令和1年10月14日(月)Vol.779
生産 2カ月振りの低下
経産省 鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済産業省は9月30日、8月の鉱工業生産・出荷指数速報を発表した。それによると、8月の生産は前月比-1.2%と2カ月振りの低下した。生産は上昇と低下を繰り返しつつも、このところの動きとしては弱さも感じられる。製造工業生産予測調査によると9月は上昇、10月は低下を予測しており、経産省では基調判断を「生産はこのところ弱含み」と下方修正した。
生産は前月比-1.2%
本年8月の鉱工業生産は、季節調整済指数101.5、前月比−1.2%と2カ月振りの前月比低下となった。7月は前月比1.3%の上昇だったが、8月は再び低下となった。8月の指数値は、6月の指数値101.4以来の水準となるが、4〜5月の大型連休を挟んで大幅に上昇して以来、上昇と低下を繰り返す動きを続けており、8月は本年で2番目に低い水準。このところの動きを均してみると、指数の動きとしては徐々に低下している様子も感じられる。
12業種が前月比低下
8月の鉱工業生産を業種別にみると全体15業種のうち、12業種が前月比低下、3業種が前月比上昇と、幅広い業種で低下がみられた。低下業種は鉄鋼・非鉄金属工業、生産用機械工業、自動車工業等で、上昇業種は電子部品・デバイス工業、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品除く)、無機・有機化学工業となっている。
8月は7月の上昇業種の多くが低下しており、7月の上昇の反動減の面もあるとみられるものの、強さを感じられる業種は多くない。
8月の生産低下への寄与が大きかった業種は鉄鋼・非鉄金属工業、生産用機械工業、自動車工業だった。低下寄与の最も大きかった鉄鋼・非鉄金属工業の前月比は−4.7%で、2カ月振りの低下だった。8月は台風や設備の定修等の影響もあり、生産が大幅に低下しました。特殊鋼熱間圧延鋼材、粗鋼等が低下要因となっている。低下寄与2位の生産用機械工業の前月比は−2.6%で、2カ月振りの低下でフラットパネル・ディスプレイ製造装置、ショベル系掘削機械等が低下要因となっている。低下寄与3位の自動車工業の前月比は-1.1%で、2カ月振りの低下だった。自動車工業の生産減には、工場の稼働日減の影響もあったようだが、普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品等が低下要因となっている。
出荷は前月比-1.4%
8月の鉱工業出荷は指数値101.1、前月比-1.4%と、2カ月振りの前月比低下となった。低下業種は輸送機械工業(自動車工業除く)、鉄鋼・非鉄金属工業、石油・石炭製品工業等。上昇業種は電子部品・デバイス工業、電気・情報通信機械工業、汎用・業務用機械工業だった。
業種別にみると全体15業種のうち、11業種が前月比低下、3業種が前月比上昇、1業種が前月比横這いだった。輸送機械工業(自動車工業除く)、鉄鋼・非鉄金属工業、石油・石炭製品工業等が低下寄与業種だった。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、最終需要財の出荷は前月比-0.6%低下、生産財の出荷は前月比-2.3%低下だった。8月は最終需要財より生産財の低下寄与の方が大きくなっていた。
最終需要財の内訳の中で、8月の出荷低下に対する寄与、影響度が特に大きかったのは資本財だったが、輸送機械の低下の影響が大きく、資本財(輸送機械除く)については、前月比上昇となった。また、消費財については、耐久消費財の出荷は上昇、非耐久消費財の出荷は低下となった。
在庫は横這い
8月の鉱工業在庫は指数値104.5、前月比0.0%と前月比横這いとなった。業種別にみると15業種中、8業種が上昇、7業種が低下だった。
鉱工業在庫は、6月まで最高水準(現行2015年基準)の更新が続いた後、7月に若干低下はしたものの、8月も依然として高水準の状況続いている。この在庫水準の鉱工業生産への影響については、引き続き注意してみていく必要がある。8月の在庫が上昇した業種は化学工業(無機・有機化学工業・医薬品除く)、石油・石炭製品工業、鉄鋼・非鉄金属工業等。低下した業種は電気・情報通信機械工業、生産用機械工業、電子部品・デバイス工業等だった。
基調判断は下方修正
8月の鉱工業生産は、2カ月振りの前月比低下だった。7月時点で企業の生産計画からそれに含まれる上方バイアスの例年の傾向も考慮すると、8月は最頻値で-0.7%と、低下もありうるものと想定していたが、8月の低下幅は前月比-1.2%となり、やや大きめの低下となった。7月の上昇分をほぼ打ち消した形となり、指数値も101.5と、6月に次いで本年で2番目に低い水準となった。
製造工業生産予測指数
先行き見通しは、企業の生産計画で9月が上昇、10月が低下の計画となっている。企業の生産計画の例年の上方バイアスを考慮すると、9月は上昇も低下もありうる程度の計画と考えられる。ただ、仮に9月の鉱工業生産が企業の計画通りに上昇したとしても、第3四半期の水準は第2四半期の水準より低下が見込まれる。10月も現時点では確たることは言い難いものの、9月比で低下が見込まれる。
経産省ではこのような動きを踏まえ、8月の鉱工業生産の基調判断については、「生産はこのところ弱含み」と下方修正しつつ、先行きを注視して行きたいとしている。
主要企業の生産計画を調査した製造工業生産予測調査によると、9月は前月比1.9%の上昇、10月は同-0.5%の低下となっており、上昇業種は生産用機械工業、電気・情報通信機械工業、その他等。低下業種は輸送機械工業、電気・情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業等となっている。
製造工業生産予測指数/生産計画から見る生産動向(季節調整済前月比%)
2019年9月見込み | 2019年10月見込み | |
2019年9月調査(今回) | 1.9 | -0.5 |
2019年8月調査(前回) | -1.6 |
予測指数の補正値試算
製造工業生産予測指数の先行きを試算した補正値は、9月が0.3%の上昇見込み。8月の補正値は-0.7%であったが、鉱工業指数の8月の前月比は-1.2%だった。
製造工業生産予測指数の補正値(季節調整済前月比(%))
補正値 | 予測調査結果 | |
9月前月比 | 0.3(-0.7~1.3) | 1.9 |
上段の数値が、最も可能性の高い値(最頻値)。最頻値とならない場合でも、( )の幅の中に90%の確率で収まるという計算結果になっている。
令和1年10月14日(月)Vol.780
粗鋼生産 2カ月連続前年比減
燃料油生産 4カ月振り前年比減
経産省 8月の生産動態統計速報発表
経済産業省は9月30日、8月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は813.2万トンと前月比3.0%、前年同月比7.7%のともに減となり、前年同月比で2カ月連続減少となった。
また、石油製品生産量は燃料油計が1,419.8万㎘と前月比2.4%増だが、前年同月比1.9%の減となり、前年同月比で4カ月振りの減少となった。
【8月の鉄鋼生産】
銑鉄生産は640.7万トンと前月比2.6%減、前年同月比5.1%減となり、前年同月比では3カ月振りの減少となった。
炉別生産では、転炉鋼が635.2万トンと前月比2.9%減、前年同月比6.8%減、電炉鋼が176.3万トンと前月比4.3%減、前年同月比11.5%減となり、前年同月比では転炉鋼は3カ月振りの減少、電炉鋼は6カ月連続の減少となった。
鋼種別生産では、普通鋼が626.5万トンと前月比1.8%減、前年同月比6.2%減、特殊鋼が185.0万トンと前月比7.8%減、前年同月比13.1%減となり、前年同月比では普通鋼は2カ月連続の減少、特殊鋼は9カ月連続の減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は723.3万トンと前月比2.7%減、前年同月比6.6%減となり、前年同月比では14カ月連続の減少となった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は573.5万トンと前月比0.8%減、前年同月比5.4%減となり、前年同月比では2カ月振りの減少となった。
特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は149.9万トンと前月比9.4%減、前年同月比11.1%減となり、前年同月比では8カ月連続の減少となった。
主要品種の生産内訳をみると軌条・外輪と中小形形鋼を除いて前年同月比減少となった。まず普通鋼では、鋼帯が357.5万トンと前月比2.3増だが、前年同月比3.5%減。冷延広幅帯鋼が141.4万トンと前月比4.2%、前年同月比7.6%のともに減。鋼板が81.3万トンと前月比6.0%、前年同月比4.6%のともに減。小形棒鋼が63.6万トンと前月比3.1%、前年同月比5.1%のともに減。H形鋼が29.5万トンと前月比2.0%増だが、前年同月比12.3%の2桁減。冷延電気鋼帯が10.2万トンと前月比3.7%増だが、前年同月比21.9%の大幅減。線材が12.9万トンと前月比9.0%減で、前年同月比14.5%の2桁減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が150.3万トンと前月比9.1%減で、前年同月比10.8%の2桁減。冷延広幅鋼帯が23.1万トンと前月比7.1%、前年同月比5.2%のともに減。特殊鋼磨棒鋼・線類が14.9トンで前月比21.0%の大幅減で、前年同月比11.4%の2桁減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が32.0万トンと前月比9.5%減で、前年同月比12.5%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が13.0トンと前月比3.5%、前年同月比1.1%のともに減となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が82.7万トンと前月比3.9%、前年同月比5.1%のともに減となった。
【8月の鉄鋼出荷】
8月の主要品種の出荷を品目別にみると、軌条・条項を除いて前月比、前年同月比ともに減少を示した。まず普通鋼では、鋼帯が175.0万トンと前月比4.9%減で、前年同月比0.8%の微減。冷延広幅帯鋼が47.6万トンと前月比15.1%の2桁減で、前年同月比8.9%減。鋼板が74.6万トンと前月比14.1%の2桁減で、前年同月比1.3%減。小形棒鋼が63.1万トンと前月比12.4%減で、前年同月比4.8%減。H形鋼が25.8万トンと前月比16.4%の2桁減で、前年同月比20.7%の大幅減。線材が11.2万トンと前月比19.0%、前年同月比18.0%のともに2桁減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が100.8万トンと前月比14.3%の2桁減で、前年同月比9.8%減。冷延広幅帯鋼が19.9万トンと前月比13.6%の2桁減で、前年同月比5.0%減。特殊鋼磨棒鋼・線類が14.1万トンと前月比20.8%の大幅減で、前年同月比11.3%の2桁減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が25.7万トンと前月比15.5%、前年同月比12.7%のともに減。特殊鋼熱間鋼管が11.5万トンと前月比7.4%減で、前年同月比20.2%の大幅減となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が73.5万トンと前月比16.3%、前年同月比10.8%のともに2桁減となった。
【8月の石油生産】
8月の石油製品の生産を油種別みると、重油が213.4万㎘と前月比2.2%、前年同月比1.7%のともに増。ガソリンが454.1万㎘と前月比12.7%の2桁増だが、前年同月比2.0%減。軽油が353.6万㎘と前月比7.1%、前年同月比6.6%のともに減。灯油が94.7万㎘と前月比7.5%、前年同月比1.7%のともに増。ナフサが144.6万㎘と前月比4.7%減だが、前年同月比1.7%増。ジェット燃料油が159.4万㎘と前月比2.8%増だが、前年同月比0.2%減。液化石油ガスが36.8万トンと前月比4.5%増だが、前年同月比1.0%減。アスファルトが20.8万トンと前月比5.1%増だが、前年同月比13.5%の2桁減。潤滑油が18.0万㎘と前月比10.4%、前年同月比16.2%のともに2桁減となった。
【8月の石油出荷】
8月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,589.8万㎘と前月比1.3%、前年同月比3.6%のともに減となった。
油種別では、重油が211.0万㎘と前月比横這いだが、前年同月比8.8%減。ガソリンが466.5万㎘と前月比7.5%増だが、前年同月比2.1%減。軽油が348.5万㎘と前月比7.8%、前年同月6.5%のともに減。夏場にも関わらず7月に増加した灯油が64.4万㎘と前月比8.1%減で、前年同月比12.3%の2桁減。ナフサが350.6万㎘と前月比0.4%の微減で、前年同月比2.0%減。ジェット燃料油が148.7万㎘と前月比10.1%の2桁減で、前年同月比2.5%減。液化石油ガスが47.6万トンと前月比3.2%増で、前年同月比10.%の2桁増。アスファルトが13.6万トンと前月比7.1%減で、前年同月比15.5%の2桁減。潤滑油が18.9万㎘と前月比6.0%減で、前年同月比17.1%の2桁減となった。
【8月のコークス・石灰石】
8月のコークスの生産は、277.1万トンと前月比0.4%の微減で、前年同月比1.1%減。出荷は64.7万トンと前月比13.1%の2桁減で、前年同月比2.0%減となった。
8月の石灰石の生産は1,122.9万トンと前月比8.2%、前年同月比も5.9%のともに減。出荷は866.4万トンと前月比12.4%の2桁減で、前年同月比7.7%減となった。
※添付資料
鉄鋼統計速報 2019年8月 Excel
資源エネルギー統計速報 2019年8月 Excel
令和1年10月14日(月)Vol.781
燃料油国内販売 2カ月連続前年割れ
エネ庁 8月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は9月30日、8月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
1.原油の動向
8月の原油輸入量は1,529万㎘、前年同月比91.4%と4カ月振りに前年を下回った。輸入量の多い順にみると次の通り。
(1)アラブ首長国連邦(543万㎘、前年同月比109.9%)
(2)サウジアラビア(455万㎘、同79.4%)
(3)カタール(157万㎘、同110.7%)
(4)クウェート(128万㎘、同97.1%)
(5)ロシア(104万㎘、同120.9%)となっている。
8月の中東依存度は88.1%、前年同月に比べ1.1ポイント減と6カ月連続で前年を下回った。
2.燃料油の生産
燃料油の生産は1,420万㎘、前年同月比98.1%と4カ月振りに前年を下回った。油種別にみると、ナフサ、灯油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ジェット燃料油、軽油及びA重油は前年同月を下回った。
3.燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は276万㎘、前年同月比96.7%と2カ月連続で前年を下回った。輸出は277万㎘、前年同月比100.1%と4カ月連続で前年を上回った。
4.燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,344万㎘、前年同月比96.5%と2カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、ナフサ及び軽油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ジェット燃料油、灯油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
5.燃料油の在庫
燃料油の在庫は1,035万㎘、前年同月比107.1%と3カ月連続で前年を上回った。油種別にみると、ガソリン、ナフサ、灯油及び軽油は前年同月を上回ったが、ジェット燃料油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要 2019年8月 Excel