令和2年12月1日(火)Vol.810
生産 5カ月連続上昇
経産省 10月の鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済産業省は11月30日、10月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。10月の鉱工業生産は、前月比3.8%の上昇となり、国内外の経済活動の回復が進んできていることに伴い、5カ月連続での上昇となった。経産省では10月の基調判断を「生産は持ち直している」と据え置いた。
10月の鉱工業生産は季節調整済指数95.0、前月比3.8%と、5カ月連続の前月比上昇となった。10月当初の企業の生産計画に含まれる上方バイアスを補正した試算値では、前月比1.4%の上昇(90%レンジではマイナス0.2%~3.0%の間)となっていたが、実際の10月の生産は試算値の90%レンジも上回り、上昇幅は今基準内で3番目に大きい、勢いのある上昇となった。
生産は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2月から5月まで低下を続け、指数水準も大幅に低下していたが、6月以降は一転、上昇が続いている。ただ、生産水準は未だ低く、今後のさらなる回復が期待される。
12業種上昇、3業種低下
10月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち12業種が前月比上昇、3業種が前月比低下の結果だった。
10月は汎用・業務用機械工業、自動車工業、電気・情報通信機械工業等が上昇に寄与した。
上昇寄与の最も大きかった汎用・業務用機械工業は、前月比17.9%の上昇で、2カ月振りでの大幅な上昇となった。コンベヤ、一般用蒸気タービン、運搬用クレーン等が上昇要因となっている。10月は概して国内外向けとも需要の増加が上昇の要因としてあるようだ。
上昇寄与2位の自動車工業は、前月比6.8%の上昇で、5カ月連続の大幅な上昇だった。普通乗用車や普通トラック等が上昇要因となっている。自動車工業の指数値は10月が104.7となり、感染症拡大前の指数値・1月の104.3を上回る水準まで生産が回復した。前者については、輸出向けの生産増がみられ、挽回生産のために増産されたようだ。後者についても、工場の生産ラインの稼働率を戻しての増産があったようだ。
上昇寄与3位の電気・情報通信機械工業は前月比8.4%の上昇で、2カ月連続の大幅な上昇だった。ノート型パソコンや超音波応用装置等が上昇要因となっている。ノート型パソコンについては、需要増に伴い増産されたようだ。電気・情報通信機械工業についても、10月の指数値が95.3と、感染症拡大前の指数値・1月の94.6を上回る水準まで回復した。ただ、生産水準自体は未だ低い状況にある。
出荷 5カ月連続上昇
10月の鉱工業出荷は季節調整済指数94.7、前月比4.6%と、5カ月連続の上昇となった。国内外での経済活動の回復が進んできていることに伴い、国内外で需要の回復がみられ、出荷の上昇につながったものと考えられる。
業種別にみると、全体15業種のうち14業種が上昇、1業種が低下となった。
上昇寄与業種は、寄与度の大きい順に自動車工業、汎用・業務用機械工業、電気・情報通信機械工業等となった。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比3.4%の上昇、最終需要財の出荷は前月比5.8%の上昇だった。
最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財は出荷が前月比1.5%と、5カ月連続の上昇となった。特に耐久消費財の出荷は普通乗用車の大幅上昇の影響が大きく、前月比10.7%と5カ月連続の上昇となった。非耐久消費財の出荷は前月比マイナス3.2%と、2カ月振りの低下となった。
一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械除く)の出荷は、前月比13.4%の大幅上昇となり、2カ月連続で上昇した。
また、建設財は前月比6.5%と、2カ月振りの上昇となった。
各財の出荷の動きを通してみると本年6月以降、出荷の回復を牽引していた耐久消費財や生産財に比べ、設備投資に使われる資本財(輸送機械除く)は8月まで低下傾向が続き、回復が遅れていたが、9月、10月と連続上昇となり、回復の兆しを感じさせている。
在庫 7カ月連続低下
10月の鉱工業在庫は季節調整済指数95.9、前月比マイナス1.6%と、7カ月連続の低下となった。在庫は今基準で最低水準となった2014年3月の95.3以来の水準まで大幅に低下している。
業種別にみると、15業種のうち13業種が低下、2業種が上昇となった。低下寄与が大きかった業種としては、無機・有機化学工業、鉄鋼・非鉄金属工業、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品除く)等が挙げられる。
基調判断「持ち直し」を据置
10月の鉱工業生産は、5カ月連続の前月比上昇となった。生産は新型コロナウイルス感染症の影響で、2月から5月まで低下が続いていたが、6月以降は一転、上昇が続いている。
この背景には6月以降、国内外での経済活動の回復が進んで来ていることに伴い需要の回復等も進み、10月も生産が上昇したと考えられる。
また、先行きに関しては企業の生産計画で11月が上昇、12月が低下となっている。11月の生産計画は、企業が10月に実現出来なかった生産を挽回し、ほぼ取り戻す計画となっており、12月は低下も見込まれるにせよ、生産は11月まで上昇が続くと期待される。
こうした状況を踏まえ、経産省では鉱工業生産の10月の基調判断は、「生産は持ち直している」を据え置く。他方で、最近の感染症の感染再拡大が内外経済を下振れさせるリスクにも注意する必要があり、11月以降の生産の動向についても十分注意してみていきたいとしている。
製造工業生産計画
11月・12月の生産予測調査
本年11月上旬に実施した11月、12月の企業の生産予測調査の結果は、次の通りである。
11月の生産計画については、調査結果そのままを集計すると、前月比2.7%の上昇を見込むという結果になっている。10月調査の時点では、11月の生産上昇の勢いが緩やかになると見込まれていたが、11月調査では予測修正率は−0.1%とほぼ横バイで、企業は10月に実現できなかった生産を11月にほぼ取り戻す計画となっている。
ただ、この企業の生産計画には上方バイアスが含まれていおり、これを過去の傾向に基づき補正して11月の鉱工業生産の実績を推計試算してみると、最頻値では前月比0.4%程度の上昇、90%の確率で収まる範囲は前月比マイナス1.3%~2.1%の間、という計算結果となっている。
一方、12月の生産計画は補正前の11月計画値から前月比−2.4%低下する計画となっている。11月の生産が計画より低下すると、企業はその分を取り戻すために12月に増産することもあるため、実際の生産がどうなるかについては不確実性もあるが、生産計画に含まれる上方バイアスを考えると、12月は低下に転ずる可能性の方が高いと考えられる。
このように企業の生産計画からは、鉱工業生産が11月まで上昇し続ける可能性の方が高いと考えられるが、12月にはこれまでの連続上昇も一服し、低下することになりそうだ。また、このところ国内外で感染症の感染再拡大が進んでおり、これによる内外経済の下振れリスクにも注意する必要がある。
11月 8業種上昇、3業種低下
11月の生産計画では、全体11業種のうち8業種が前月比で上昇、3業種で低下の計画となっている。上昇寄与度の高い順に生産用機械工業、電子部品・デバイス工業、化学工業等となり、低下寄与業種は輸送機械工業、電気・情報通信機械工業、石油製品工業となっている。
12月 7業種低下、4業種上昇
12月の生産計画では、全体11業種のうち7業種が前月比で低下、4業種が上昇となっている。汎用・業務用機械工業、輸送機械工業、生産用機械工業等が低下寄与業種で、上昇寄与業種は化学工業、鉄鋼・非鉄金属工業、石油製品工業等となっている。
11月・12月の通期計画
11月、12月の2カ月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになる。
10月まで生産の上昇を牽引してきた輸送機械工業については11月、12月と低下に転じ、これまでの勢いある上昇傾向も一服する計画となっている。
仮に企業の生産計画通りの前月比で生産されると、11月の鉱工業生産の指数値は97.6、12月の指数値は95.3となる。
一方、11月計画に含まれるバイアスを過去の傾向に基づき補正すると、最頻値で前月比0.4%上昇となり、その場合の指数値は95.4となる。
仮に企業の生産計画通りに生産されても、11月の指数値97.6は、3月の指数値95.8を上回る水準だが、感染症の拡大以前の生産水準である1月の99.8までは至っていない。生産は11月まで上昇を続けることが期待されるが、生産の上昇基調にも先行きは一服感がみえていることを考えると、感染症拡大前の生産水準への回復には、まだ時間を要することを考慮しておいた方がよさそうだ。
生産は、今後も緩やかに上昇を続けて行くとしても、当面低い水準が続くと考えられる。また、感染症による内外経済の下振れリスクにも注意する必要がある。
令和2年12月1日(火)Vol.811
前年比で粗鋼8カ月、燃料油12カ月連続減
経産省 10月の生産動態統計速報発
経済産業省は11月30日、10月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は719.8万トンと前月比11.0%の2桁増だが、前年同月比11.7%の2桁減となった。前月よりもやや持ち直したとはいえ、前年同月比では8カ月連続の減で、年産ベースに引き直すと依然8,638.0万㌧台の低水準にある。主要品種別にみても線材、鋼矢板、H型鋼を除き軒並み前年同月比2桁または大幅減少を示しており、新型コロナウイルス蔓延による世界同時不況の中で“鉄冷えが”止まらない。
また、石油製品生産量は燃料油計が1,110.0万㎘と前月比3.7%増だが、前年同月比14.1%と依然2桁の減を示しており、前年同月比で12カ月連続の減となった。
【10月の鉄鋼生産】
10月の銑鉄生産は511.6万トンと前月比10.1%増だが、前年同月比16.1%減となり、前年同月比では8カ月連続の減少となった。
粗鋼生産は720.0万トンと前月比11.0%増だが、前年同月比11.7%減となり、前年同月比では8カ月連続の減少となった。10月の1日当たり粗鋼生産は23.2万トンで、9月の同21.6万トンと比べ7.5%増となった。
炉別生産では、転炉鋼が530.2万トンと前月比11.5%増だが、前年同月比13.1%減、電炉鋼が189.8万トンと前月比9.6%増だが、前年同月比7.3%減となり、前年同月比では転炉鋼が8カ月連続の減少、電炉鋼が20カ月連続の減少となった。
鋼種別生産では、普通鋼が573.2万トンと前月比11.4%増だが、前年同月比8.7%減、特殊鋼が146.8万トンと前月比9.8%増だが、前年同月比21.7%減となり、前年同月比では普通鋼は8カ月連続の減少、特殊鋼は23カ月連続の減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は646.7万トンと前月比10.6%増だが、前年同月比11.3%減となり、前年同月比では28カ月連続の減少となった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は508.2万トンと前月比8.4%増だが、前年同月比11.6%減となり、前年同月比では8カ月連続の減少となった。
特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は138.5万トンと前月比19.6%増だが、前年同月比10.6%減となり、前年同月比では22カ月連続の減少となった。
10月の主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が300.3万トンと前月比11.3%の2桁増だが、前年同月比12.8%の2桁減。冷延広幅帯鋼が123.4万トンと前月比11.3%の2桁増だが、前年同月比10.1%の2桁減。鋼板が68.1万トンと前月比2.9%減で、前年同月比20.4%の大幅減。小形棒鋼が65.6万トンと前月比10.2%の2桁増だが、前年同月比8.6%減。H形鋼が29.5万トンと前月比8.8%、前年同月比6.7%のともに増。冷延電気鋼帯が8.8万トンと前月比2.4%増だが、前年同月比10.2%の2桁減。線材が13.1万トンと前月比9.9%増で、前年同月比21.9%の大幅増となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が138.4万トンと前月比19.4%の2桁増だが、前年同月比10.7%の2桁減。冷延広幅鋼帯が21.8万トンと前月比23.3%の大幅増だが、前年同月比6.3%減。特殊鋼磨棒鋼・線類が17.1トンと前月比10.2%の2桁増だが、前年同月比2.3%減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が28.9万トンと前月比1.7%増だが、前年同月比14.4%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が8.2トンと前月比12.2%の2桁増だが、前年同月比34.4%と3分の1の減となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が74.4万トンと前月比20.0%の大幅増だが、前年同月比5.8%減となった。
【10月の鉄鋼出荷】
10月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼では鋼帯が157.9万トンと前月比8.5%増だが、前年同月比3.7%減。冷延広幅帯鋼が41.7万トンと前月比1.5%減で、前年同月比14.3%の2桁減。鋼板が72.3万トンと前月比10.1%の2桁増だが、前年同月比11.9%の2桁減。H形鋼が29.3万トンと前月比6.1%増で、前年同月比0.9%の微増。線材が13.2万トンと前月比16.0%、前年同月比17.5%のともに2桁増となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が100.3万トンと前月比18.6%の2桁増だが、前年同月比7.5%減。冷延広幅帯鋼が20.5万トンと前月比38.6%の大幅増だが、前年同月比5.3%減。特殊鋼磨棒鋼・線類が16.3万トンと前月比11.1%の2桁増だが、前年同月比1.0%減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が26.0万トンと前月比5.1%増だが、前年同月比11.4%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が6.5万トンと前月比14.1%の2桁減で、前年同月比43.1%の大幅減となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が73.0万トンと前月比18.7%の2桁増だが、前年同月比9.3%減となった。
【10月の石油生産】
10月の石油製品の生産を油種別みると、重油が209.7万㎘と前月比14.1%の2桁増だが、前年同月比9.2%減。ガソリンが375.9万㎘と前月比0.5%の微減で、前年同月比4.1%減。軽油が271.2万㎘と前月比0.8%の微増だが、前年同月比16.3%の2桁減。灯油が96.8万㎘と前月比26.6%の大幅増で、前年同月比4.6%増。ナフサが105.1万㎘と前月比6.7%減で、前年同月比21.0%の大幅減。世界的に減便による需要減のジェット燃料油が51.2万㎘と前月比0.4%の微増だが、前年同月比では依然57.4%の記録的な大幅減。液化石油ガスが21.7万トンと前月比18.7%、前年同月比16.3%のともに2桁減。アスファルトが14.5万トンと前月比12.0%、前年同月17.9%のともに2桁減。潤滑油が15.4万㎘と前月比8.1%減で、前年同月比21.8%の大幅減となった。
【10月の石油出荷】
10月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,389.2万㎘と前月比8.6%増だが、前年同月比9.6%減となった。
油種別では、重油が224.0万㎘と前月比18.6%の2桁増だが、前年同月比3.9%減。ガソリンが405.3万㎘と前月比1.1%増だが、前年同月比1.8%減。軽油が299.7万㎘と前月比0.7%の微減で、前年同月比12.0%の2桁減。ナフサが289.3万㎘と前月比4.0%増だが、前年同月比12.6%の2桁減。ジェット燃料油が52.5万㎘と前月比16.6%の2桁減で、前年同月比57.6%と2分の1を越える大幅減。液化石油ガスが34.5万トンと前月比5.3%減で、前年同月比13.3%の2桁減。アスファルトが18.6万トンと前月比14.2%、前年同月比15.3%のともに2桁増。潤滑油が19.2万㎘と前月比5.7%増だが、前年同月比2.7%減となった。
【10月のコークス・石灰石】
10月のコークスの生産は、243.7万トンと前月比5.9%増だが、前年同月比10.4%の2桁減。出荷は75.2万トンと前月比20.8%の大幅増だが、前年同月比2.3%減となった。
10月の石灰石の生産は、1,180.9万トンと前月比14.0%の2桁増で、前年同月比0.7%の微増。出荷は944.0万トンと前月比15.9%の2桁増だが、前年同月比1.5%減となった。
※添付資料
鉄鋼統計速報 令和2年10月 Excel
資源エネルギー統計速報 令和2年10月 Excel
令和2年12月1日(火)Vol.812
国内販売 13カ月連続前年割れ
エネ庁 10月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は11月30日、10月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
1.原油の動向
10月の原油輸入量は1,115万㎘、前年同月比81.9%と10カ月連続で前年を下回った。輸入量の多い順にみると次のようになっている。
(1)サウジアラビア(473万㎘、前年同月比107.7%)
(2)アラブ首長国連邦(347万㎘、同67.8%)
(3)クウェート(85万㎘、同66.7%)
(4)カタール(79万㎘、同78.2%)
(5)ロシア(47万㎘、同80.6%)
10月の中東依存度は90.2%で前年同月に比べ1.3ポイント減と2カ月連続で前年を下回った。
2.燃料油の生産
燃料油の生産は1,110万㎘、前年同月比85.9%と12カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、灯油及びA重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、軽油及びB・C重油は前年同月を下回った。
3.燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は280万㎘、前年同月比97.8%と6カ月振りに前年を下回った。輸出は124万㎘、前年同月比49.1%と8カ月連続で前年を下回った。
4.燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,260万㎘、前年同月比96.4%と13カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、灯油及びA重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、軽油及びB・C重油は前年同月を下回った。
5.燃料油の在庫
燃料油の在庫は1,049万㎘、前年同月比102.4%と2カ月連続で前年を上回った。油種別にみると、ガソリン、灯油、軽油及びA重油は前年同月を上回ったが、ナフサ、ジェット燃料油及びB・C重油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要速報 2020年10月 Excel