平成30年9月6日(木)Vol.741
生産 3カ月連続前月比低下
経産省 7月の鉱工業・生産出荷・在庫速報発表
経済産業省は8月31日、7月の鉱工業・生産出荷・在庫速報を発表した。経産省では7月について、①生産が前月比0.1%低下で6月の落ち込みからの回復がみられず、3カ月連続の前月比低下となった ②生産、出荷、在庫は低下、在庫率は上昇であった ③製造工業生産予測調査では8月、9月ともに上昇を予測しているとして、基調判断を「生産が緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と下方修正した。
平成30年7月生産・出荷・在庫動向
平成22年(2010年)=100
項目 | 季節調整済指数 | 原指数 | ||
指数 | 前月比(%) | 指数 | 前年同月比(%) | |
生産(前月値) | 102.4 (102.5) | ▲0.1 (1.8) | 105.5 (104.8) | 2.3 (▲0.9) |
出荷(前月値) | 99.9 (101.8) | ▲1.9 (0.3) | 101.7 (103.3) | 1.3 (▲0.2) |
在庫(前月値) | 111.2 (111.4) | ▲0.2 (▲1.9) | 113.5 (112.1) | 2.8 (2.4) |
在庫率(前月値) | 117.0 (116.5) | 0.4 (2.3) | 118.2 (115.2) | 4.0 (5.2) |
7月生産、前月比0.1%減
7月の鉱工業生産は、季節調整済指数102.4、前月比0.1%低下と3カ月連続の前月比低下となった。4〜6月期の指数値103.8からみると7月の生産指数水準は低くなっており、今年の最低値である1月以来の低レベルだ。8四半期振りに前期比低下となった1〜3月期の102.5レベルまで低下している。7月初旬の西日本豪雨の影響もあり、7〜9月期の鉱工業生産は、低い水準からのスタートとなった。
8業種が前月比低下
7月の鉱工業生産を業種別にみると8業種が前月比低下、7業種が前月比上昇となった。鉱工業生産全体は3カ月連続の前月比低下だが、業種別にみると連続しての生産低下は少なく、生産低下した業種は翌月に多少生産が回復している。しかし、回復の勢いが弱く、生産を低下させる他の業種の低下分を補えない状態になっている。
7月の生産低下への低下寄与の大きかった3業種は輸送機械工業、汎用・生産用・業務用機械工業、鉄鋼業が挙げられる。他方、上昇寄与業種としては医薬品を除く化学工業、電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業が挙げられる。
生産低下寄与業種の動向
低下3業種の7月生産計画を確認してみると、最も低下寄与の大きかった輸送機械工業の生産計画が7月初旬段階で前月比1%程度の低下見込みだったが、7月実績段階では、普通乗用車、自動車部品類を中心に前月比4.2%と大きく下方修正されている。8月実施の生産予測調査での7月計画と実績のズレは、マイナス4.0%だった。欧米向け輸出が低下したことに加え、7月の西日本豪雨の影響で生産が低下したようだ。
汎用・生産用・業務用機械工業では、「汎用・業務用機械工業」の生産計画が低下だったものの、「生産用機械工業」の生産計画が上昇だったため、合計では増産計画だった。しかし、増産計画の主役だった半導体・フラットパネル製造装置の生産回復の勢いが弱く、他の機械類の減産を補えなかった。また、一部の建設機械類については、豪雨の影響で部品供給に支障があり、生産が低下したようだ。
さらに、鉄鋼業も元々、生産低下見込みで、前月比3%程度の低下見込みだったが、7月実績段階では、前月比5.0%減少と大きく下方修正されている。8月実施の生産予測調査での7月計画と実績のズレは3.2%である。アメリカの鉄鋼輸入に対する追加関税の影響が出てきており、7月のアメリカ向け鉄鋼輸出量は前年同月比28%減少となっている。アメリカの業界団体がまとめた資料でも、本年上期のアメリカでの対日鉄鋼輸入は前年同期比14.3%減少となっている。7月の生産低下寄与品目としても、アメリカ向け出荷に占める割合の高い鋼半製品や特殊鋼熱間圧延鋼材の生産が低下している。
また、低下品目の一部については台風の影響で工場操業に支障が出て、生産が低下したという面もある。
一方、上昇業種は医薬品を除く化学工業、電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業等だった。
出荷も前月比低下
7月の鉱工業出荷は、指数値99.9、前月比1.9%減少と2カ月振りの前月比低下となったが、指数レベルは生産同様、今年1月以来の低水準となっている。
業種的にも生産同様、輸送機械工業、汎用・生産用・業務用機械工業、鉄鋼業の出荷が低下しているが、低下寄与では輸送機械工業が非常に大きく、2位の汎用・生産用・業務用機械工業の10倍となっている。
輸送機械工業では鋼船出荷の低下とともに、普通乗用車の出荷が低下したことにより昨年5月以来、出荷指数が100を割り込むこととなり、前年同月比も10カ月振りにマイナスとなた。輸送機械工業の出荷低下が7月の出荷低下の大きな要因となった。
財の需要先の用途別出荷指数をみると、最終需要財の出荷が前月比3.1%低下で、生産財の出荷は前月比0.6%低下だった。工場や事業活動の中間投入となる生産財の出荷は、6月に低下していたこともあり、7月の低下幅が限定的だったが、6月が相対的に調子のよかった最終需要財の出荷は大きく低下した。
7月の出荷低下に対する寄与、影響度では普通乗用車や小型乗用車の出荷低下が響き、最終需要財のうち特に耐久消費財の出荷低下の影響が大きくなった。耐久消費財に次ぐ低下寄与となった生産財でも、自動車関係の品目の影響が大きくなた。
一方、上昇業種は医薬品を除く化学工業、電子部品・デバイス工業、石油・石炭製品工業等だった。
在庫低下進まず
7月の鉱工業在庫は指数値111.2、前月比マイナス0.2%と2カ月連続の前月比低下となった。生産が低下と同時に出荷も低下し、3カ月連続の生産低下が在庫水準を大きく引き下げることにはならなかった。
一方、上昇業種は医薬品を除く化学工業、電子部品・デバイス工業、汎用・生産用・業務用機械工業等だった。
在庫指数値の低さは、2月の在庫指数109.9以来となるが、年初の109台から、113台にまで上昇した鉱工業在庫指数の「積み上がり」分の半分ほどが解消された状態に留まる。前年同月比増加も10カ月連続で、在庫積み上がりの解消とはいかない。
基調判断、下方修正
7月の鉱工業生産は、3カ月連続の前月比低下となった。計画段階のデータから想定されて通りの小幅の生産低下となり、6月の大きな生産低下からの「反転上昇」とはならなかった。
生産指数の後方3カ月移動平均は、103.1で、昨年平均の102.0(昨年度平均102.5)を上回っているので、基調的に水準が大きく下がっているとまでは言えない。
しかし、輸送機械工業が生産、出荷ともに不調であった他、汎用・生産用・業務用機械工業のけん引役のひとつである半導体・フラットパネル製造装置の盛り返しの勢いが弱く、鉱工業生産全体が盛り上がらない要因となっている。在庫水準も、生産低下と同時に出荷の勢いも悪いことから、あまり低下していない。
経産省ではこれらの結果を踏まえ、7月の鉱工業生産の基調判断については、「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と下方修正したいとしている。
製造工業生産予測調査結果
主要企業の生産計画を調査した製造工業生産予測調査によると、8月は前月比5.6%の上昇、9月は同0.5%の上昇となった。8月の上昇業種は生産用機械工業、輸送機械工業、汎用・業務用機械工業等で、9月の上昇業種は生産用機械工業、化学工業、輸送機械工業等だった。
製造工業生産予測調査(生産計画からみる生産動向)
季節調整済み 前月比%
平成30年8月見込み | 平成30年9月見込み | |
平成30年8月調査(今回) | 5.6 | 0.5 |
平成30年7月調査(前回) | 3.8 |
平成27年=100
平成30年9月6日(木)Vol.742
粗鋼生産 前年比再び減
燃料油生産 前年比7カ月連続減
経産省 7月の生産動態統計速報発表
経済産業省は8月31日、7月の生産動態統計速報を発表した。それによると粗鋼生産量は842.0万トンと前月比3.8%、前年同月比2.0%のともに減となり、前年同月比では3カ月振りに再び減少となった。特に7月の鉄鋼生産は、ほとんどの品種で前月比減を示した。
また、石油製品生産量は燃料油計が1,333.8万㎘と前月比16.0%の2桁増だが、前年同月比8.4%の減となり、前年同月比では7カ月連続の減となった。7月の石油生産は前月比で全品種が増、しかも大多数の品種が2桁、大幅の増を示したが、前年同月比では1品種を除いた全品種が減となる現象だった。
【7月の鉄鋼生産】
7月の鉄鋼生産は、銑鉄、粗鋼、熱間圧延鋼材のいずれも前月比、前年同月比とも減少した。
銑鉄生産は629.7万トンと前月比0.8%減、前年同月比3.6%減となり、前年同月比では3カ月振りの減少となった。
粗鋼生産は842.0万トンと前月比3.8%減、前年同月比2.0%減となり、前年同月比では3カ月振りの減少となった。7月の1日当たり粗鋼生産は27.2万トンで、6月の同29.2万トン比6.9%減となった。
炉別生産では、転炉鋼が635.6万トンと前月比1.1%減、前年同月比3.3%減、電炉鋼が206.4万トンと前月比11.1%減、前年同月比2.5%増となり、前年同月比では転炉鋼は3カ月振りの減少、電炉鋼は22カ月連続の増加となった。
鋼種別生産では、普通鋼が638.8万トンと前月比3.5%減、前年同月比1.8%減、特殊鋼が203.2万トンと前月比4.7%減、前年同月比2.5%減となり、前年同月比では普通鋼は3カ月振りの減少、特殊鋼は9カ月振りの減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)生産は、723.7万トンと前月比8.1%減、前年同月比3.4%減となり、前年同月比では3カ月振りの減少となった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は558.0万トンと前月比8.8%減、前年同月比4.1%減となり、前年同月比では3カ月振りの減少となった。
特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は165.7万トンと前月比5.5%減、前年同月比1.0%減となり、前年同月比では7カ月振りの減少となった。
主要品種の生産内訳をみると線材、H形鋼、鋼矢板を除く全ての品種で前月比減となった。普通鋼では鋼帯が344.1万トンと前月比6.5%、前年同月比6.9%のともに減。冷延広幅帯鋼が148.3万トンと前月比3.4%減で、前年同月比も0.4%の微減。鋼板が80.8万トンと前月比9.6%減だが、前年同月16.5%の2桁増。小形棒鋼が70.7万トンと前月比5.6%減だが、前年同月比0.3%の微増。H形鋼が34.0万トンと前月比2.4%増で、前年同月比19.2%の2桁増。冷延電気鋼帯が11.7万トンと前月比2.1%減だが、前年同月比2.1%増。線材が14.6万トンと前月比20.4%の大幅増で、前年同月比も3.6%増となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が166.9万トンと前月比4.9%減で、前年同月比も0.3%の微減。冷延広幅鋼帯が23.8トンと前月比4.1%減だが、前年同月比5.4%増となった。
熱間鋼管では、普通鋼が36.6万トンと前月比1.6%減だが、前年同月比3.3%増。特殊鋼が13.5トンと前月比6.1%、前年同月比3.1%のともに減となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が89.6万トンと前月比2.1%減だが、前年同月比1.8%増となった。
【7月の鉄鋼出荷】
7月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼の鋼帯が169.1万トンと前月比2.1%、前年同月比6.9%のともに減。冷延広幅帯鋼が56.9万トンと前月比6.0%増だが、前年同月比0.9%の微減。鋼板が83.2万トンと前月比4.5%減だが、前年同月比16.1%の2桁増。小形棒鋼が72.3万トンと前月比4.4%減だが、前年同月比1.7%増。H形鋼が33.6万㌧と前月比5.7%減だが、前年同月比13.5%の2桁増。線材が13.4万トンと前月比7.9%増だが、前年同月比4.9%減となった。
特殊鋼では熱間圧延鋼材が125.0万トンと前月比0.4%微減だが、前年同月比1.8%増。冷延広幅帯鋼が23.3万トンと前月比1.4%、前年同月比7.1%のともに増となった。
熱間鋼管では普通鋼が31.5万トンと前月比3.3%、前年同月比1.3%のともに減。特殊鋼が13.4万トンと前月比2.7%増だが、前年同月比1.7%減となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が89.9万トンと前月比0.9%、前年同月比0.3%のともに微増となった。
【7月の石油生産】
7月の石油製品の生産を油種別にみると、前月比では全品種にわたって増、しかも重油と潤滑油以外は2長けた、大幅の増を示したが、前年同月比では潤滑油を除いた全品種が減となった。重油が219.4万㎘と前月比6.8%増だが、前年同月比6.0%増。ガソリンが441.4万㎘と前月比18.0%の2桁増だが、前年同月比も5.1%減。軽油が336.7万㎘と前月比12.0%の2桁増だが、前年同月比12.0%の2桁減。灯油が60.7万㎘と前月比40.2%の大幅増だが、前年同月比15.1%の2桁減。ナフサが122.2万㎘と前月比37.1%の大幅増だが、前年同月比21.6%の大幅減。ジェット燃料油が153.3万㎘と前月比11.7%の2桁増だが、前年同月比4.1%減。液化石油ガスが35.0万トンと前月比22.5%の大幅増だが、前年同月比18.7%の2桁減。アスファルトが24.0万トンと前月比24.1%の大幅増だが、前年同月比2.8%減。潤滑油が21.3万㎘と前月比3.8%増で、前年同月比30.3%の大幅増となった。
【7月の石油出荷】
7月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,579.5万㎘と前月比12.6%の2桁増だが、前年同月比7.1%減となった。油種別では重油が241.6万㎘と前月比9.7%、前年同月比6.8%のともに増。ガソリンが454.9万㎘と前月比13.0%の2桁増だが、前年同月比6.2%減。軽油が334.1万㎘と前月比4.1%増だが、前年同月比15.9%の2桁減。灯油が65.4万㎘と前月比28.6%の大幅増だが、前年同月比5.2%減。ナフサが331.4万㎘と前月比22.6%の大幅増だが、前年同月比9.0%減。ジェット燃料油が152.1万㎘と前月比10.0%の2桁増だが、前年同月比3.7%減。液化石油ガスが44.3万トンと前月比23.5%の大幅増だが、前年同月比9.3%減。アスファルトが14.5万トンと前月比7.1%増だが、前年同月比12.2%の2桁減。潤滑油が21.4万㎘と前月比9.6%減だが、前年同月比14.6%の2桁増となった。
【7月のコークス・石灰石】
6月のコークスの生産は266.5万トンと前月比1.1%、前年同月比4.4%のともに減。出荷は65.5万トンと前月比13.4%、前年同月比14.6%のともに2桁減となった。
7月の石灰石の生産は1,171.0万トンと前月比0.0%の横這いだが、前年同月比5.5%減。出荷は931.9万トンと前月比0.1%の微増だが、前年同月比4.7%減を示した。
※添付資料
鉄鋼統計速報 平成30年7月 Excel
資源エネルギー統計速報 平成30年7月 Excel
平成30年9月6日(木)Vol.743
燃料油販売 5ヵ月連続前年割れ
エネ庁 7月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は8月31日、7月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
原油の動向
7月の原油輸入量は1,440万㎘、前年同月比87.2%と2カ月連続で前年を下回った。輸入量の多い順にみると次の通りとなっている。
(1)サウジアラビア(486万㎘、前年同月比73.8%)
(2)アラブ首長国連邦(392万㎘、同113.9%)
(3)カタール(110万㎘、同84.9%)
(4)クウェート(106万㎘、同94.7%)
(5)イラン(90万㎘、同109.6%)
7月の中東依存度は88.8%、前年同月に比べ4.3ポイント増と12カ月連続で前年を上回った。
燃料油の生産
燃料油の生産は1,334万㎘、前年同月比91.6%と8カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、A重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油、軽油及びB・C重油は前年同月を下回った。
燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は275万㎘、前年同月比106.0%と前年を上回った。輸出は241万㎘、前年同月比82.2%と2カ月連続で前年を下回った。
燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,350万㎘、前年同月比97.8%と5カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、ジェット燃料油及びA重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油及びB・C重油は前年同月を下回った。
燃料油の在庫
燃料油の在庫は899万㎘、前年同月比92.4%と4カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、軽油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要速報 平成30年7月 Excel