。このような中、経済産業省は08年度第1四半期の粗鋼需要見通しを、建設向けが前期比で微増、製造業向けは同比減少とみて、前期比では54万トンの減となるものの、3期連続の3,000万トン台となる3,027万トンと発表した。
海外鉄鋼市場は、原燃料高によって市況が急激に上昇しているが、為替の影響やタイミングのずれによりマーケット間で価格差が生じている。今後とも、減速しつつある欧米経済の影響を注視するとともに、世界の鋼材需給バランスに大きな影響を与える中国の生産及び輸出動向、並びに輸入鋼材の太宗を占め、東アジアの鋼材需給に大きく影響を与える韓国の動向に注意を払う必要がある。
1.経済動向
-鉱工業生産は高水準横ばい傾向ながら、企業の景況感は悪化-
・2月の鉱工業生産は、前月比1.2%減の108.2と2ヵ月連続で低下した。また、先行きは3月2.0%増、4月1.0%減の見通しとなっている。こうした状況から経済産業省では、「横ばい傾向」との基調判断を3ヵ月連続で据え置いた。
・2月の機械受注は、1月の大幅増による反動もあり、製造業・非製造業ともに減少し、全体では前月比12.7%減の1兆608億円と、2ヵ月ぶりに減少した。内閣府は基調判断を「一進一退で推移している」に9カ月連続で据え置いた。
・日銀の3月短観によると、大企業製造業の業況判断指数(DI)は円高や原油高などが響き、前回比8ポイント低下のプラス11と、2期連続の悪化となった。景況感の悪化を受け、08年度の設備投資も大企業で前年度比1.6%減と、3月調査としては4年ぶりのマイナスに転じ、慎重な姿勢が伺える。
2.鉄鋼需要産業動向
-住宅は回復傾向も8ヵ月連続減、非住宅は減少幅が再び拡大-
<土木>
〇3月の公共土木前払金保証請負金額は前年同月比11.1%減。
・ 国の機関(6.5%減)が4ヵ月振り、地方の機関(16.7%減)も再び減少となったこともあり、合計では3ヵ月振りのマイナス。
〇2月の公共土木受注金額は前年同月比37.5%増。
・ 国の機関(61.2%増)が10ヵ月連続、地方の機関(10.6%増)が3ヵ月連続してそれぞれ増加し、全体では4ヵ月連続のプラス。
〇2月の民間土木工事受注金額は前年同月比18.0%減。
・ 主要部門では、製造業・鉱業・建設業(60.9%増・7ヵ月連続)は大幅に増加したが、電気・ガス業(59.6%減)、運輸通信業(23.3%減)等は減少に転じたこともあり、全体では2ヵ月ぶりのマイナス。
<建築>
〇2月の新設住宅着工戸数は前年同月比5.0%減の8.3万戸。
・ 持家(2.1%減・13ヵ月連続)、貸家(3.1%減・8ヵ月連続)、分譲(9.7%減・8ヵ月連続)いずれも減少、全体でも5.0%減と8ヵ月連続でマイナス。回復の遅れていた分譲については、減少幅が1桁に縮小したものの、マンション(11.9%減)については依然2桁のマイナスとなっている。
・ 年率換算着工戸数は月を追うごとに回復を辿っていたが、2月は115万戸と5ヵ月振りに前月比マイナスとなった。
〇2月の非住宅着工床面積は前年同月比25.1%減と、減少幅が再び2割台へ拡大。
・ 用途別では、商業・サービス業用(28.4%減)が4ヵ月振りに減少、鉱工業用(25.1%減)、公益事業用(41.6%減)、公務文教用(15.3%減)はいずれも大幅な落ち込みが続いている。
使途別では、店舗(43.9%減)が4ヵ月振りに減少に転じた。事務所(7.4%減)、工場(19.2%減)、倉庫(39.3%減)はいずれも8ヵ月連続での減少となった。
年率換算値は5,561万㎡と、6,000万㎡を下回る低水準に止まった。
<自動車>
○3月の国内販売(除く輸入車)は前年比4.9%減の70万台と2ヵ月連続のマイナス。
・ 車種別では、乗用車(4.0%減)は、新型車効果により普通車(8.6%増)が9ヵ月連続の増加となったものの、小型車(7.1%減)は2ヵ月連続、軽(9.1%減)は12ヵ月連続の減となり、乗用車全体では3ヵ月ぶりのマイナスとなった。一方、トラック(9.2%減)は排ガス規制需要の反動減が依然として続いており、軽(1.6%減)は4ヵ月連続、普通車(14.9%減)が17ヵ月連続、小型車(17.4%減)も19ヵ月連続の減となり、トラック計では19ヵ月連続のマイナスとなった。
・ この結果、07年度は前年比5.7%減の506万台と2年連続で減少。車種別には、乗用車が4.0%減(普通10.8%増、小型10.1%減、軽6.8%減)、トラックは12.5%減となった。
○3月の完成車輸出は前年比12.3%増の64万台と32ヵ月連続のプラス。
・ 3月の完成車輸出は、主力の北米向け(0.9%減)が4ヵ月ぶり、EU向け(8.8%減)も6ヵ月連続の減少となったが、全体では12.3%増の64万台と32ヵ月連続の増加となった。この結果、07年度計では前年度比10.4%増の677万台となり、85年度の685万台に次ぐ過去2番目の水準となった。なお、3月の米国新車販売は、ガソリン価格高騰やサブプライムローン問題等の影響に加え、前年に比べ営業日が2日少なかったこともあり、前年比12.0%減と5ヵ月連続のマイナスとなった。米ビッグスリーは軒並み2桁の大幅な減少となり、日系ブランド車もトヨタが2桁減となったのをはじめ、ホンダ、日産も減少となった。
○3月の四輪車生産は、前年比2.3%増の111万台、8ヵ月連続のプラス。
・ 3月は、車種別では、乗用車(1.4%増)は、軽(16.7%減)が10ヵ月連続、小型車(5.3%減)が3ヵ月ぶりのマイナスとなったが、普通車が10.7%増と29ヵ月連続のプラスとなり、全体では8ヵ月連続のプラスとなった。トラック(5.8%増)は、小型車(3.0%増)が14ヵ月ぶりの増となったのを始め、普通車(8.0%増)が8ヵ月連続の増加、軽(4.5%増)は4ヵ月連続のプラスとなり、トラック計では3ヵ月連続のプラスとなった。この結果、07年度計では、前年比2.5%増の1,179万台となり、6年連続の1,000万台超え、2年連続で1,100万台超えとなった。
<産業機械>
○2月の受注は前年同月比0.6%増と8ヵ月連続のプラス。
・ 内需(3.0%減)は、官公需(37.3%増)は大幅増となったが、製造業を中心とした民需(7.1%減)の減少により5ヵ月ぶりのマイナス。また、外需(4.1%増)は建設機械(17.2%減)が11ヵ月ぶりのマイナスとなったが、原動機(2.6倍)が大幅に増加した他、運搬機械(44.3%増)、工作機械(2.2%増)なども堅調に推移しプラス。全体では0.6%増と8ヵ月連続の増加。
○2月の生産は前年同月比1.3%増と4ヵ月ぶりのプラス。
・ ボイラ・原動機(7.6%減)、農業機械(5.8%減)、冷凍機(0.1%減)は減少したが、土木建設機械(9.9%増)、化学機械(12.1%増)、運搬機械(0.8%増)、金属加工工作機械(3.4%増)
<電気機械>
○2月の生産は前年同月比7.3%増と31ヵ月連続のプラス。
・ 重電(6.2%増)は回転電機、静止電機ともに好調に推移し8ヵ月連続のプラス。
・ 民生用電機(12.2%減)は、冷蔵庫(9.6%減)、洗濯機(6.8%減)、ルーム・エアコン(22.0%減)など白物家電の不振が響き13ヵ月連続のマイナス。一方、民生用電子(13.9%増)は、液晶テレビ(33.5%増)、デジタルカメラ(19.9%増)等の好調により13ヵ月連続の増加。
・ また、通信機械(3.3%減)は4ヵ月ぶりのマイナス、電子部品(10.7%増)は31ヵ月連続のプラスとなった。
<造 船>
○3月の新造船受注は、前年同月比28.2%減の131万G/Tと4ヵ月ぶりのマイナス。
・ 07 年度の新造船受注は前年比1.3%減の1,571万G/Tと2年ぶりのマイナスなったが、8年連続で1,000万G/T超えを記録。
○2月の起工量は、前年同月比31.5%減の91万G/Tと3ヵ月ぶりのマイナス。
○3月末手持工事量は、前月比0.5%増の6,557万G/T、2ヵ月連続で過去最高記録を更新。
・ 07年度の輸出船契約量は前年比24.3%増の2,740万G/Tと03年度の2,605万G/Tを上回り、過去最高記録を更新した。
3.鋼材受注(内需) -2月の鋼材受注、普通鋼は4ヵ月振り、特殊鋼は8ヵ月連続でプラス
○2月の普通鋼鋼材受注(内需計)は、前年比1.7%増の479万トン。
・ 建設用(0.6%増)は、土木(3.0%減・3ヵ月連続)はマイナスとなったが、建築(1.2%増)およびその他建設用(2.9%増)が6ヵ月振りに増加に転じたこともあり、全体でも6ヵ月振りに前年実績を上回った。
※その他建設用:建築金物、建築用付属資材(配管・配線用、サッシ、シャッター等)、仮設材(足場鋼管、メタルフォーム等)など。
・ 製造業用(7.6%増)は、電機(3.7%増)が3ヵ月振りにプラスとなり、自動車(10.9%増)、造船(18.1%増)はともに2桁の伸びとなったほか、産機(3.7%増)も増加、全体では8ヵ月連続で増加。
・ 建築向けが大部分を占めるとみられる販売業者向け(6.5%減)は9ヵ月連続でマイナス。
○2月の特殊鋼鋼材受注(内需計)は、前年比0.8%増の117万トン、8ヵ月連続でプラス。
・ 製造業用(2.0%増・9ヵ月連続)は、産機(9.4%増)、自動車(5.0%増)向けは堅調持続も、次工程向け(2.1%減)が7ヵ月振りにマイナスに転じたこともあり、伸びは鈍化した。
・ 販売業者向け(5.1%減)は引続き前年実績を下回る状況が続くものの、内需全体では同0.8%増の117.2 万トンと8ヵ月連続で増加となった。
4.鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)
- 2007年度の粗鋼生産は前年度3.2%増の1億2,152万トン、1973年度を抜いて史上最高-
○3月の粗鋼生産、普通鋼鋼材生産
・3月の粗鋼生産(速報)は、前年同月比5.1%、52万トン増の1,078万トンで22ヵ月連続の増加となり、単月としてはこれまでの最高であった73年の1,066万トンを抜いて史上最高とった。うち転炉鋼(6.9%増)は801万トンで22ヵ月連続、電炉鋼(0.3%増)は277万トンで2ヵ月連続の増加となった。
・2007年度計は、前年度比3.2%、377万トン増の1億2,152万トンとなり、1973年度の1億2,002 万トンを抜いて史上最高となった。うち、転炉鋼は9,055万トン(4.2%増)、電炉鋼は3,097 万トン(0.5%増)であった。
・ 3月の普通鋼鋼材生産は、前年同月比1.4%増の757万トンで4ヵ月連続の増加。2007年度計は、前年度比3.5%、286万トン増の8,573万トンとなった。
○2月の生産、出荷、在庫動向
特殊鋼鋼材需給
- 2月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比6.4%増の176万トン、4ヵ月連続のプラス -
・2月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比6.4%・11万トン増の176万トンと4ヵ月連続の増加となった。鋼種別には、ステンレス鋼が前月に続いて2桁減となったが、機械構造用炭素鋼、構造用合金鋼、高抗張力鋼の主要鋼種をはじめ、軸受鋼が2桁増となったほか、ばね鋼、工具鋼も増加した。
・2月の特殊鋼鋼材出荷は、国内向け(6.0%増)が6ヵ月連続の増加、輸出向け(7.6%増)も2ヵ月ぶりの増加となった。
・2月末の特殊鋼鋼材在庫は、前月末比5万トン減の147万トンとなり、在庫率は6.8ポイント低下し83.0%となった。
5.鋼材流通、鋼材輸入
-2月の普通鋼鋼材輸入は前年同月比14.2%減の27万トン、
中国からの入着量が大幅に減少-
○2月における鋼材流通の動向
・市中販売(確報)は前年同月比3.6%、11.2万トン増の323万トンで2ヵ月連続の増加となった。品種別には、小棒(9.3%減)は減少したが、H形鋼(3.8%増)、厚中板(7.9%増)、熱薄類(7.1%増)、冷薄類(9.8%増)、亜鉛めっき鋼板(7.0%増)、鋼管(0.6%増)は増加した。
・市中在庫(自社所有分)は、前月末比1.3%、3.6万トン減の272万トンと2ヵ月連続で減少した。品種別には、熱薄類(0.4%増)、亜鉛めっき鋼板(2.3%増)は増加したが、H形鋼(6.7%減)、小棒(2.4%減)、厚中板(1.4%減)、冷薄類(2.2%減)は減少した。
〇2月の普通鋼鋼材輸入の動向
・ 2月の普通鋼鋼材輸入は、前年同月比14.2%減の27万トンと5ヵ月連続で減少した。品種別には、冷延薄板類(11.9%増)は増加したが、線材(76.4%減)が5ヵ月ぶりに減少に転じた他、厚中板(57.7%減)、熱延薄板類(9.1%減)、亜鉛めっき鋼板(4.9%減)が減少した。
・国別には、韓国(23.5%増)は3ヵ月ぶりに増加したが、中国(79.4%減)が2ヵ月連続の減少、台湾(17.5%減)も10ヵ月連続で減少した。なお、中国については線材(92.9%減)、厚中板(85.9%減)、熱延薄板類(80.6%減)などの主要品種が大幅に減少した。
6.鉄鋼輸出
-2月の全鉄鋼輸出は、前年同月比22.2%、64万トン増の354万トン、2月としては初の350万トン台 -
○ 2月の全鉄鋼輸出は、前年同月比22.2%、64万トン増の354万トンと3ヵ月連続で増加した。2月としては1976年2月の304万トンを大幅に上回り過去最高を更新、月間ベースとしても史上5番目の高水準の輸出となった。向先別では、中国向け(14.5%増)が3ヵ月連続でプラス、アジア向け(32.5%増・5ヵ月連続)は大幅増、なかでもASEAN向(39.3%増の102万トン)
および韓国向け(46.2%増の100万トン)は単月では初の100万トン超えとなった。米国向けは(16.8%減・12ヵ月連続)は引続き低調に推移。
品種別にみると、熱延鋼板類(49.5%増)は大幅増、冷延鋼板類(4.4%増)、亜鉛めっき鋼板(11.7%増)もプラスとなった。
○ 2月の輸出平均単価は、全鉄鋼ベースで前月比+18ドルの1,003ドルとなり、再び1,000ドルを超えた。
7.海外市場
-鉄鋼需給は、引き締まりつつも不透明感増し、先行き注視が必要?
?概 況
世界経済は米国の景気後退懸念が強まると同時に、エネルギー価格高騰を発端としたインフレ懸念がこれまで高成長を持続してきた新興経済国にも拡がりを見せるなど、先行き不透明感が増してきている。
一方、鉄鋼生産は中国を始めとしてなお高水準の伸びが続いており、更に多数の設備増強計画が進められている。景気減速下でインフレが懸念されるなど微妙な局面にあって、足下では世界の鉄鋼需給は引き締まりの方向にあるが、その先行きには充分注視が必要である。
2.主要国の鉄鋼需給動向
○ 米国
米国経済は原油高や雇用悪化、消費減速等々悪化材料が目立ち、景気後退の可能性が現実味を帯びてきた。FRBは昨年秋口以降金融緩和を実施するも更なる緩和はインフレ圧力を再燃させると慎重な構えを見せ始めている。需要産業は自動車を始め総じて低調ながらも輸入減・輸出増に加え、先高を見越した仮需もあって鋼材出荷は前年同月を上回っている。鋼材需給はこうしたことから引き締まりの様相を強め、鋼材価格は原燃料高も相俟って薄板類を中心に続伸している。
〇欧州
EU経済は緩やかな成長が続くも拡大テンポの鈍化が目立ってきた。域内鋼材需要は底堅くも力強さを欠くなかで、1~2月累計の粗鋼生産は前年同期比1.5%減となった。一方、鋼材輸入の勢いが衰えていることなどから域内市場は供給タイトな情勢となっており、
鋼材市況も3月には各市場及び品種にわたって全面高の展開となった。鋼材価格の先高感も相俟って域内ミルへの発注意欲は当面は旺盛に推移する見込みとなっている。 〇中国
中国経済は輸出の鈍化が窺われるものの、投資活動は依然活発で物価高騰が続くなど過熱気味で推移している。鉄鋼需要産業は建設投資や自動車、造船等総じて好調を持続しており、1~2月累計の鋼材生産は前年同期比12.2%増と依然2桁の伸びを示している。3月の鋼材輸出(速報)は前年同月比22.6%減の416万トンと6ヶ月連続で前年同月を下回っており、1~3月累計(速報)も前年同期比19.3%減の1,139万トンとCISAによる2008年の予測4,800万トンを5%程下回るペースで推移している。
〇韓国
韓国経済は堅調な輸出と民間消費に支えられて安定的に推移している。鉄鋼需要産業は造船を始めとして堅調を維持しており、2007年の鋼材生産は前年比6.5%増、2008年1~2月累計の粗鋼生産は能力増強も相俟って同10.1%増となっている。一方、鋼材貿易輸入は国内供給が限られている半製品や厚板を中心にして大幅な増加を辿っている。
〇タイ
タイ経済は輸出の先行き減速が懸念されるなか、サマック新政権の景気浮揚策(個人・法人減税、大規模インフラ整備事業)による内需の拡大が期待されている。2月の鋼材生産は熱延・冷延薄板類が8ヶ月振りの前年同月比マイナスとなりながらも、棒・形鋼、亜鉛めっき鋼板は増加に転じている。一方、1~2月累計の鋼材貿易は輸出が前年同期比43.3%増、輸入が同13.7%減と輸出増・輸入減の傾向となっている。
〇マレーシア
マレーシア経済は政治不安定化の影響が懸念されるものの、個人消費と投資に牽引されて堅調に推移している。鉄鋼需要産業は建設、製造業ともに好調を持続しており、1月の鋼材生産は亜鉛めっき鋼板が引き続き2桁増となったほか、棒鋼・線材が6ヶ月振りに前年同月を上回り、溶接鋼管も3ヶ月振りの前年同月比プラスとなっている。
〇インド
インド経済は依然高度成長を続けているが、ここにきて物価の騰勢が一段と強まり、政府はインフレ抑制に乗り出している。鉄鋼需要産業は堅調ながら製造業活動が高金利の影響で減速傾向を示し、建設活動も原材料の入手難などによるプロジェクトへの影響が危惧され、当面の成行きが注視される。1~2月累計の鋼材生産は前年同期比2.6%増と増産が続いている。一方、1月の鋼材貿易は輸出が前年同月比34.3%減、輸入が同9.5%減となっている。