令和1年11月11日(月)Vol.782
生産 前月比1.4%上昇
経産省 9月の鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済省は10月31日、9月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。9月の鉱工業生産は、前月比1.4%と2カ月振りの上昇ではあったものの、生産は低下と上昇を繰り返す中、四半期ベースでは前期比マイナス0.6%の低下。経産省では基調判断を「生産はこのところ弱含み」を据え置きとしている。
生産 2カ月振り上昇
本年9月の鉱工業生産は、季節調整済指数102.9、前月比1.4%と2カ月振りの前月比上昇となった。8月は前月比-1.2%の低下だったが、9月は再び上昇した。
9月は、先月時点での企業の生産計画の上方バイアスを補正した試算値(最頻値で前月比0.3%、90%レンジ:マイナス0.7%~1.3%)と比べると、大きめの上昇をみせたが、上昇業種も多くはなく、一時的要因による上昇もあり、鉱工業生産は6月に大幅に低下して以来、低下と上昇を繰り返す動きから抜け出たとは考えにくいところだ。四半期でみれば、速報ベースだが、第3四半期の指数値は102.4となり、第2四半期の指数値103.0からは前期比-0.6%の低下となった。
7業種が前月比上昇
9月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち7業種が前月比上昇、7業種が前月比低下、1業種が横ばいという結果だった。
9月は8月の低下の反動増という面もあるにしても、8月は12業種が低下であり、業種毎の上昇寄与をみても、強さを感じられる業種が少ない。
9月の生産上昇への寄与が大きい業種は汎用・業務用機械工業、生産用機械工業、電気・情報通信機械工業だった。
上昇寄与の最も大きかった汎用・業務用機械工業の前月比は9.4%の上昇で、2カ月振りの上昇となっている。9月は大型案件の影響もありコンベヤ、運搬用クレーン等一部品目が上昇要因となって生産が大幅に上昇した。
上昇寄与2位の生産用機械工業は半導体製造装置、化学機械等が上昇要因となって前月比は7.9%の上昇で、2カ月振りの上昇となった。
上昇寄与3位の電気・情報通信機械工業は超音波応用装置、セパレート形エアコン等が上昇要因となって前月比は4.0%の上昇で、4カ月振りの上昇だった。また、一部品目で大型案件があったことや、8月の猛暑によるエアコンの店頭在庫減少に対応した増産等も、上昇に寄与したようだ。
出荷 前月比1.3%上昇
9月の鉱工業出荷は指数値102.5、前月比1.3%増と、2カ月振りの前月比上昇となった。
業種別にみると、全体15業種のうち10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下だった。生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業等が上昇寄与業種となっている。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、最終需要財の出荷は前月比2.0%上昇、生産財の出荷は前月比0.7%上昇した。9月は、生産財より最終需要財の上昇寄与の方が大きくなっていた。
最終需要財の内訳の中で、9月の出荷上昇に対する寄与、影響度が特に大きかったのは資本財だった。資本財(輸送機械除く)は、前月比8.6%と大幅な上昇となっていた。消費財については、耐久消費財の出荷は前月比-2.2%の低下、非耐久消費財の出荷は前月比2.3%の上昇となり、消費財全体では出荷は前月比横這いだった。建設財は、前月比0.9%の上昇だった。
在庫 前月比久々の大きめ低下
9月の鉱工業在庫は指数値102.7、前月比-1.6%と、やや大きめの低下となった。この在庫の低下幅は、2016年11月の前月比-1.6%と並ぶ、久し振りの大幅な低下となった。
業種別にみると、15業種中10業種が低下、5業種が上昇だった。鉱工業在庫については、このところ高い水準の状況が続いていたが、9月は低下し、本年2月の102.4以来の水準まで低下した。
在庫循環図をみると、本年第3四半期は在庫積み上がり局面から在庫調整局面に入った。在庫については、本年第1四半期に一旦在庫調整局面に入ったものの、第2四半期は再び在庫積み上がり局面に戻り、在庫調整が進んでいないが、今後、さらに在庫調整が進むことが期待される。
基調判断 「生産弱含み」で据置
本年9月の鉱工業生産は、2カ月振りの前月比上昇だった。先月時点では企業の生産計画から、それに含まれる上方バイアスの例年の傾向も考慮すると、9月は最頻値で0.3%と、小幅な上昇が見込まれる試算結果だったが、実際には9月の上昇幅は前月比1.4%となり、それを上回る上昇となった。とはいえ、9月の上昇については、一部の業種によるところが大きく、個別の大型案件や天候要因など、一時的な要因により上昇幅がやや大きくなった面もみられる。また、鉱工業生産はこのところ、低下と上昇を繰り返しているが、7〜9月までの第3四半期でみると、指数値は102.4となり、第2四半期の指数値103.0と比べると、前期比-0.6%の低下となっている。
先行きは、企業の生産計画で10月が上昇、11月が低下の計画となっている。企業の生産計画の例年の上方バイアスを考慮すると、10月は低下の見込みが高いと考えられる。また、11月も現時点では確たることは言い難いものの、10月比で低下が見込まれている。
経産省ではこのような動きを踏まえ、9月の鉱工業生産の基調判断については、「生産はこのところ弱含み」を据え置き、先行きを注視していきたいとしている。
10月調査の結果概要
生産 10月上昇、11月低下予測
主要企業の生産計画を調査した製造工業生産予測調査によると、10月は前月比0.6%の上昇、11月は同-1.2%の低下見込みだった。
それによると、10月の上昇業種は生産用機械工業、電気・情報通信機械工業、その他等で、11月の低下業種は電気・情報通信機械工業、化学工業、その他等となっている。
製造工業生産予測指数/生産計画から見る生産動向(季節調整済前月比%)
2019年10月見込み | 2019年11月見込み | |
2019年10月調査(今回) | 0.6 | -1.2 |
2019年9月調査(前回) | -0.5 |
予測指数の補正値試算
製造工業生産予測指数の先行きを試算した補正値は、10月が-1.6%の低下見込みだった。
なお、9月の補正値は0.3%であったが、鉱工業指数の9月の前月比は1.4%であった。
製造工業生産予測指数の補正値(季節調整済前月比(%))
補正値 | 予測調査結果 | |
10月前月比 | -1.6(-2.6~-0.6) | 0.6 |
上段の数値が、最も可能性の高い値(最頻値)。最頻値とならない場合でも、( )の幅の中に90%の確率で収まるという計算結果になっている。
令和1年11月11日(月)Vol.783
燃料油販売 3カ月振り前年比増
エネ庁 9月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は10月31日、9月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
1.原油の動向
9月の原油輸入量は1,319万㎘、前年同月比94.7%と2カ月連続で前年を下回った。輸入量の多い順にみると次の通りだった。
(1)サウジアラビア(471万㎘、前年同月比96.3%)
(2)アラブ首長国連邦(394万㎘、同118.3%)
(3)クウェート(140万㎘、同127.7%)
(4)カタール(139万㎘、同120.9%)
(5)ロシア(92万㎘、同160.7%)
今月の中東依存度は91.3%、前年同月に比べ5.2ポイント増と7カ月振りに前年を上回った。
2.燃料油の生産
燃料油の生産は1,330万㎘、前年同月比96.7%と2カ月連続で前年を下回った。油種別にみるとA重油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油及び軽油は前年同月を下回った。
3.燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は220万㎘、前年同月比76.5%と3カ月連続で前年を下回った。輸出は318万㎘、前年同月比109.6%と5カ月連続で前年を上回った。
4.燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,309万㎘、前年同月比100.7%と3カ月振りに前年を上回った。油種別にみるとガソリン、ジェット燃料油、灯油及び軽油は前年同月を上回ったが、ナフサ、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
5.燃料油の在庫
燃料油の在庫は978万㎘、前年同月比94.7%と4カ月振りに前年を下回った。油種別にみると、灯油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、軽油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要 2019年9月 Excel
令和1年11月11日(月)Vol.784
粗鋼生産 3カ月連続前年比減
燃料油生産 2カ月連続前年比減
経産省 9月の生産動態統計速報発表
経済産業省は10月31日、9月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は804.0万トンと前月比1.0%、前年同月比4.6%のともに減となり、前年同月比で3カ月連続減少となった。
また、石油製品生産量は燃料油計が1,330.1万㎘と前月比6.3%、前年同月比3.3%のともに減となり、前年同月比で2カ月連続の減少となった。
【9月の鉄鋼生産】
銑鉄生産は611.4万トンと前月比4.6%、前年同月比2.4%のともに減となり、前年同月比では2カ月連続の減少となった。7~9月では1,909.7万トン(前年同期比1.1%減)、4~9月では3,865.5万トン(同0.4%減)となった。
粗鋼生産は804.5万トンと前月比0.9%減、前年同月比4.5%減となり、前年同月比では3カ月連続の減少となった。9月の1日当たり粗鋼生産は26.8万トンで、8月の同26.2万トン比2.4%増なった。7~9月では2,455.3万トン(前年同期比4.3%減)、4~9月では5,066.9万トン(同3.0%減)となった。
炉別生産では、転炉鋼が606.2万トンと前月比4.6%減、前年同月比4.1%減、電炉鋼が198.3万トンと前月比12.2%増、前年同月比5.9%減となり、前年同月比では転炉鋼は2カ月連続の減少、電炉鋼は7カ月連続の減少となった。
鋼種別生産では、普通鋼が618.3万トンと前月比1.3%減、前年同月比3.0%減、特殊鋼が186.2万トンと前月比0.4%増、前年同月比9.4%減となり、前年同月比では普通鋼は3カ月連続の減少、特殊鋼は10カ月連続の減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は695.9万トンと前月比4.1%減、前年同月比5.2%減となり、前年同月比では15カ月連続の減少となった。7~9月では2,165.1万トン(前年同期比3.9%減)、4~9月では4,424.3万トン(同3.7%減)だった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は546.9万トンと前月比5.0%減、前年同月比3.7%減となり、前年同月比では2カ月連続の減少となった。7~9月では1,700.5万トン(前年同期比2.9%減)、4~9月では3,468.5万トン(同2.6%減)であった。
特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は149.0万トンと前月比0.8%減、前年同月比10.3%減となり、前年同月比では9カ月連続の減少となった。7~9月では464.6万トン(前年同期比7.4%減)、4~9月では955.8万トン(同7.3%減)であった。
主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が321.9万トンと前月比9.8%、前年同月比3.4%のともに減。冷延広幅帯鋼が139.8万トンと前月比1.1%、前年同月比2.3%のともに減。鋼板が83.5万トンと前月比2.7%増だが、前年同月比3.0%減。小形棒鋼が68.0万トンと前月比6.8%増だが、前年同月比3.8%減。H形鋼が28.4万トンと前月比1.9%、前年同月比2.7%のともに減。冷延電気鋼帯が11.5万トンと前月比11.9%の2桁増だが、前年同月比2.0%減。線材が12.8万トンと前月比0.6%の微減で、前年同月比3.8%減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が149.2万トンと前月比0.6%の微減で、前年同月比10.1%の2桁減。冷延広幅鋼帯が23.8万トンと前月比3.2%増だが、前年同月比2.7%減。特殊鋼磨棒鋼・線類が17.9トンで前月比19.6%の2桁増だが、前年同月比3.2%減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が33.5万トンと前月比4.8%増だが、前年同月比5.7%減。特殊鋼熱間鋼管が15.8トンと前月比22.1%、前年同月比28.6%のともに大幅増となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が82.7万トンと前月比3.9%、前年同月比5.1%のともに減となった。
【9月の鉄鋼出荷】
9月の主要品種の出荷を品目別にみると、前月比で全主要品目が増を示し、前年同月比でも多くの品種が増を示した。普通鋼では、鋼帯が176.4万トンと前月比1.1%増で、前年同月比21.4%の大幅増。冷延広幅帯鋼が55.0万トンと前月比15.6%、前年同月比12.2%のともに2桁増。鋼板も89.4万トンと前月比19.9%、前年同月比12.0%のともに2桁増。小形棒鋼が98.0万トンと前月比8.1%、前年同月比2.2%のともに増。H形鋼が30.0万トンと前月比17.3%の2桁増で、前年同月比も4.5%増。線材が13.6万トンと前月比21.4%の大幅増で、前年同月比も14.3%の2桁増となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が115.0万トンと前月比14.2%の2桁増で、前年同月比も1.6%増。冷延広幅帯鋼が22.9万トンと前月比14.9%の2桁増で、前年同月比も3.6%増。特殊鋼磨棒鋼・線類が16.8万トンと前月比19.0%の2桁減だが、前年同月比3.9%減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が30.9万トンと前月比20.2%の大幅増で、前年同月比も3.8%増。特殊鋼熱間鋼管が12.8万トンと前月比11.9%の2桁増で、前年同月比も44.9%の大幅増となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が87.3万トンと前月比18.8%、前年同月比11.0%のともに2桁増となった。
【9月の石油生産】
9月の石油製品の生産では、重油以外の全主要品種で前月比、前年同月比とも減を示した。油種別みると重油が221.1万㎘と前月比3.6%、前年同月比4.7%のともに増。ガソリンが406.7万㎘と前月比10.4%の2桁減で、前年同月比も4.8%減。軽油が352.7万㎘と前月比0.3%の微減で、前年同月比も1.6%減。灯油が84.2万㎘と前月比11.1%、前年同月比16.3%のともに減。ナフサが129.4万㎘と前月比10.5%の2桁減で、前年同月比も8.2%減。ジェット燃料油が135.9万㎘と前月比14.7%の2桁減で、前年同月比も8.2%減。液化石油ガスが33.5万トンと前月比9.0%、前年同月比4.8%のともに減。アスファルトが22.2万トンと前月比16.5%の2桁減で、前年同月比1.1%減。潤滑油が17.9万㎘と前月比0.8%の微減で、前年同月比16.7%の2桁減となった。
【9月の石油出荷】
9月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,605.1万㎘と前月比1.0%、前年同月比0.6%のともに微増となった。
油種別では、重油が227.8万㎘と前月比8.0%増で、前年同月比0.4%の微増。ガソリンが432.6万㎘と前月比7.3%、前年同月比1.2%のともに減。軽油が389.2万㎘と前月比11.8%の2桁増で、前年同月も6.3%増。季節外れにも関わらず灯油が依然激増の87.7万㎘と前月比36.2%の大幅増で、前年同月比も3.2%増。ナフサが323.9万㎘と前月比7.6%、前年同月比4.3%のともに減。ジェット燃料油が143.6万㎘と前月比3.5%減だが、前年同月比2.0%増。液化石油ガスが45.0万トンと前月比5.5%減だが、前年同月比5.6%増。アスファルトが17.0万トンと前月比24.5%の大幅増だが、前年同月比5.9%減。潤滑油が21.7万㎘と前月比15.2%の2桁増だが、前年同月比4.2%減となった。
【9月のコークス・石灰石】
9月のコークスの生産は、264.8万トンと前月比4.5%減で、前年同月比0.7%の微減。出荷は69.5万トンと前月比7.3%増だが、前年同月比4.3%減となった。
9月の石灰石の生産は1,143.2万トンと前月比1.9%増だが、前年同月比3.9%の減。出荷は923.3万トンと前月比6.7%増だが、前年同月比1.5%減となった。
※添付資料
鉄鋼統計速報 2019年9月 Excel
資源エネルギー統計速報 2019年9月 Excel