平成20年11月28日(金)Vol.77
内外鉄鋼需要大幅に減速
日本鉄鋼連盟、鉄鋼需給の動き2008年11月を発表
日本鉄鋼連盟はこのほど、鉄鋼需給の動き2008年11月を発表した。それによると、世界経済が景気後退局面にある中で、9月の鉄鋼需要は内需が2ヵ月連続の前年同月比割れ、輸出も前年同月比が7月までの2桁増から一転して微増にとどまり、内外ともに大幅減速傾向にあるとしている。発表内容は次の通り。
【概況】
金融危機と実体経済の悪化を受け、IMFはこの10月に2009年の世界経済成長率予測をそれまでの3.9%から3.0%へと改定したのに続き、11月には対前年比1.5ポイント減の2.2%へと下方修正した。先進国が戦後初の同時マイナス成長となり、新興国も資本流出や通貨急落により大幅な減速になると見込んでいる。日本経済も、生産、輸出、消費、雇用等の主な経済指標がすべて悪化しており、景気は後退局面にある。
国内鉄鋼需要は、主力の自動車向けの減少を受け、9月の内需向け鋼材受注量が前年同月比で3.3%減と2ヵ月連続の前年割れとなった。輸出向け受注量も前年比0.6%増に留まり、7月までの二桁増から一転するなど、内外鉄鋼需要は大幅に減速している。このような中、9月末の普通鋼鋼材国内在庫は、8月からの2ヵ月累計で46万トン増となる558万トンとなった。また、経済産業省は
08年度第3四半期の生産計画集計結果を、見通し時より13万トン減の3,021万トンと発表した。
海外では、主要市場で鋼材市況が続落するなか、これまで世界の粗鋼生産拡大を牽引してきた中国が、2000年10月以来となる前年同月比マイナスに転じたことから、9月の世界粗鋼生産は約6年半ぶりとなる前年割れとなった。一方、中国の鋼材輸出は、過去最高となった8月に続き、9月も前年同月比50.2%増の667万トンと7月以降の増加傾向が続いている。
世界経済は大幅に減速しており、鋼材需給もその影響を受けている。経済動向、鋼材需給動向をより一層慎重に見極めるとともに、中国、韓国等の鉄鋼輸出国の動向にはこれまで以上の注意を払う必要がある。
1. 経済動向
生産は緩やかな低下傾向。輸出、消費、雇用等、多くの指標が悪化
・9月の鉱工業生産(確報)は、前月比1.1%増の105.6と2ヵ月ぶりに上昇。一般機械、輸送機械、電子部品・デバイス等が上昇に寄与。7~9月計では1.3%減と3期連続で低下。先行きは、10月2.3%低下、11月2.2%低下と、ともに低下が予測され、基調判断も「緩やかな低下傾向」へと3ヵ月ぶりに下方修正された。9月の出荷は同0.4%上昇、在庫は同1.9%上昇。
・9月の機械受注は、前月大幅減の反動もあり、前月比5.5%増の9,407億円と4ヵ月ぶりに増加。内訳は、製造業が9.7%増で3ヵ月ぶりに増加、電気機械(31.4%増)、化学工業(73.8%増)等の大幅増が寄与。一方、非製造業は1.3%減と 4ヵ月連続で減少した。この結果、7~9月期計では前期比 10.4%減で5期ぶりの減少。10~12月期は同1.2%増の10月の乗用車販売は4.9%減と3ヵ月連続減。普通車及び小型車が3ヵ月連続減、軽四輪(10.2%増)は2ヵ月ぶりに増加。
・9月の小売業販売額は0.3%の減少で14ヵ月ぶりのマイナス。基調判断は「おおむね横ばい」に据え置かれた。9月の全世帯消費支出は減で月連続のイナ・9月の完全失業率は4.0%と前月比0.2ポイントの低下。同月の完全失業者数は、前年比2万人増の271万人で6ヵ月連続の増加。基調判断は「先行き注意が必要」としている。
・9月の有効求人倍率は前月比0.02ポイント低下の0.84倍と、 8ヵ月連続で低下し、04年8月以来ほぼ4年ぶりの低水準に。
・9月の輸出数量指数(原指数)は前年同月比1.8%減と2ヵ月連続の低下となった(季調済は前月比横ばい)。数量指数の向先別では米国が4ヵ月ぶりにやや持ち直したが、アジア、 EUがともに2ヵ月連続で低下した。
・実質輸出(日銀、季調済)でも前月比0.5%減と2ヵ月連続の低下となった。
・08年7~9月期の日本の実質GDP成長率(速報値)は、季節調整済前期比0.1%減(同年率0.4%減)と、01年7~9月期以来7年ぶりとなる2四半期連続のマイナス成長となった。個人消費や住宅投資がプラスに転じたが、設備投資が3期連続で減少したため、内需の寄与度は0.1%に留まった。輸出は 0.7%増も、輸入を合わせた外需の寄与度はマイナス0.2%。
2. 鉄鋼需要産業動向
製造業は斑模様も景気減速の影響拡大が懸念、企業の景況感悪化も
影響し非住宅の着工水準は低調
<土木>
〇9月の公共土木前払金保証請負金額は前年同月比3.6%増。
・ 地方の機関が同3.2%増とプラスに転じたことに加え、国の機関は4.8%増と3ヵ月連続でプラスを維持、合計でも3.6%増、2ヵ月振りの増加となった。
〇9月の公共土木受注金額は前年同月比10.1%減。
・ 国の機関(0.3%増)は道路が減少したが、治山治水、鉄道等の増加もあり微増、4ヵ月連続でプラス。一方、地方の機関は道路、下水道など主要部門の大幅減もあって14.7%減と2ヵ月連続で2桁のマイナス、全体でも10.1%減と2ヵ月連続で減少した。
〇9月の民間土木工事受注金額は前年同月比2.7%増。
・ 運輸通信業(8.7%減・2ヵ月ぶり)がマイナスとなったが、電気・ガス業(70.0%増・6ヵ月連続)が前月に続き大幅増、製造業・鉱業・建設業(7.2%増)も3ヵ月振りに増加に転じたこともあり、全体では2.7%増と2ヵ月連続でプラス。
<建築>
〇9月の新設住宅着工戸数は前年同月比54.2%増の9.7万戸。
・ 着工戸数(9.7万戸・54.2%増・3ヵ月連続)は、昨年9月が年率換算で73万戸と極めて低い着工水準であったこともあり、8月に続き5割を超える大幅増となった。年率換算着工戸数は113万戸となり、ここ数ヵ月は113万戸前後で推移している。内訳をみると、持家(19.9%増)、貸家(66.9%増)、分譲(82.8%増)いずれも3ヵ月連続で増加、分譲のうちマンションは昨年低水準の反動から3.2倍と著増。
・ なお、4~9月累計では前年同期比8.9%増の58.1万戸。
〇9月の非住宅着工床面積は前年同月比66.1%増。
・ 用途別では、鉱工業用(2.3倍)、商業・サービス業用(56.6%増)、公務文教用(70.3%増)、公益事業用(23.2%増)いずれも前年大幅減の反動増がみられ、全体でも6割を超える大幅増。但し、着工床面積は493万㎡と7ヵ月ぶりに500万㎡割れ、月ベースでは今年度で最も低い水準であり、年率換算値でも5,840万㎡と3ヵ月振りに6,000万㎡を下回った。
・ 使途別では、事務所(2.2倍)および工場(2.5倍)が倍増したほか、店舗(37.1%増)、倉庫(54.1%増)も大幅増。
・4~9月累計では鉱工業はプラスも商業サービス等が2桁減となったことから、前年同期比6.3%減。
<自動車>
○10月の国内販売(除く輸入車)は前年比5.8%減の36万台と3ヵ月連続のマイナス。
・車種別では、乗用車(4.9%減)は、軽(10.2%増)が2ヵ月ぶりの増となったが、普通車(19.1%減)、小型車(6.5%減)がともに3ヵ月連続の減となり、乗用車全体でも3ヵ月連続のマイナスとなった。一方、トラック(10.1%減)は排ガス規制需要の反動減が依然として続いており、普通車(16.7%減)は24ヵ月連続、小型車(13.7%減)が26ヵ月連続、軽(5.6%減)も11ヵ月
連続の減となり、トラック計では26ヵ月連続のマイナスとなった。なお、四輪車計では、同月として77年(36万台)以来の低水準となった。
○10月の完成車輸出は前年比4.2%減の58万台と2ヵ月ぶりのマイナス。
・ 10月の完成車輸出は、主力の北米向け(15.0%減)に加え、EU向け(17.6%減)が揃って前年比2桁の大幅減となり、ともに3ヵ月連続の前年割れとなるなど、全体でも4.2%減の58万台と2ヵ月ぶりのマイナスとなった。なお、10月の米国新車販売(新聞情報)は、84万台と83年2月以来25年8ヵ月ぶりの低水準になり、前年比31.9%の大幅減、12ヵ月連続のマイナスとなった。米ビッグスリーは軒並み3割超の大幅な減少。日系ブランド車もトヨタ、ホンダ、日産がそろって2割超の大幅減となった。
○10月の四輪車生産は、前年比6.8%減の101万台、2ヵ月ぶりのマイナス。
・ 車種別では、乗用車は、小型車(3.9%増)、軽(7.4%増)が2ヵ月連続の増となったが、普通車(14.9%減)が2ヵ月ぶりのマイナスに転じたことから、全体でも7.4%の減と2ヵ月ぶりのマイナスとなった。トラックも軽(3.9%増)が3ヵ月ぶりの増となったものの、小型車(8.0%減)が6ヵ月連続の減、普通車(4.4%減)が2ヵ月ぶりのマイナスとなり、トラック計では2.7%減と
2ヵ月ぶりのマイナスとなった。
<産業機械>
○9月の受注は前年同月比2.7%減と2ヵ月連続のマイナス。
・ 内需(11.6%減)は、民需(11.7%減)、官公需(13.9%減)ともに大幅に減少し3ヵ月連続のマイナス。また、外需(9.2%増)は、原動機、化学機械、建設機械などの堅調により2ヵ月ぶりのプラス。全体では2.7%減と2ヵ月連続のマイナスとなった。また、7~9月期計では6.1%減と6期ぶりのマイナス、上期計では2.8%減と6年ぶりのマイナスとなった。また、日本工作機械工業会によると、10月の工作機械受注実績(速報)は、前年同月比40.4%減の810 億
円と5ヵ月連続のマイナスで、04 年4月以来54ヵ月ぶりの1,000 億円割れとなった。
○9月の生産は前年同月比3.7%減と7ヵ月連続のマイナス。
・ ボイラ・原動機(1.5%増・7ヵ月ぶり)、農業機械(15.7%増)、冷凍機(2.9%増)は増加したが、土木建設機械(14.7%減・5ヵ月連続)、化学機械(20.8%減)、運搬機械(11.0%減)、金属加工工作機械(7.4%減)が減少、全体では3.7%減と7ヵ月連続のマイナスとなった。また、7~9月期計では7.9%減と3期連続のマイナス、上期計では6.1%減と農業機械を除く主要機種いずれも減少した。
<電気機械>
○9月の生産は前年同月比0.5%増と僅かながら3ヵ月ぶりのプラス。
・ 重電(2.7%増)は静止電機の堅調により2ヵ月ぶりのプラス。民生用電機(10.9%増)はエアコン(23.0%増)の大幅増により3ヵ月連続のプラス。民生用電子(10.5%増)は液晶テレビ(18.7%増)が再び増加に転じ2ヵ月ぶりのプラス。通信機械(21.1%減)は8ヵ月連続のマイナス、電子部品(9.9%増)は40ヵ月連続のプラスとなった。
・ また、7~9月期計では3.1%減と13期ぶりのマイナス、上期計では0.1%減と重電、民生用電子、電子部品は堅調も、民生用電機、通信機械が落ち込み微減横ばいとなった。
<造 船>
○10月の新造船受注は、前年同月比74.0%増の244万G/Tと2ヵ月連続のプラス。
○9月の起工量は、前年同月比45.9%増の122万G/Tと再びプラス、上期計では12.7%増の747万G/T。
○10月末手持工事量は、前月比1.4%減の6,995万G/T と微減横ばい。
・ 10月の輸出船契約量は前年同月比83.9%減の57万G/T と21ヵ月ぶりの100万G/T割れ。
3.鋼材受注(内需)
9月の鋼材受注、普通鋼は2ヵ月連続でマイナス、特殊鋼は2ヵ月振りにプラス
○9月の普通鋼鋼材受注(内需計)は、前年比4.7%減の452万トン。
・ 建設用(7.6%減)は、建築(9.0%減)、土木(0.3%減)およびその他建設用(12.0%減)が2ヵ月連続でマイナスとなったため、全体でも2ヵ月連続で前年実績を下回った。
※その他建設用:建築金物、建築用付属資材(配管・配線用、サッシ、シャッター等)、仮設材(足場鋼管、メタルフォーム等)など。
・ 製造業用(5.3%減)は、造船(4.0%増・18ヵ月連続)、産機(4.7%増・9ヵ月連続)が堅調を持続したものの、電機(6.5%減)が5ヵ月連続で減少したことに加え、ウェイトの高い自動車(7.3%減・2ヵ月連続)の減少が拡大したため、全体でも2ヵ月連続でマイナスとなった。
・ 08年度上期計は、製造業用(0.8%増)が若干増加したものの、販売業者向け(3.1%減)および建設用(2.1%減)はマイナスとなったため、内需全体では1.0%の減少となった。
○9月の特殊鋼鋼材受注(内需計)は、前年比2.3%増の120万トン、2ヵ月振りにプラス。
・ 製造業用(1.2%増)は、自動車(4.3%減・2ヵ月連続)が前年割れとなったものの、産機(8.8%増)および次工程用(4.2%増)は2ヵ月振りに増加したため、全体でも2ヵ月振りにプラス。内需全体でも13ヵ月振りのマイナスとなった先月から再び増加に転じた。
・ 08年度上期計は、製造業向け(3.8%増)、販売業者向け(2.1%増)ともに増加、内需全体では3.5%増と堅調に推移した。
4.鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)
10月の粗鋼生産(速報)は、前年同月比2.7%、28万トン減の 1,010万トン
○10月の粗鋼生産、普通鋼鋼材生産、9月の普通鋼鋼材出荷・在庫動向
・ 10月の粗鋼生産は、前年同月比2.7%、28万トン減の1,010万トンで、2006年5月以来、29ヵ月振りの減少となった。うち転炉鋼(0.2%減)は764万トンで29ヵ月振りの減少、電炉鋼(9.7%減)は246万トンで2ヵ月連続の減少となった。1~10月計では前年同期比2.7%増の10,244万トンであった。
・ 10月の普通鋼鋼材生産は、前年同月比4.1%減の705万トンで2ヵ月振りの減少となった。
・ 9月の普通鋼鋼材国内向け出荷は、前年比3.5%減で2ヵ月連続の減少、輸出向け出荷は同 9.5%増で15ヵ月連続の増加となった。
・ 9月末の普通鋼鋼材国内向在庫は、前月末比12万トン増の558万トンと2カ月連続の増加となった。なお、在庫率は同9.5ポイント低下して110.3%となった。
○9月の生産、出荷、在庫動向
・ 特殊鋼鋼材需給
9月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比9.6%増の181万トン、 11ヵ月連続の増加
・ 9月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比9.6%・16万トン増の181万トンと11ヵ月連続の増加となった。鋼種別には、工具鋼を除くすべての鋼種で増加した。また、7~9月期計では、前年同期比6.6%増の527万トンと4期連続の増加、年度上期では同6.0%増の1,059万トンとなった。
・ 9月の特殊鋼鋼材出荷は、国内向け(6.4%増)が2ヵ月ぶりに増加、輸出向け(16.1%増)は3ヵ月連続で増加。また7~9月期計では、国内向け(4.0%増)が9期連続、輸出向け(14.4%増)は3期連続でそれぞれ増加、年度上期では国内向け(4.5%増)、輸出向け(10.7%増)ともに増加した。
・ 9月末の特殊鋼鋼材在庫は、前月末比5万トン減の144万トンとなった。なお、在庫率は17.1ポイント低下し77.7%となった。
5.鋼材流通、鋼材輸入
9月の普通鋼鋼材輸入は前年同月比10.8%減の27万トン5ヵ月ぶりの減少
○9月における鋼材流通の動向
・市中販売(確報)は前年同月比3.4%・11万トン減の299万トンと2ヵ月連続の減少となった。品種別には、熱薄類(2.3%増)は増加したが、小棒(11.9%減)、H形鋼(4.9%減)、厚中板(2.7%減)、冷薄類(1.2%減)、亜鉛めっき(2.4%減)、鋼管(2.1%減)が減少した。
・ 市中在庫(自社所有分)は、前月末比0.3%・1万トン増の291万トンと僅かながら6ヵ月連続で増加した。品種別には、小棒(3.1%減)は減少したが、H形鋼(2.6%増)、熱薄類(2.2%増)、 冷薄類(3.4%増)、厚中板(1.1%増)、亜鉛めっき鋼板(0.9%増)は増加した。
〇9月の普通鋼鋼材輸入の動向
・ 9月の普通鋼鋼材輸入は、前年同月比10.8%減の27万トンと5ヵ月ぶりに減少した。品種別には、線材(2.2倍)は2ヵ月ぶりに増加したが、厚中板(14.5%減)、熱延薄板類(26.0%減)が6ヵ月ぶり、冷延薄板類(1.2%減)は2ヵ月連続、亜鉛めっき鋼板(8.1%減)は3ヵ月ぶりに減少した。
・ また、上期計では前年同期比3.2%増の194 万トンと、線材、厚中板、熱薄類を中心に増加した。
・ 国別には、中国(17.5%増)は5ヵ月連続で増加したが、ウェイトの高い韓国(6.9%減)が3ヵ月ぶり、台湾(34.5%減)は5ヵ月連続で減少した。また、中国については前月比では39.4%減と3ヵ月連続の2桁減となっている。
6.鉄鋼輸出
9月の全鉄鋼輸出は前年同月比26.5%増の385万トン、10ヵ月連続プラスで9月としては過去最高を記録
○ 9月の全鉄鋼輸出は、前年同月比26.5%・11万トン増の385万トンと、10ヵ月連続の増加となり、月間2番目の高水準を記録するとともに、9月としては76年の324万トンを抜いて過去最高を更新した。仕向先別では、ASEAN向け(71.2%増)が18ヵ月連続の増加となったのを始め、韓国向け(13.6%増)が5ヵ月ぶり、中国向け(32.3%増)が3ヵ月連続でともに増加した。品種別には、厚中板(9.3%増)が2ヵ月ぶり、熱延鋼板類(22.8%増)が3ヵ月ぶり、冷延鋼板類(1.1%増)が9ヵ月連続、亜鉛めっき鋼板(8.2%増)が4ヵ月連続、と主要品種が全て増加。
○ 7~9月期計では前年同期比12.4%・116万トン増の1,046万トンと10期連続の増加。4~9月期(年度上半期)計では同8.5%・156万トン増の2,000万トンと6期連続で増加し、年度上半期ベースでは02年の1,889万トンを上回り過去最高となった。
○ 9月の輸出平均単価は、全鉄鋼ベースで前月を73ドル下回る1,206ドルと、8ヵ月ぶりに下落した。
7.海外市場
需要が鈍化するなかで世界主要各社は相次いで減産を表明
概 況
金融危機に端を発した信用収縮は実体経済に波及し、世界経済は減速傾向を強めている。米国は7~9月期に3期振りのマイナスに、欧州も4~6月期に続いて7~9月期にもマイナス成長の見通しが濃厚となっている。また、中国を始めとする新興国経済も減速が顕著となるなか、主要国では財政・金融政策による景気下支え策を相次いで行なっている。年初来好調を続けてきた鉄鋼需要産業は鈍化が目立ち始め、世界の主要鉄鋼各社は相次いで減産方針を表明している。こうしたなか、9月の世界粗鋼生産は約6年半振りの前年同月比マイナスとなっている。主要市場で鋼材市況が続落するなか、各国における実需レベルの
的確な把握が重要性を増してこよう。
主要国の鉄鋼需給動向
○ 米国
7~9月期の実質GDP成長率は-0.3%と3期振りのマイナス成長となった。自動車や住宅建設の減退に歯止めが掛からず、8月の鋼材出荷は前年同月比3.8%減となった(1~8月累計は前年同期比2.6%増)。一方、8月の輸出は前年同月比38.6%増と月間過去最高を更新(1~8月累計は前年同期比26.5%増)するが、9月の輸入(速報)は同22.3%増と5ヵ月振りの前年同月比プラスとなった(1~9月累計は同7.0%減)。また、鋼材価格は需要減に加えてスクラップ安もあって全面安の展開となっている。
○ 欧州
欧州経済は4~6月期に続いて7~9月期もマイナス成長の公算が大きく、景気後退局面入りとの見方が有力視されている。また、鉄鋼ミルの多くは新規需要低迷に対応して減産体制に入っており、9月の粗鋼生産は前年同月比0.9%増と小幅増に止まっている(1~9月累計は前年同期比1.2%増)。鋼材市況は9月に一部品種で反落したが、10月はドイツやフランスなど主要市場で全品種にわたって全面安の展開となっている。
○ 中国
7~9月期の実質GDP成長率は9.0%と11期振りに1桁台まで鈍化し、政府は中小企業対策や農村振興等を含めた景気対策を打ち出した。鉄鋼需要産業の活動が鈍化傾向を辿るなか、10月の鋼材生産は前年同月比12.4%減と3ヵ月連続の前年同月比マイナス(1~10月累計は前年同期比5.9%増)となった。一方、10月の鋼材輸出は前年同月比9.0%増と4ヵ月連続の前年同月比プラスとなるも前月比では大幅減となった(1~10月累計は前年同期比1.2%減の5,312万トン)。10月の鋼材市況は前月比で大幅下落したが、一部ミ
ルで追加値下げの動きも窺われる。
○ 韓国
7~9月期の実質GDP成長率は0.6%と4年振りの低水準となるなど景気減速が鮮明となっている。鉄鋼需要産業は機械受注が好調持続なるも自動車や建設は大幅な前年割れとなっている。しかしながら、7月の鋼材生産は前年同月比10.7%増、1~7月累計は前年同期比8.7%増と依然として増産傾向が続いている。一方、9月の鋼材輸出は前年同月比 15.1%増(1~9月累計は前年同期比12.1%増)、輸入は同41.3%増(同累計は同21.5%増)といずれも前年比2桁増となっている。
○ タイ
タイ経済は世界的な景気減速と国内の政治混乱などから減速傾向を一段と強めている。また、9月の民間投資指数は2ヵ月連続で前月の伸びを下回るなど厳しさを増している。鉄鋼需要産業は製造業の減退感が益々強まるなかで、9月の鋼材生産は熱・冷延薄板を始めとして亜鉛めっき鋼板、棒・形鋼がいずれも前年同月比2桁減となっている。一方、鋼材貿易は1~8月累計で輸出が前年同期比14.0%減、輸入が同18.2%増と輸出減、輸入増となっている。
○ マレーシア
マレーシア経済は8月の鉱工業生産が約1年振りの低い伸びに止まるなど減速傾向が強まっている。政府はこうした経済情勢を受けて総額70億リンギ(約20億ドル)の追加経済対策を策定している。また、鉄鋼需要産業は建設活動を中心に翳りが窺われ、8月の鋼材生産は棒鋼・線材、溶接鋼管、亜鉛めっき鋼板が軒並み前年同月を下回っている。なお、政府は前述の景気対策のなかで、既に実施しているビレットや棒鋼に加えて他の条鋼類の輸入関税を撤廃した。
○ インド
8月に入り鉱工業生産の伸びが急速に鈍化するなど景気は悪化の様相を示している。鉄鋼需要は建設や自動車部門の低迷を受けてスローダウンしつつあるが、9月の鋼材生産は前年同月比5.8%増と引き続き増産となっている(1~9月累計は前年同期比4.0%増)。鋼材貿易をみると、8月の輸出は先月に続いて前年同月比2桁増(1~8月累計は前年同期比6.7%増)となったが、輸入はほぼ前年同月並みとなっている(同累計は同8.0%増)。