No.59:暫定措置の効率化で内航海運の活性化を 政府の規制改革会議が中間取りまとめで指摘 経団連の「早期解消」要望との関わりを懸念

平成20年7月08日(火)Vol.59

暫定措置の効率化で内航海運の活性化を

政府の規制改革会議が中間取りまとめで指摘

経団連の「早期解消」要望との関わりを懸念

 
内閣府の規制改革推進本部はこのほど、規制改革会議の中間取りまとめを発表したが、この中で内航海運について触れ、「暫定措置事業の効率化に関する方策を検討するなどその構造改革に取り組み、内航海運の活性化に資する施策について検討を進める必要がある」と指摘している。

この中間取りまとめは、本年12月末に予定されている第3次答申に向けて、主な論点を整理するとともに、関係各方面に幅広く問題提起し、よりよい改革の実現に向けた議論を喚起するためのもの。また、本年3月に閣議決定された『規制改革推進のための3カ年計画(改訂)』で平成19年度中に措置・検討することが決定されていたにもかかわらず、現時点での取り組み状況が不十分とされた事項についても、この中間取りまとめでは言及しており、「当会議としては、既に決定された事項が適正かつ着実に実行されるよう監視し、必要な指摘を行うことも重要な責務であると認識している」としている。

内航海運の規制緩和に関する指摘は次の通り。

【内航海運の活性化について】

内航海運は、輸送効率性が高く環境保全の面でも優れた輸送特性を有しており、国内貨物輸送の約4割、とりわけ我が国の経済・国民生活を支える産業基礎物資(鉄鋼、石油、セメント等)の輸送の約8割を担う、我が国における基幹的な物流産業である。

一方で、内航海運における産業基礎物資キャリアは、少数の元請オペレーターの傘下でその他のオペレーターやオーナーが事業活動を営むという重層的な下請構造となっており、中小零細事業者がその大部分を占めている。従来は、こうした中小オーナーが、それぞれ輸送に必要な船員の雇用及び教育、船舶の建造及び保守管理等を行うことで必要な輸送能力を確保し、内航海運を支えてきた。

しかしながら、現在、船員の高齢化、若年船員の確保の困難化といった問題が深刻化しており、中小オーナーにあっては、優良な船員の嘩保が喫緊の課題となっている。また、運賃・用船料が長期にわたって低迷する中、内部留保の縮小、ファイナンス能力の不足、船価の高騰、船台確保の困難化等のため、船舶の代替建造を行うことも難しくなっている。

このような中、内航海運が、低廉かつ安全、安定な良質の輸送サービスを提供するという、産業界における本来の使命を引き続き果たしていくことを確保する観点から、暫定措置事業の効率化に関する方策を検討するなど、その構造改革に取り組み、内航海運の活性化に資する諸政策について検討を進める必要がある。

一方、日本経団連は政府が6月の集中受付月間(あじさい月間)に募集した規制改革要望に対し、各方面での規制改革について要望書をまとめているが、その中で暫定措置事業に対し、「早期解消」を今回も引続き提言しており、内航海運業界筋では、この指摘との関連も今後の規制改革論議の中でどのように取り上げられるか懸念している。ちなみに、このほど明らかになった経団連の具体的な指摘は、次のようになっている。

【2008年度規制改革要望/運輸・流通部門より抜粋】

内航海運暫定措置事業の早期解消

◇規制の現状

船腹調整事業の解消に伴い、1998年5月に暫定措置事業が認可された。これにより内航総連は船舶を解撤する船主に解撤交付金を支払い、新規に建造する船主は内航総連に建造納付金を納付することとなった。同事業は納・交付金の収支が相償った時点で解消することとなっているが、解撒に対して建造が少なく、期限内(2013年)の事業解消が危ぶまれる状況にある。

◇根拠法令等

内航海運暫定措置事業規程

◇要望内容

暫定措置事業の現状に対応し、公的資金による解消など、早期解消に向け

た施策を講ずべきである。

◇要望理由

以下の問題点があり、コスト競争力のある事業者が生まれにくい状況となっている。

(1) 計算上は交納付金の収支の目処は立つものの、今後の建造状況の如何によっては、同事業の解消ができないことも考えられる。

(2) 新規参入時に多額の納付金が必要なため、コストが高くなり参入の障害となっている。

(3) 既存業者のリプレース時も交納付金の差額の納付が必要で、リプレースの

障害となっている。

・現時点での交納付金差額

1998年~2008年1月 解撤交付金額1,230億円(1,868千DWT)

1998年~2008年1月 建造納付金較  624億円(   801千DWT)

差引 605億円

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