No.776: 生産2カ月振り上昇 経産省 7月の鉱工業・出荷・在庫速報発表
No.777: 燃料油販売前年比3.5%減 生産は3カ月連続前年比増 エネ庁 7月の石油統計速報発表
No.778: 粗鋼生産 再び前年比減 燃料油生産 3カ月連続前年比増 経産省 7月の生産動態統計速報発表

令和1年9月8日(月)Vol.776

生産2カ月振り上昇

経産省 7月の鉱工業・出荷・在庫速報発表

経済産業省は8月30日、7月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。それによると、7月の鉱工業生産は前月比1.3%と2カ月振りの上昇で、11業種が前月比上昇にあり、出荷は前月比2.6%上昇、在庫は6カ月振りの低下だった。経産省では6月の大幅な低下からの戻りもあり、想定を上回る上昇幅ではあったものの、先行きは強くはないとして、基調判断を「一進一退」の据え置きとしている。

7月生産は前月比1.3%上昇

7月の鉱工業生産は、季節調整済指数102.7、前月比1.3%と2カ月振りの前月比上昇となった。6月は確報値で前月比マイナス3.3%低下と大幅に低下しており、7月はそこから反発し、上昇をみせている。だが、前月比上昇とはいえ、7月の指数値102.7は、第1四半期の指数値102.4を上回っているものの、第2四半期の指数値103.0を下回る水準となっている。前月比で上昇したとはいえ、十分回復したといえるほどの水準ではない。

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7月は11業種が前月比上昇

7月の鉱工業生産を業種別にみると、全15業種のうち11業種が前月比上昇、3業種が前月比低下、1業種が前月比横ばいと、幅広い業種で上昇がみられた。6月の低下業種の多くが上昇したため、6月の大幅な低下の反動増の面もあると考えられている。

7月の生産上昇への寄与が大きかった業種は自動車工業、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品を除く)、パルプ・紙・紙加工品工業だった。

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上昇寄与の最も大きかった自動車工業の前月比は2.1%上昇で、2カ月振りの上昇となっている。指数値は108.5と上昇したが、自動車工業は6月に大幅低下したので、そこからの反動増も大きいとみられる。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品等が上昇要因となっている。

上昇寄与2位の化学工業(無機・有機化学工業・医薬品を除く)の前月比は4.7%で、2カ月振りの上昇となっている。指数値は122.6と上昇したが、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品を除く)も6月は3.8%の低下だったため、その反動増の面もあるとみられる。また、新製品の発売に向けた増産等による生産増もあったようだ。乳液・化粧水類、頭髪用化粧品等が上昇要因となっている。

上昇寄与3位のパルプ・紙・紙加工品工業の前月比は7.4%上昇で、2カ月振りの上昇だった。パルプ・紙・紙加工品工業は、工場の定修等の影響もあり6月は4.0%低下していたため、7月はそこからの回復もあり、上昇幅が大きく現れたと考えられる。印刷用紙(塗工)、製紙パルプ等が上昇要因となっている。

出荷は前月比2.6%上昇

7月の鉱工業出荷は、指数値102.4、前月比2.6%と2カ月振りの前月比上昇となり、大幅な上昇をみせた。

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業種別にみると全15業種のうち、12業種が前月比上昇となっていた。輸送機械工業(自動車工業を除く)、自動車工業、金属製品工業等が上昇寄与業種となっている。

財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、最終需要財の出荷は前月比3.5%上昇、生産財の出荷は前月比1.5%上昇だった。

最終需要財の内訳の中で7月の出荷上昇に対する寄与、影響度が特に大きかったのは資本財だった。しかし、資本財(輸送機械を除く)については、その上昇寄与が小幅にとどまっていた。また、消費財は耐久消費財・非耐久消費財ともに出荷は上昇している。

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在庫は6カ月振りの低下

7月の鉱工業在庫は指数値104.4、前月比0.3%と6カ月振りの低下となった。出荷が上昇する中で、生産増の下でも在庫が低下となった。

業種別にみると全15業種中、8業種が低下している。無機・有機化学工業、鉄鋼・非鉄金属工業、石油・石炭製品工業等が低下に寄与した。

財別にみると生産財、建設財、非耐久消費財の在庫が低下している。特に鉱工業用生産財在庫は低下しており、7月の鉱工業出荷の上昇も影響したようである。

鉱工業在庫についてはこのところ、現行2015年基準での最高水準の更新が続いていたが、7月は低下した。とはいえ、在庫は引き続き高水準にあり、今後の鉱工業生産への影響については、引き続き注意してみていく必要があると考えられる。

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基準判断は据置

7月の鉱工業生産は、2カ月振りの前月比上昇だった。先月時点では企業の生産計画から、それに含まれる上方バイアスの例年の傾向も考慮し、7月は上昇も低下もありうる程度と想定していたが、7月の上昇幅は前月比1.3%と、想定を上回る上昇をみせた。

だが、前月の低下幅3.3%と比べると、この上昇幅は大きなものではない。鉱工業生産は4月、5月と大型連休を挟んで上昇を続けた後、6月は反動減がやや大きく現れたため、そこからの戻りもあるものと考えられる。また、7月の指数値102.7は第2四半期の指数値103.0と比べても、それを下回る水準にとどまっている。

先行きは、企業の生産計画で8月上昇、9月低下の計画となっている。企業の生産計画の上方バイアスを考慮すると、8月は低下もありうる程度の計画となっており、また8月は上昇したとしても、9月は再び低下することが考えられる。

経産省ではこのような動きを踏まえ、7月の鉱工業生産の基調判断については、「生産は一進一退」を据え置き、先行きを注視していきたいとしている。

製造工業予測指数製造工業予測指数

製造業の生産計画

生産は波8月上昇、9月低下予測
経済産業省が主要企業の生産計画を調査した製造工業生産予測調査によると、8月は前月比1.3%の上昇、9月は同1.6%の低下見込みとされている。
◇8月の上昇業種
汎用・業務用機械工業、化学工業、電気・情報通信機械工業等
◇9月の低下業種
汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、化学工業等

製造工業生産予測指数/生産計画から見る生産動向(季節調整済前月比%)

2019年8月見込み 2019年9月見込み
2019年8月調査(今回) 1.3 -1.6
2019年7月調査(前回) 0.6

◇予測指数の補正値試算

製造工業生産予測指数の先行きを試算した補正値は、8月が0.7%の低下見込み。

なお、7月の補正値は-0.3%であったが、鉱工業指数の7月の前月比は1.3%であった。

製造工業生産予測指数の補正値(季節調整済前月比(%))

補正値 予測調査結果
8月前月比 -0.7(-1.7~0.2) 1.3

① 上段の数値が、最も可能性の高い値(最頻値)。

② 最頻値とならない場合でも、( )の幅の中に90%の確率で収まるという計算結果になっている。

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令和1年9月8日(月)Vol.777

燃料油販売前年比3.5%減

生産は3カ月連続前年比増

エネ庁 7月の石油統計速報発表

資源エネルギー庁は8月30日、7月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。

1.原油の動向

7月の原油輸入量は1,512万㎘、前年同月比104.8%と3カ月連続で前年を上回った。輸入量の多い順にみると次のようになっている。

(1)サウジアラビア(502万㎘、前年同月比103.1%)

(2)アラブ首長国連邦(449万㎘、同113.6%)

(3)カタール(147万㎘、同133.9%)

(4)クウェート(107万㎘、同100.6%)

(5)ロシア(80万㎘、同138.9%)

なお、7月の中東依存度は86.9%、前年同月に比べ1.9ポイント減と5カ月連続で前年を下回った。

2.燃料油の生産

燃料油の生産は1,387万㎘、前年同月比104.0%と3カ月連続で前年を上回った。油種別にみると、ナフサ、ジェット燃料油、灯油及び軽油は前年同月を上回ったが、ガソリン、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。

3.燃料油の輸入、輸出

燃料油の輸入は249万㎘、前年同月比90.8%と前年を下回った。輸出は299万㎘、前年同月比119.4%と3カ月連続で前年を上回った。

4.燃料油の国内販売

燃料油の国内販売は1,295万㎘、前年同月比96.5%と前年を下回った。油種別にみると、ナフサ、灯油及び軽油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ジェット燃料油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。

5.燃料油の在庫

燃料油の在庫は956万㎘、前年同月比106.2%と2カ月連続で前年を上回った。油種別にみると、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ジェット燃料油及びA重油は前年同月を下回った。

※添付資料

石油需給概要 2019年7月 Excel

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令和1年9月8日(月)Vol.778

粗鋼生産 再び前年比減

燃料油生産 3カ月連続前年比増

経産省 7月の生産動態統計速報発表

経済産業省は8月30日、7月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は838.7.9万トンと前月比4.6%減で、前年同月比0.4%の微減となり、前年比が6月の10カ月振り増から再び減少となった。

また、石油製品生産量は燃料油計が1,387.0万㎘と前月比10.4%の2桁増で、前年同月比も4.0%の増となり、前年同月比で3カ月連続の増加となった。

【7月の鉄鋼生産】

7月の銑鉄生産は657.6万トンと前月比0.1%の微増で、前年同月比4.4%増となり、前年同月比では2カ月連続の増加となった。

粗鋼生産は838.7万トンと前月比4.6%減で、前年同月比0.4%の微減となり、前年同月比では2カ月振りの減少となった。7月の1日当たり粗鋼生産は27.1万トンで、6月の同29.3万トン比7.7%減となった。

炉別生産では、転炉鋼が654.5万トンと前月比0.9%減だが、前年同月比3.0%増で前年同月比2カ月連続の増加となり、電炉鋼が184.1万トンと前月比15.9%、前年同月比10.8%のともに2桁減で前年同月比5カ月連続の減少となった。

鋼種別生産では、普通鋼が638.4万トンと前月比4.3%減で、前年同月比0.04%の微減で前年同月比2カ月ぶりの減少となり、特殊鋼が200.3万トンと前月比5.7%、前年同月比1.5%のともに減となり前年同月比8カ月連続の減少となった。

熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は739.7万トンと前月比3.2%減で、前年同月比0.6%の微減となり、前年同月比13カ月連続の減少となった。

普通鋼熱間圧延鋼材の生産は574.3万トンと前月比4.2%減で、前年同月比0.5%の微減となり、前年同月比8カ月連続の減少となった。

特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は165.4万トンと前月比0.4%増だが、前年同月比0.9%減となり、前年同月比7カ月連続の減少となった。

主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が349.4万トンと前月比2.1減だが、前年同月比1.5%増。冷延広幅帯鋼が147.6万トンと前月比5.1%増だが、前年同月比0.5%の微減。鋼板が86.6万トンと前月比2.9%減だが、前年同月比7.2%増。小形棒鋼が65.6万トンと前月比13.1%の2桁減で、前年同月比も7.2%減。H形鋼が29.0万トンと前月比2.4%減で、前年同月比14.8%の2桁減。冷延電気鋼帯が9.9万トンと前月比0.4%の微減で、前年同月比15.4%の2桁減。線材が14.1万トンと前月比11.5%の2桁増だが、前年同月比3.3%減となった。

特殊鋼では、熱間圧延鋼材が165.4万トンと前月比0.4%の微増だが、前年同月比0.9%の微減。冷延広幅鋼帯が24.8万トンと前月比2.4%、前年同月比4.1%のともに増。特殊鋼磨棒鋼・線類が18.9万トンで前月比3.9%増だが、前年同月比7.5%減となった。

鋼管では、普通鋼熱間鋼管が33.2万トンと前月比1.0%増だが、前年同月比10.9%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が12.7トンと前月比3.8%減で、前年同月比3.2%減となった。

めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が86.0万トンと前月比2.5%増だが、前年同月比3.9%減となった。

【7月の鉄鋼出荷】

7月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼の鋼帯が184.1万トンと前月比7.2%、前年同月比8.9%のともに増。冷延広幅帯鋼が56.0万トンと前月比5.7%増だが、前年同月比1.4%減。鋼板が86.8万トンと前月比3.5%減だが、前年同月比4.3%増。小形棒鋼が72.1万トンと前月比1.6%増だが、前年同月比0.4%の微減。H形鋼が30.9万トンと前月比1.0%増だが、前年同月比8.2%減。線材が13.8万トンと前月比15.9%の2桁増で、前年同月比3.0%増となった。

特殊鋼では、熱間圧延鋼材が117.7万トンと前月比0.4%の微増だが、前年同月比5.8%減。冷延広幅帯鋼が23.1万トンと前月比4.5%増だが、前年同月比0.8%の微減。特殊鋼磨棒鋼・線類が17.8万トンと前月比4.4%増だが、前年同月比2.9%減となった。

鋼管では、普通鋼熱間鋼管が30.4万トンと前月比2.4%増だが、前年同月比3.4%減。特殊鋼熱間鋼管が12.4万トンと前月比18.1%の2桁増だが、前年同月比7.6%減となった。

めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が87.8万トンと前月比5.3%増だが、前年同月比2.4%減となった。

【7月の石油生産】

7月の石油製品の生産を油種別みると、全国的な酷暑で電力需要の増加した重油が208.9万㎘と前月比21.0%の大幅増だが、前年同月比4.8%減。ガソリンが402.8万㎘と前月比8.0%増だが、前年同月比8.8%減。軽油が380.5万㎘と前月比8.8%増で、前年同月比13.0%の2桁増。灯油が88.1万㎘と前月比51.0%、前年同月比45.1%のともに大幅増。ナフサが151.7万㎘と前月比1.9%増で、前年同月比24.1%の大幅増。ジェット燃料油が155.1万㎘と前月比0.8%の微増で、前年同月比1.2%増。液化石油ガスが35.3万トンと前月比12.7%の2桁増で、前年同月比0.6%増。アスファルトが20.8万トンと前月比5.1%増だが、前年同月比13.5%の2桁減。潤滑油が20.1万㎘と前月比16.7%の2桁増だが、前年同月比5.5%減となった。

【7月の石油出荷】

7月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,610.9万㎘と前月比9.7%、前年同月比2.0%のともに増となった。

油種別では、重油が210.9万㎘と前月比12.7%の2桁増だが、前年同月比12.7%の2桁減。ガソリンが434.0万㎘と前月比12.5%増だが、前年同月比4.6%減。軽油が378.2万㎘と前月比7.3%増で、前年同月13.2%の2桁増。灯油が70.1万㎘と前月比4.0%、前年同月比7.3%のともに増。ナフサが352.2万㎘と前月比6.2%増、前年同月比6.3%のともに増。ジェット燃料油が165.5万㎘と前月比15.4%の2桁増で、前年同月比も8.8%増。液化石油ガスが46.1万トンと前月比10.6%の2桁増で、前年同月比も4.1%増。アスファルトが14.7万トンと前月比62.9%の大幅増で、前年同月比0.9%の微増。潤滑油が20.2万㎘と前月比5.5%増だが、前年同月比6.2%減となった。

【7月のコークス・石灰石】

7月のコークスの生産は、278.2万トンと前月比1.4%、前年同月比4.4%のともに増。出荷は74.5万トンと前月比4.2%増で、前年同月比13.8%の2桁増となった。

7月の石灰石の生産は1,220.6万トンと前月比11.9%の2桁増で、前年同月比も4.5%増。出荷は988.8万トンと前月比6.9%、前年同月比6.2%のともに増となった。

※添付資料

鉄鋼統計速報 2019年7月 Excel

資源エネルギー統計速報 2019年7月 Excel