平成20年7月18日(金)Vol.61
委託船の4割が燃料高騰分に価格反映なしと回答
国交省と内航総連合会が内航取引実態調査結果公表
国土交通省と内航総連合会は7月17日、2,747内航海運事業者に対して実施した『内航海運における取引実態(燃料油価格高騰に伴う影響も含む)に関するアンケート調査』の結果を公表した。
今回のアンケート調査は去る3月上旬に開始され、3月下旬、5月中旬、月下旬に回収されて6月上旬から集計作業が進められてきたもの。アンケート回収は831事業者で、回収率は30.3%であった。調査は、(1)主な取引実態について (2)燃料油等高騰にかかる主な取引実態について (3)自由意見(燃料油価格高騰による影響や困っていることなど)の3項目で、(1)については過去1年間程度に、特に条件が悪いと思われる代表的な事例について、該当する各契約(用船契約・運航委託契約・トリップ契約・運送契約)毎に設問している。
調査結果は大要次の通り。
■ 調査概要
(1)調査背景・目的
近時の原油価格は史上最高値(WTI価格)を更新し続け、本年1月には初めて1バレル100ドルを突破し、6月には140ドルを超え、産業活動・国民生活に大きな影響を与えている。
国土交通省としては、経済団体に対し、適正なコスト分担への配慮を要請するほか、地方運輸局等に燃料高騰問題についての相談窓口を設置、さらには資金調達の円滑化対策のためのセーフティネット保証の対象業種に、新たに内航海運業(燃料油価格高騰の影響を受けている運送業)が追加されるなど、様々な対策を講じてきた。
また、政府全体としても、このような原油価格が高騰している状況を踏まえ、昨年12月、中小企業・下請事業者者や運送業などの業種に対し、不当な買いたたき等、下請法・独占禁止法の厳格な運用を図ることなどの緊急対策が取り纏められた。
中小企業が大半を占める内航海運業界においては、これまで公正な取引が確保されるよう業界団体である日本内航海運組合総連合会により、公正取引に係るガイドライン(手引き)を作成し、周知を行ってきたところであるが、昨今の原油価格の高騰問題は、内航海運事業者の経営の健全化や安全・安定した輸送サービスの確保を阻害する恐れがあるため、国土交通省と日本内航海運組合総連合会が共同で内航海運業における取引実態調査を実施することした。
(2) アンケート調査対象者
日本内航海運組合総連合会の会員に属する内航海運事業者
2,747事業者
(3) アンケート調査時期
開 始:平成20年3月上旬
回 収:平成20年3月下旬・5月中旬・下旬
集 計:平成20年6月上旬~
(4)アンケート回収数
831事業者(回収率 30.3%)
■ 主な取引実態について
過去1年間程度において、特に条件が悪いと思われる代表的な事例について、該当する各契約(用船契約・運航委託契約・トリップ契約・運送契約)毎に設問を行った。
1.代金の期日後の遅延利息の支払い
各契約のうち、運送契約については、「全く支払われない」との回答が13.0%(24社)と他の契約と比較して多い割合であった。
2.差別的な(著しく安い)代金での一方的な決定
用船契約の14.5%(77社)、運航委託契約の23.1%(44社)、トリップ契約の16.4%(16社)、運送契約の21.6%(40社)は、「時々ある」、「よくある」という回答であった。
注)水準については、客観的な判断ではない
3.代金、その他の条件の取り決め時の十分な話し合い
運航委託契約について、「一方的な説明のみ」との回答が25.7%(49社)、「(説明が)全くなく一方的」との回答が9.4%(18社)と、併せて全体の40%近くを占めており、他の各契約と比較して多い割合であった。
4.取引先とトラブルが生じた場合、第三者(裁判所、公正取引委員会、国土交通省、内航総連等)へ相談等を行うことについて
用船契約の31.1%(166社)、運航委託契約の24.1%(46社)、トリップ契約の23.5%(23社)、運送契約の23.8%(44社)については、「不利となるリスクがありできない」との回答と「堂々と相談や申告ができる」との回答が概ね同数であり、二極化した結果であった。
5.公正な取引環境をつくるために、行政、業界団体(組合)で取り上げるべき課題について(複数回答あり)
「定期的なアンケート調査等による実態把握をするべき」との回答について、27.1%(239社)と多かった。
■ 燃料油等高騰にかかる主な取引実態について
1.燃料油価格高騰による取引先との負担についての話し合い
運航委託契約について、26.2%(41社)が「一方的な説明のみ」、36.6%(70社)が、「全く話はない」との回答であり、他の各契約と比較して多い割合であった。
2.燃料油価格高騰分についての代金への反映
運航委託契約について、39.8%(76社)が「全く反映されない」との回答であり、他の各契約と比較して多い割合であった。
■ 自由意見(燃料油価格高騰による影響や困っていることなど)
○運航委託船の場合、燃料油がいくら高騰しても他の経費を削減するわけにもいかず、その差額はほぼ船主負担が現状となっている。荷主はきちんと支払っていると聞くが、オペレータに対し現状を説明しても不足分を支払うというような姿勢もない。
○オペレータ(1次)から、バンカーサーチャージの支払いはあるが、手数料を差し引いて(2次オペレータに対し)支払われており、大変不満である。
○船員不足に直面し、その上、燃料油高騰で経営が困難な状況になってきている。
○省エネ対策として減速運航を実施し努力してきたところであるが、限界にきて赤字体質となっている。燃料油高騰の政策を図ってほしい。
○最近の異常な燃料油高騰により経営は厳しい。現在、荷主に対して、運賃を上げてもらうよう交渉しているが、現在のところ結果は出ていない。
○荷主に対してバンカーサーチャージの話をしているが話にのってこない。
○燃料油高騰は、内航船の中でも燃料消費量の多いRORO船が一番影響を受けている。RORO船は、荷主が多岐におよび、また大部分がトラック業者であるが、そのトラック業者が荷主に転嫁をさせてもらえないため、それを理由にバンカーサーチャージに応じてもらえないという構図となっている。
内航海運における取引実態(燃料油価格高騰に伴う影響も含む)に関するアンケート調査結果<概要> >> PDF