令和2年5月4日(月)Vol.795
生産 2カ月連続低下
感染症急速拡大で
経産省 3月の鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済産業省は4月30日、3月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。それによると、3月の鉱工業生産は前月比3.7%の大幅低下で、2カ月連続の低下となった。感染症の影響は急速に拡大し、指数値は今基準内2位の低水準まで下がっている。経産省ではこれにより、3月の基調判断を「生産は低下している」と下方修正した。
生産 前月比2カ月連続低下
3月の鉱工業生産は季節調整済指数95.8で、前月比3.7%減と2カ月連続の前月比低下となった。3月当初の企業の生産計画では前月比5.3%低下で、これに含まれる例年のバイアスを補正した試算値では、最頻値で前月比3.1%(90%レンジで4.1~2.1%減)の低下となっていたが、試算値をやや下回る程度の低下幅となった。この低下幅は、昨年10月の4.0%減以来の大きさ。
生産は昨年10月、11月と2カ月連続で大きく低下した後、2カ月連続で上昇し、大幅な低下からの戻りがみられたが、2月は前月比0.3%減となり、中国からの部品供給の遅れ等、新型コロナウイルス感染症の影響も表れ始めていた。3月は2月から大幅に低下し、生産水準が一段と低下した。3月の季節調整済指数値95.8は、その前の底であった昨年11月の指数値97.7よりさらに低い水準となり、2013年1月以来の今基準内で2番目に低い水準まで低下している。
四半期ベースでみると、昨年の第4四半期の98.0から、本年第1四半期に98.4と上昇しましたが、本年第1四半期は1月、2月に昨年第4四半期の水準より上昇していたことの影響が大きく、足下の情勢を捉えれば3月の生産は大きく低下している。
3月は3業種が前月比低下
3月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇の結果だった。業種別には自動車工業、生産用機械工業、無機・有機化学工業を始め、幅広い業種で大幅な低下がみられた。
低下要因の最も大きかった自動車工業は前月比5.1%の低下で、2カ月連続での大幅な低下だが、普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品等が低下要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、工場停止等による生産調整が低下につながったようだ。
低下要因2位の生産用機械工業は前月比10.2%の低下で、2カ月連続の大幅な低下だったが、半導体製造装置、産業用ロボット等がその要因となっている。輸出も減少がみられるなど、新型コロナウイルス感染症の世界的な影響が表れている面もあるようだ。
低下要因3位の無機・有機化学工業は前月比11.0%の低下で、2カ月振りの低下だが、ポリエチレン、エチレン等が低下要因となっており、工場の定修も生産減の要因としてあったようだ。
出荷が生産の低下幅上回る
3月の鉱工業出荷は季節調整済指数値94.0、前月比5.0%減と、4カ月振りの大幅な低下となった。3月の出荷は生産より大きく低下する結果となったが、感染症の影響が世界的に広がり、輸出向け出荷も大幅に低下したことが影響したと考えられる。
業種別にみると、全体15業種のうち14業種が前月比低下、1業種が前月比上昇と、ほとんど®の業種で出荷が低下した。
低下要因業種としては、その度合いの大きい順に自動車工業、生産用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業等となっていた。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比3.8%の低下、最終需要財の出荷は前月比6.2%の低下だった。
最終需要財の出荷について内訳毎にみると、まず消費財については出荷に前月比5.1%減で、3カ月振りの低下となった。特に耐久消費財の出荷は普通乗用車を始め大きく低下し、前月比9.6%減と、2カ月連続の低下となった。非耐久消費財の出荷も前月比2.2%減と、3カ月振りの低下となった。
一方、設備投資に使われる財の資本財(輸送機械を除く)の出荷も、半導体製造装置等の低下により、前月比9.6%減と大きく低下し、2カ月振りの低下となった。
また、建設財も前月比5.3%減と低下し、2カ月振りの低下となった。
在庫が再び上昇
3月の鉱工業在庫は季節調整済指数値106.4、前月比1.9%と2カ月振りの上昇となった。業種別にみると15業種中で11業種が上昇、4業種が低下したが、上昇要因が大きかった業種は自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、生産用機械工業等が挙げられる。
在庫は、本年1月に今基準内の最高水準を更新した後、2月に一旦低下したが、3月に再び今基準内の最高水準を更新したが、3月は生産が低下したものの、出荷が生産より大きく低下したこともあり、在庫が増加したもの。
3月の基調判断 下方修正
3月の鉱工業生産は2カ月連続の前月比低下となった。新型コロナウイルス感染症の影響は、2月も一部の品目で部品供給への影響など表れていたが、3月は影響が拡大し、輸出も含め需要の減少が大きくみられたことで、生産の低下幅が拡大し、指数値も昨年11月を下回る、今基準内で第2位の低水準まで低下した。
一方、先行きに関しては、企業の生産計画で4月は上昇、5月は低下となっているが、企業の生産計画には元々上方バイアスがあることに加え、4月上旬に実施した調査結果の集計であるため、4月上旬以降の新型コロナウイルス感染症を巡る情勢変化の織り込みが不十分なことから、4月も低下の可能性は高いと考えられる。
このように生産は四半期ベースで上昇したとはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響の拡大により3月に大幅に低下し、指数値も一段と下がった。また、今後も低い水準が続くものと考えられ、こうした状況を踏まえて経産省では、鉱工業生産の3月の基調判断を「生産は低下している」と下方修正し、先行きも十分注視したいとしている。
4月調査の工業生産予測
経産省は4月30日、製造工業の4月生産計画調査結果を発表した。それによる、4月は前月比上昇、5月は4月比低下の計画だが、企業の生産計画に含まれる上方バイアスに加え、調査実施以後も新型コロナウイルス感染症の影響は拡大していることを考えると、4月も低下の可能性は高い。
4月上昇、5月低下の計画
4月上旬に実施した4月、5月の企業の生産計画予測調査の結果によると、4月の生産計画を調査結果そのままを集計すると、前月比1.4%の上昇を見込む結果になっているが、これには企業の生産計画に上方バイアスが含まれており、4月計画値に含まれるバイアスを例年の傾向に基づき補正して、4月の鉱工業生産の実績を推計試算してみると、最頻値では前月比1.3%程度の低下、90%の確率で収まる範囲で2.3~0.4%減の計算結果となっている。
一方、5月の生産計画は補正前の4月計画値から前月比1.4%低下する計画となっているが、今回の調査結果が4月当初の生産計画に基づくもので、4月上旬以降も新型コロナウイルス感染症の影響が世界的に拡大・継続しているのみならず、我が国でも新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が出され、全都道府県が緊急事態措置の対象となるなど、その影響は内外ともに広がっている。この調査には、そうした情勢変化の影響の織り込みが不十分で、また企業も先の見通しを立てることが難しくなっていことに留意して、今回の調査結果をみる必要がある。
4月は7業種上昇
4月の生産計画では全体11業種のうち7業種が前月比で上昇、4業種が低下となっている。生産用機械工業、電気・情報通信機械工業、化学工業等が上昇要因業種として挙げられ、輸送機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業、パルプ・紙・紙加工品工業が低下要因業種となっている。
5月は5業種低下
5月の生産計画では全体11業種のうち5業種が前月比で低下、6業種が上昇となっている。輸送機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業、汎用・業務用機械工業等が低下要因業種となっており、電機・情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業、生産用機械工業等が上昇要因業種となっている。
仮に企業の生産計画通りの前月比で生産されると、4月の鉱工業生産の指数値は97.1、5月の指数値は95.7となる。
一方、4月計画に含まれるバイアスを例年の傾向に基づき補正すると、4月は最頻値で前月1.3%減となり、その場合の指数値は94.6となるが、今回の調査結果には、新型コロナウイルス感染症を巡る情勢変化の影響の織り込みが不十分なため、例年の傾向より下振れする可能性もある。
鉱工業生産は、3月に大幅に低下したが、企業の生産計画からは、4月も低下の可能性は高く、5月も低下が見込まれる状況。経産省では、生産が厳しい状況を続けると考えられ、今後も生産動向を引き続き注視したいとしている。
令和2年5月4日(月)Vol.796
燃料油販売 6カ月連続前年比減
エネ庁 3月の石油統計速報発表
資源エネルギー省は4月30日、3月の石油統計速報を発表した。
1.原油の動向
3月の原油輸入量は1,540万㎘、前年同月比97.3%と3カ月連続で前年を下回った。輸入量の多い順にみると次の通り。
(1)アラブ首長国連邦(596万㎘、前年同月比171.8%)
(2)サウジアラビア(537万㎘、同85.6%)
(3)カタール(151万㎘、同107.9%)
(4)クウェート(144万㎘、同134.7%)
(5)ロシア(45万㎘、同55.5%)となっている。
3月の中東依存度は93.7%で、前年同月に比べ3.2ポイント増と前年を上回った。
2.燃料油の生産
燃料油の生産は1,360万㎘、前年同月比91.0%と5カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、灯油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、軽油及びA重油は前年同月を下回った。
3.燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は248万㎘、前年同月比106.6%と前年を上回った。輸出は286万㎘、前年同月比96.4%と前年を下回った。
4.燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,308万㎘、前年同月比88.9%と6カ月連続で前年を下回った。油種別にみても、全油種(ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油、軽油、A重油及びB・C重油)で前年同月を下回った。
5.燃料油の在庫
燃料油の在庫は874万㎘、前年同月比101.1%と前年を上回った。油種別にみると、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油及び軽油は前年同月を上回ったが、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要 令和2年3月 Excel
令和2年5月4日(月)Vol.797
粗鋼生産 3カ月振り減
燃料油生産 5カ月連続前年比減
経産省 3月の生産動態統計速報発表
経済産業省は4月30日、3月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は794.9万トンと前月比0.4%の微増だが、前年同月比12.5%の2桁減となり、前年同月比で3カ月振りの減となった。
また、石油製品生産量は燃料油計が1,359.5万㎘と前月比3.1%増だが、前年同月比9.0%の減となり、前年同月比で5カ月連続の減となった。
【3月の鉄鋼生産】
3月の主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が347.1万トンと前月比5.6%増だが、前年同月比2.5%減。冷延広幅帯鋼が143.5万トンと前月比5.5%増だが、前年同月比9.0%減。鋼板が75.1万トンと前月比3.9%減で、前年同月比17.5%の2桁減。小形棒鋼が65.4万トンと前月比2.9%増だが、前年同月比14.6%の2桁減。H形鋼が28.7万トンと前月比1.5%減で、前年同月比22.3%の大幅減。冷延電気鋼帯が10.6万トンと前月比6.7%増だが、前年同月比4.9%減。線材が13.3万トンと前月比2.5%増だが、前年同月比9.3%減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が146.4万トンと前月比1.2%増だが、前年同月比17.9%の2桁減。冷延広幅鋼帯が26.7万トンと前月比13.6%の2桁増で、前年同月比も2.3%増。特殊鋼磨棒鋼・線類が16.6トンと前月比0.6%の微減で、前年同月比12.0%の2桁減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が31.8万トンと前月比5.9%増だが、前年同月比15.2%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が16.6トンと前月比0.6%の微減で、前年同月比12.0%の2桁減となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が86.0万トンと前月比8.9%増だが、前年同月比9.2%減となった。
【3月の鉄鋼出荷】
3月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼ではと鋼帯が183.7万トンと前月比8.3%、前年同月比7.5%のともに増。冷延広幅帯鋼が55.4万トンと前月比14.0%の2桁増だが、前年同月比7.6%減。鋼板が84.4万トンと前月比15.2%の2桁増だが、前年同月比10.0%の2桁減。小形棒鋼が66.3万トンと前月比6.1%増だが、前年同月比11.4%の2桁減。H形鋼が31.0万トンと前月比13.7%の2桁増だが、前年同月比17.4%の2桁減。線材が13.4万トンと前月比10.1%の2桁増だが、前年同月比4.9%減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が106.1万トンと前月比3.2%増だが、前年同月比15.7%の2桁減。冷延広幅帯鋼が22.1万トンと前月比0.4%の微減で、前年同月比8.9%減。特殊鋼磨棒鋼・線類が15.5万トンと前月比1.4%減で、前年同月比11.9%の2桁減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が29.8万トンと前月比15.7%の2桁増だが、前年同月比18.9%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が12.1万トンと前月比4.5%、前年同月比5.3%のともに減となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が84.6万トンと前月比5.5%増だが、前年同月比9.7%減となった。
【3月の石油生産】
3月の石油製品の生産を油種別みると重油が262.0万㎘と前月比5.2%減だが、前年同月比1.8%増。ガソリンが407.1万㎘と前月比10.1%の2桁増だが、前年同月比6.2%減。軽油が330.0万㎘と前月比6.5%増だが、前年同月比9.4%減。灯油が137.4万㎘と前月比7.3%増で、前年同月比も11.6%の2桁増。ナフサが129.1万㎘と前月比2.4%増だが、前年同月比24.2%の大幅減。コロナウィリスジェットの世界的な蔓延による飛行機の減便で燃料油が93.8万㎘と前月比10.4%の2桁減で、前年同月比も35.6%の大幅減。液化石油ガスが27.0万トンと前月比1.9%増だが、前年同月比18.2%の2桁減。アスファルトが24.9万トンと前月比12.5%の2桁増だが、前年同月15.7%の2桁減。潤滑油が19.5㎘と前月比7.2%増だが、前年同月比9.3%減となった。
【3月の石油出荷】
3月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,59.8万㎘と前月比4.1%、前年同月比7.7%のともに減となった。
油種別では、重油が282.4万㎘と前月比5.3%減だが、前年同月比13.3%の2桁増。ガソリンが427.2万㎘と前月比7.2%増だが、前年同月比3.0%減。軽油が342.0万㎘と前月比1.4%増だが、前年同月11.2%の2桁減。不需要期入りした灯油が139.3万㎘と前月比20.5%の大幅減だが、前年同月比2.0%増。ナフサが313.2万㎘と前月比6.8%減で、前年同月比18.1%の2桁増。ジェット燃料油が91.7万㎘と前月比22.3%、前年同月比31.6%のともに大幅減。液化石油ガスが38.2万トンと前月比1.9%減で、前年同月比17.0%の2桁減。アスファルトが17.9万トンと前月比11.6%の2桁増だが、前年同月比17.5%の2桁減。潤滑油が19.7万㎘と前月比0.5%の微減で、前年同月比10.5%の2桁減となった。
【3月のコークス・石灰石】
3月のコークスの生産は、274.2万トンと前月比5.7%増だが、前年同月比3.4%減。出荷は68.3万トンと前月比4.8%増だが、前年同月比5.6%減となった。
3月の石灰石の生産は、1,190.3万トンと前月比4.0%増だが、前年同月比5.0%減。出荷は957.0万トンと前月比7.2%増だが、前年同月比4.2%減となった。
※添付資料
鉄鋼統計速報 令和2年3月 Excel
資源エネルギー統計速報 令和2年3月 Excel