平成29年9月4日(月)Vol.717
生産前月比0.8%減だが持ち直し感
経産省 7月の鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済産業省は8月31日、7月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。それによると7月の生産、出荷が2カ月振りに前月比低下し、年初に積み上がった在庫がかなりの部分解消したものの、8月の生産計画は前月比上昇し、9月は少し大きめに低下する見込みとなっている。経産省ではこれらにより、基調判断を据え置き「生産は持ち直しの動き」としている。
7月の生産、出荷2カ月振り前月比減
7月の鉱工業生産は、季節調整済指数101.5で、前月比マイナス0.8%低下となった。しかし、前年同月比は4.7%上昇で、9カ月連続で前年同月比上昇が続いており、指数水準は本年上半期季節調整済指数と比べ平均値で101.0となっている。
7月の鉱工業出荷は指数値100.0、前月比マイナス0.7%低下となった。前年同月比は4.1%上昇で、生産同様に昨年11月から9カ月連続で前年同月比上昇が続いている。7月は前月比低下となったが、出荷も前月比低下幅が6月の上昇幅に比べて小さくなっており、その指数水準は上半期水準(99.2)を超えて、第2四半期の水準を保っている。
年初の積み上がり在庫が大半解消
7月の鉱工業在庫は指数107.8、前月比マイナス1.2%低下と2カ月連続で前月比低下となった。7月の指数値は今年1月の指数レベルに大分近づいており、在庫指数のグラフをみても、今年に入って積み上がった分が7月にかなりの程度、解消されていることが分かる。
8月の生産計画前月比増
9月は大きめの低下予測
8月上旬に実施した今年8月、9月の生産計画を調査した生産予測調査の結果によれば、8月の生産計画を調査結果そのままを集計すると前月比6.0%上昇を見込むという結果になっているが、9月の生産計画はこの8月計画からマイナス3.1%低下するという結果だった。
ただ、鉱工業生産が8月の計画値のままに上昇を見せるとは思えず、この生産計画が持っている上方バイアスを統計的に除去する補正計算をすると、前月比1.4%上昇程度になる計算となり、実績としてはこの程度ではないかと思われる。8月の生産がこの程度の伸びとなれば、9月の生産水準は8月水準に対し横ばいないし微減という程度になるものと思われる。
平成29年7月 | 平成29年8月見込み | 平成29年9月見込み | |
平成29年8月調査(今回) | 6.0% | ▲3.1% | |
平成28年7月調査(前回) | 0.8% | 3.6% |
製造工業生産予測調査の試算値 (季節調整済前月比(%))
平成22年(2010年)=100
試算値 | 予測調査結果 | |
8月前月比 | 1.4% (0.4%~2.4%) |
6.0% |
基調判断「生産持ち直し」で据え置き
7月の鉱工業生産は前月比マイナスとなったが、引き続き前年同月水準を上回る生産が続いている。指数値は第2四半期の値よりは低いが、今年上期平均の値を上回っており、前月比低下も6月の大きな上昇からの反動であり、相対的に小幅にとどまっている。他方、在庫水準は大きく低下しており、年初の積み上がり分を相当程度解消できている。経産省ではこうした状況を踏まえ、基調判断については、「生産は持ち直しの動き」で据え置きたいとしている。
15業種中11業種が生産低下
7月の鉱工業生産は前月比マイナス0.8%と2カ月振りの低下だが、15業種のうち11業種が前月比低下となった。低下11業種のうち大部分の9業種が前月からの反転低下業種で、全体15業種のうち、反転低下業種が9業種と大部分を占めている割には、7月の前月比低下幅は小さいと言えよう。
低下への影響大きい機械
7月の生産低下への影響度、寄与が特に大きいのは、汎用・生産用・業務用機械工業と電気機械工業で、それに少し離れて化学工業(医薬品を除く)と輸送機械工業が続くという順位になっている。汎用・生産用・業務用機械工業と電気機械工業の低下寄与の合計で、変動寄与の4分の3を占めているので、比較的小幅だった7月の生産低下は、大部分がこの2業種によるものと言える。
他方、4業種の生産上昇寄与業種の中では、電子部品・デバイス工業の上昇寄与が非常に大きくなっており、汎用・生産用・業務用機械工業の低下寄与とほぼ同じ大きさの上昇寄与となっているのが目立つ。
汎用・生産用・業務用機械工業では半導体製造装置、タービン類の生産が振るわなかった。電気機械工業では開閉制御装置や発電機、太陽電池モジュールといった発電関係の設備の生産が同様であった。需要先用途別の財別分類でみても、7月は設備投資に向けられる輸送機械を除く資本財の生産が前月比マイナス3.5%低下と大きく低下しており、最も大きな低下寄与をみせている。
電子部品・デバイス工業3カ月振り上昇
7月の鉱工業生産は全体としてはマイナスだったが、4業種は前月比上昇している。最も上昇寄与が大きかったのは電子部品・デバイス工業で、7月の上昇寄与の大部分を占めている。7月の電子部品・デバイス工業の生産は、前月比4.3%と3カ月振りの上昇となった。前年同月比9カ月連続プラスで、1割以上のプラス幅が続いており、生産水準は昨年に比べ高い状態が続いている。5〜6月は連続で前月比低下となり、生産の勢いには陰りがあったが、まずは一旦途切れた。
また、7月の生産上昇業種である窯業・土石製品工業では、半導体集積回路のパッケージに利用されるファインセラミックスの機能材や液晶ディスプレイの基板である無アルカリガラス基板なども生産が上昇していた。
7月は設備投資関連の機械類の生産が低調だったが、電子部品・デバイス工業とその関連工業が上昇したため、反動減業種による前月比低下を相当程度補うことができた。
平成29年9月4日(月)Vol.718
燃料油国内販売 2カ月連続減
エネ庁 7月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は8月31日、7月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
1.原油の動向
7月の原油輸入量は1,651万㎘、前年同月比106.5%と今月は前年を3カ月振りに上回った。輸入量の攘夷5カ国は次の通りだが、7月の中東依存度は84.5%で、前年同月に比べ0.9ポイント減と4カ月連続で前年を下回った。
(1)サウジアラビア(659万㎘、前年同月比126.1%)
(2)アラブ首長国連邦(344万㎘、同85.0%)
(3)カタール(130万㎘、同101.7%)
(4)クウェート(112万㎘、同119.2%)
(5)ロシア(108万㎘、同120.7%)となっている。
2.燃料油の生産
燃料油の生産は1,455万㎘、前年同月比100.1%と6カ月振りに前年同月を上回った。油種別にみるとガソリン、ナフサ、ジェット燃料油及び軽油は前年同月を上回ったが、灯油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
3.燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は259万㎘、前年同月比96.6%と6カ月振りに前年を下回った。輸出は294万㎘、同108.3%と6カ月振りに前年を上回った。
4.燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,373万㎘、前年同月比98.8%と2カ月連続で前年を下回った。油種別にみるとガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油及び軽油は前年同月を上回ったが、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
5.燃料油の在庫
燃料油の在庫は983万㎘、前年同月比100.1%と2カ月連続で前年を上回った。油種別にみるとナフサ、ジェット燃料油、A重油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、灯油及び軽油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要 平成29年7月 Excel
平成29年9月4日(月)Vol.719
粗鋼生産 前月・前年比ともに減
燃料油 前月比2桁増で前年比微増
経産省 7月の生産動態統計速報発表
経済産業省は8月31日、7月の生産動態統計速報を発表した。それによると粗鋼生産量は858.8万トンで前月比2.1%増だが、前年同月比4.3%減となった。また、石油製品生産量は燃料油計が1,263.2万㎘で前月比15.2%の2桁増、前年同月比0.1%の微増となった。
【7月の鉄鋼生産】
7月の鉄鋼生産は、銑鉄、粗鋼、熱間圧延鋼材のいずれも前月比では増加したが、前年同月比では減少した。
銑鉄生産は、653.3万トンと前月比4.5%増だが、前年同月比5.8%減と6カ月連続の減少となった。
粗鋼生産は、858.8万トンで前月比2.1%増だが、前年同月比4.3%減と3カ月連続の減少となった。7月の1日当たり粗鋼生産は27.70万トンで、6月の同28.04万トン比1.2%減となった。
炉別生産をみると、転炉鋼が657.4万トンと前月比4.5%増、前年同月比6.9%減、電炉鋼が201.5万トンと同4.9%減、同5.6%増となり、前年同月比でみると転炉鋼は3カ月連続の減少、電炉鋼は10カ月連続の増加となった。
鋼種別生産では、普通鋼が650.5万トンと前月比2.6%増だが、前年同月比6.6%減。特殊鋼が208.4万トンと前月比0.7%の微増で、前年同月比3.8%増となり、前年同月比では普通鋼は3カ月連続の減少、特殊鋼は15カ月連続の増加となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)生産は、746.3万トンと前月比0.8%の微増だが、前年同月比4.7%減と3カ月連続の減少となった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は579.6万トンと前月比1.3%増だが、前年同月比6.5%減と5カ月連続の減少となった。
品種別では条鋼類が138.9万トンで前月比3.5%、前年同月比5.7%のともに減で前年同月比3カ月連続の減少。鋼板類は435.9万トンで前月比2.6%増だが、前年同月比7.1%減となり、前年同月比で6カ月連続の減少となった。
主要品種の生産内訳をみると、普通鋼では鋼帯が369.6万トンと前月比5.8%増だが、前年同月比4.2%減。冷延広幅帯鋼が149.0万トンと前月比0.8%の微減で、前年同月比5.8%減。鋼板が69.3万トンと前月比8.2%減で、前年同月比17.0%の2桁減。小形棒鋼が70.5万トンと前月比0.5%の微減だが、前年同月比1.9%増。H形鋼が28.5万トンと前月比1.4%、前年同月比7.1%のともに減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が167.4万トンと前月比0.5%の微減だが、前年同月比2.8%増。冷延広幅鋼帯が22.6トンと前月比8.4%減で、前年同月比0.9%の微減となった。
熱間鋼管では、普通鋼が35.4万トンと前月比5.0%減だが、前年同月比6.0%増。特殊鋼が14.0トンと前月比11.8%の2桁増で、前年同月比1.3%の増となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が87.9万トンと前月比2.6%、前年同月比3.4%のともに減となった。
【7月の鉄鋼出荷】
7月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼の鋼帯が181.7万トンと前月比6.8%増だが、前年同月比5.3%桁減。鋼板が71.7万トンと前月比4.1%減で、前年同月比20.3%の大幅減。小形棒鋼が71.2万トンと前月比3.2%減だが、前年同月比1.7%増。H形鋼が29.6万㌧で前月比2.1%、前年同月比1.6%のともに減。冷延広幅帯鋼が57.5万トンと前月比2.4%増だが、前年同月比10.4%の2桁減となった。
特殊鋼では熱間圧延鋼材が122.8万トンと前月比5.9%減で、前年同月比0.3%の微減。冷延広幅帯鋼が21.7万トンと前月比5.0%、前年同月比2.3%のともに減となった。
熱間鋼管では普通鋼が32.0トンと前月比4.8%減だが、前年同月比7.0%増。特殊鋼が13.6万トンと前月比25.6%の大幅減だが、前年同月比3.3%増となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が89.6万トンと前月比0.6%の微減で、前年同月比4.8%減となった。
【7月の石油生産】
7月の石油製品の生産を油種別にみると、重油が220.1万㎘と前月比13.6%の2桁増だが、前年同月比16.0%の2桁減。ガソリンが465.4万㎘で前月比14.6%の2桁増でだが、前年同月比1.4%増。軽油が382.7万㎘と前月比19.3%の2桁増で、前年同月比も8.4%増。灯油が71.5万㎘と前月比6.2%増だが、前年同月比10.3%の2桁減。ナフサが155.9万㎘と前月比9.5%、前年同月比6.9%のともに増。ジェット燃料油が159.8万㎘と前月比20.2%の大幅増で、前年同月比も3.4%増。液化石油ガスが43.1万トンと前月比15.3%、前年同月比11.1%のともに2桁増。アスファルトが24.7万トンと前月比8.8%増だが、前年同月比13.1%の2桁減。潤滑油が16.4万㎘と前月比1.7%減で、前年同月比22.6%の大幅減となった。
【7月の石油出荷】
7月の石油製品の出荷を油種別にみると、重油が226.2万㎘と前月比8.5%増だが、前年同月比16.0%の2桁減。ガソリンが481.2万㎘と前月比15.5%の2桁増で、前年同月比も3.1%増。軽油が397.3万㎘と前月比19.4%、前年同月比11.9%のともに2桁増。灯油が68.9万㎘と前月比1.9%減だが、前年同月比10.1%の2桁増。ナフサが364.1万㎘と前月比8.1%増で、前年同月比0.8%の微増。ジェット燃料油が157.9㎘と前月比18.4%、前年同月比13.0%のともに2桁増。液化石油ガスが48.8万トンと前月比7.2%、前年同月比9.5%のともに増。アスファルトが16.6万トンと前月比27.0%の大幅増で、前年同月比も6.7%増。潤滑油が18.7万㎘と前月比0.9%の微減で、前年同月比16.6%の2桁減となった。
【7月のコークス・石灰石】
7月のコークスの生産は278.7万トンと前月比4.1%増だが、前年同月比0.1%の微減。出荷は76.7万トンと前月比10.2%の2桁増で、前年同月比も6.3%増となった。
7月の石灰石の生産は1,239.2万トンと前月比8.4%、前年同月比5.7%のともに増。出荷は978.9万トンと前月比6.0%、前年同月比1.8%のともに増を示した。
※添付資料
鉄鋼統計速報 平成29年7月 Excel
資源エネルギー統計速報 平成29年7月 Excel