令和3年1月13日(水)Vol.813
基調判断「生産持ち直し」で据置
経産省 11月の鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済産業省は12月28日、11月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。それによると生産は前月比横ばいで、前月まで生産上昇をけん引してきた自動車工業が6カ月振りの低下となったものの、回復の遅れていた多くの業種で回復傾向が続いている。経産省では11月の基調判断を「生産は持ち直している」と据え置いている。
11月生産 前月比横ばい
11月の鉱工業生産は、季節調整済指数95.2、前月比は横ばいとなった。11月当初の企業の生産計画に含まれる上方バイアスを補正した試算値では、前月比0.4%の上昇(90%レンジでは-1.3%~2.1%の間)となっていたが、実際の11月の生産も試算値に近い水準となった。
生産は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2月から5月まで低下が続き、指数水準も大幅に低下していたところから6月以降は一転、上昇が続いていたが、11月は前月比横ばいとなり、5カ月続いていた上昇も一服することとなった。生産水準は、感染症拡大前の1月(指数値99.8)と比べても未だ低く、今後も回復を期待したいところだ。
前月比 9業種上昇、5業種低下
11月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち9業種が前月比上昇、5業種が前月比低下、1業種が横ばいという結果だった。
11月は自動車工業、無機・有機化学工業、プラスチック製品工業等が低下に寄与したものの、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業等が上昇に寄与していかた。
主な上昇寄与業種についてみてみると、上昇寄与の最も大きかった生産用機械工業は前月比6.5%の上昇で、3カ月連続の上昇だった。半導体製造装置、個装・内装機械、金型等が上昇要因となっている。
上昇寄与2位の汎用・業務用機械工業は前月比4.8%の上昇で、2カ月連続の上昇だった。一般用蒸気タービンや水管ボイラ、汎用内燃機関等が上昇要因となっている。汎用・業務用機械工業については、11月の指数値が100.1と、感染症拡大前の1月指数値100.1に並ぶ水準まで回復した。
上昇寄与3位の鉄鋼・非鉄金属工業は、前月比3.7%の上昇で、5カ月連続の大幅な上昇だった。普通鋼鋼帯や粗鋼等が上昇要因となっている。
主な低下寄与業種についてみると、低下寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比4.7%の低下で、6カ月振りの低下だったが、普通乗用車、小型乗用車等が低下要因となっている。
低下寄与2位の無機・有機化学工業は、前月比1.7%の低下で、2カ月振りの低下、フェノールやポリエチレン等が低下要因となっている。
低下寄与3位のプラスチック製品工業は、前月比1.2%の低下で、6カ月振りの低下だった。プラスチック製機械器具部品や中空成形プラスチック製容器等が低下要因となっている。
出荷 前月比-09%で6カ月振り低下
11月の鉱工業出荷は季節調整済指数94.0、前月比0.9%低下と、6カ月振りの低下となった。出荷に関しても6月以降、5カ月連続で上昇が続いていたが、11月は連続上昇も一服した形となった。
業種別にみると、全体15業種のうち11業種が低下、4業種が上昇となった。
低下寄与業種としては、寄与度の大きい順に自動車工業、電気・情報通信機械工業、石油・石炭製品工業等となっている。特に6月以降、10月まで5カ月連続で勢いのある上昇を続けて来た自動車工業で上昇傾向が一服し、11月は低下に転じたことが、出荷の低下の大きな要因となっている。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比0.4%の低下、最終需要財の出荷は前月比1.8%の低下だった。
最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、消費財は前月比3.2%減と、6カ月振りの低下となった。そのうち耐久消費財の出荷については、前月比6.3%減と、6カ月振りの低下となった。非耐久消費財の出荷は前月比1.8%減と、2カ月連続の低下となった。
一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械除く)の出荷は、前月比2.6%の上昇となり、3カ月連続で上昇した。
また、建設財は、前月比3.4%減と、2カ月振りの低下となった。
各財の出荷の動きを通してみると6月以降、出荷の回復をけん引していた耐久消費財や生産財など、多くの財が11月低下したが、他方、8月まで低下傾向が続き回復が遅れていた設備投資に使われる資本財(輸送機械除く)は9月以降、3カ月連続での上昇となり、内外での設備投資の回復の兆しも感じさせる。今後とも回復していくのかが注目されるところだ。
• 在庫は8か月連続低下
在庫 8カ月連続低下
11月の鉱工業在庫は季節調整済指数94.6、前月比1.1%減と、8カ月連続の低下となった。在庫は、今基準内で最低水準まで大幅に低下している。
業種別にみると、15業種のうち11業種が低下、4業種が上昇となった。低下寄与が大きかった業種は無機・有機化学工業、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品除く)、生産用機械工業等が挙げられる。
在庫循環図をみると、11月時点までの数値ではあるが、2020年第4四半期に入り、意図せざる在庫減局面まで在庫調整が進んでいる様子がみられる。
• 11月の生産の基調判断は、「持ち直している」を据え置き
基調判断「持ち直し」で据置
11月の鉱工業生産は、前月比横ばいとなった。生産は新型コロナウイルス感染症の影響で、2月から5月まで低下が続いた後、6月以降は一転、上昇が続いていたところだが、11月はこの連続上昇も一服することとなった。
この背景には6月以降、勢いのある上昇が続き、鉱工業生産全体の上昇をけん引して来た自動車工業の生産が11月に低下したことがある。ただ他方で、他の多くの業種は回復傾向が続いており、鉱工業生産全体でも、均してみれば回復傾向が続いていると考えられる。
また、先行きは企業の生産計画で12月が低下、1月が上昇となっており、12月は一旦低下が見込まれるとはいえ、1月には再び大幅な上昇を見込む計画となっている。
こうした状況を踏まえ、経産省では鉱工業生産の11月の基調判断を「生産は持ち直している」と据え置いている。他方で、最近の感染症拡大による社会経済活動への影響が内外経済を下振れさせるリスクにも注意する必要があり、12月以降の生産の動向についても十分注意してみていきたいともしている。
製造工業予測指数
製造業12月低下、1月上昇予測
12月上旬に実施した12月、1月の企業の生産予測調査の結果によれば、12月の生産計画は、調査結果そのままを集計すると、前月比1.1%の低下を見込むという結果になっている。元々11月調査の時点でも、12月は生産低下が見込まれていたが、12月調査では予測修正率が0.7%と上方修正されており、前月比では低下とはいえ、前月の調査結果より高い生産水準にとどまる強気の計画となっている。
ただ、この企業の生産計画には上方バイアスが含まれており、12月計画値に含まれるバイアスを過去の傾向に基づき補正して、12月の鉱工業生産の実績を推計試算してみると、最頻値では前月比2.3%程度の低下、90%の確率で収まる範囲は前月比4.0%減~0.6%減の間、という計算結果となっている。
一方、来年1月の生産計画は、補正前の12月計画値から前月比7.1%と、大幅に上昇する計画となっている。実際の1月の生産については不確実性もあるが、生産計画に含まれる上方バイアスを考えても、1月は上昇の可能性の方が高いと考えられる。
このように企業の生産計画からは、鉱工業生産はが12月に一旦低下するとしても、1月に再び上昇することになりそうだ。ただ、最近の感染症拡大による社会経済活動への影響が内外経済を下振れさせるリスクに十分注意する必要がある。
12月計画 7業種低下、4業種上昇
12月の生産計画では、全体11業種のうち7業種が前月比で低下、4業種で上昇の計画となっている。低下寄与度の高い順に輸送機械工業、汎用・業務用機械工業、電気・情報通信機械工業等となっている。
他方、上昇寄与業種は化学工業、鉄鋼・非鉄金属工業、石油製品工業等となっている。
1月計画 全業種上昇
1月の生産計画では、全体11業種のうち11業種すべてが前月比で上昇となっている。上昇寄与が大きかった業種は生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業等だ。
12〜1月の通期生産計画
12月と1月の2カ月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになる。
10月まで生産の上昇をけん引してきた輸送機械工業については、1月までみても生産はさほど上昇しないものの、代わって電子部品・デバイス工業、生産用機械工業、化学工業等、多くの業種で上昇することにより、生産の上昇をけん引する形となっている。
仮に企業の生産計画通りの前月比で生産されると、12月の鉱工業生産の指数値は94.2、1月の指数値は100.9となる。
一方、12月計画に含まれるバイアスを過去の傾向に基づき補正すると、最頻値で前月比2.3%低下となり、その場合の指数値は93.0となる。
経産省では、仮に企業の生産計画通りに生産されると、1月の指数値100.9は、感染症の拡大以前の2020年1月の生産水準99.8を超えることとなるが、企業の生産計画には上方バイアスが含まれることを考えると、2021年1月までにそこまでの水準には到達するかは、不透明感も大きいと考えられる。また、最近の感染症拡大による内外経済の下振れリスクにも十分注意する必要があるとしている。
令和3年1月13日(水)Vol.814
販売 14カ月連続前年比割れ
エネ庁 11月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は12月28日、11月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
1.原油の動向
11月の原油輸入量は1,099万㎘、前年同月比78.3%と11カ月連続で前年を下回った。輸入量の多い順にみると次の通り。
(1)サウジアラビア(477万㎘、前年同月比89.3%)
(2)アラブ首長国連邦(302万㎘、同70.1%)
(3)カタール(114万㎘、同117.7%)
(4)クウェート(100万㎘、同79.9%)
(5)ロシア(51万㎘、同62.5%)
11月の中東依存度は93.0%で、前年同月に比べ3.9ポイント増と3カ月振りに前年を上回った。
2.燃料油の生産
燃料油の生産は1,175万㎘、前年同月比84.3%と13カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、灯油及びA重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、軽油及びB・C重油は前年同月を下回った。
3.燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は326万㎘、前年同月比117.1%と前年を上回った。輸出は141万㎘、前年同月比51.9%と9カ月連続で前年を下回った。
4.燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,320万㎘、前年同月比94.9%と14カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、灯油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、軽油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。
5.燃料油の在庫
燃料油の在庫は1,081万㎘、前年同月比104.0%と3カ月連続で前年を上回った。油種別にみると、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油及びA重油は前年同月を上回ったが、ジェット燃料油及びB・C重油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要 令和2年11月 Excel
令和3年1月13日(水)Vol.815
前年比で粗鋼9カ月、燃料油13カ月連続減
経産省 11月の生産動態統計速報発
経済産業省は12月28日、11月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は726.2万トンと前月比0.9%の微増だが、前年同月比5.9%減となった。前月より若干持ち直したとはいえ、前年同月比では9カ月連続の減で、年産ベースに引き直すと依然8,715.0万㌧台の低水準にある。新型コロナウイルス蔓延による世界同時不況の中で“鉄冷えが”止まらない。
また、石油製品生産量は燃料油計が1,174.8万㎘と前月比5.8%増だが、前年同月比15.7%と依然2桁の減を示しており、前年同月比で13カ月連続の減となった。
【11月の鉄鋼生産】
銑鉄生産は513.5万トンと前月比0.4%増だが、前年同月比11.6%減となり、前年同月比では9カ月連続の減となった。
粗鋼生産は726.2万トンと前月比0.9%増だが、前年同月比5.9%減となり、前年同月比では9カ月連続の減となった。11月の1日当たり粗鋼生産は24.2万トンで、10月の同23.2万トン比4.3%増となった。
炉別生産では、転炉鋼が528.8万トンと前月比0.3%、前年同月比7.5%のともに減。電炉鋼が197.7万トンと前月比4.3%増だが、前年同月比1.0%減となり、前年同月比で転炉鋼は9カ月連続の減、電炉鋼は21カ月連続の減となった。
鋼種別生産では、普通鋼が574.0万トンと前月比0.2%増だが、前年同月比2.5%減。特殊鋼が152.4万トンと前月比3.8%増だが、前年同月比16.6%減となり、前年同月比では普通鋼は9カ月連続の減少、特殊鋼は24カ月連続の減となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は653.3万トンと前月比1.1%増だが、前年同月比6.2%減となり、前年同月比では29カ月連続の減となった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は515.3万トンと前月比1.4%増だが、前年同月比4.8%減となり、前年同月比では9カ月連続の減となった。
特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は138.0万トンと前月比0.3%、前年同月比10.9%のともに減となり、前年同月比では23カ月連続の減となった。
11月の主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が310.4万トンと前月比3.4%増だが、前年同月比2.7%減。冷延広幅帯鋼が130.0万トンと前月比5.4%増だが、前年同月比4.1%減。鋼板が66.3万トンと前月比2.7%減で、前年同月比17.7%の2桁減。小形棒鋼が69.1万トンと前月比5.4%、前年同月比1.1%のともに増。H形鋼が27.1万トンと前月比8.3%、前年同月比9.3%のともに減。冷延電気鋼帯が9.0万トンと前月比2.3%増だが、前年同月比4.2%減。線材が12.7万トンと前月比2.6%減だが、前年同月比12.1%の2桁増となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が138.4万トンと前月比0.0%の横這いだが、前年同月比10.7%の2桁減。冷延広幅鋼帯が21.9万トンと前月比0.8%の微増だが、前年同月比9.0%減。特殊鋼磨棒鋼・線類が17.3トンと前月比1.2%の、前年同月比2.1%のともに増となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が28.5万トンと前月比1.6%、前年同月比9.7%のともに減。特殊鋼熱間鋼管が7.5万トンと前月比8.9%減で、前年同月比50.6%と半減になった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が74.3万トンと前月比0.1%の微減で、前年同月比7.7%減となった。
【11月の鉄鋼出荷】
11月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼では鋼帯が145.3万トンと前月比8.0%、前年同月比8.9%のともに減。冷延広幅帯鋼が46.4万トンと前月比11.1%の2桁増だが、前年同月比10.2%の2桁減。鋼板が67.3万トンと前月比9.5%、前年同月比4.5%のともに減。H形鋼が26.2万トンと前月比10.8%、前年同月比13.3%のともに減。線材が12.9万トンと前月比2.1%減で、前年同月比17.9%の2桁減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が102.0万トンと前月比1.7%増だが、前年同月比4.8%減。冷延広幅帯鋼が20.1万トンと前月比2.0%減で、前年同月比10.9%の2桁減。特殊鋼磨棒鋼・線類が16.2万トンと前月比0.4%の微減だが、前年同月比2.0%減となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が24.5万トンと前月比5.4%減で、前年同月比11.2%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が5.3万トンと前月比19.1%の2桁減で、前年同月比62.1%の大幅減となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が75.4万トンと前月比3.3%増だが、前年同月比9.1%減となった。
【11月の石油生産】
11月の石油製品の生産を油種別みると、重油が231.9万㎘と前月比10.6%の2桁増だが、前年同月比3.9%減。ガソリンが380.2万㎘と前月比1.1%増だが、前年同月比8.9%減。軽油が263.4万㎘と前月比2.9%減で、前年同月比21.5%の大幅減。灯油が132.0万㎘と前月比36.3%の大幅増で、前年同月比0.3%の微増。ナフサが115.9万㎘と前月比10.2%の2桁増だが、前年同月比20.8%の大幅減。ジェット燃料油が51.4万㎘と前月比0.5%の微増だが、前年同月比では依然57.6%の記録的な大幅減。液化石油ガスが23.3万トンと前月比7.2%増だが、前年同月比10.0%の2桁減。アスファルトが20.9万トンと前月比44.0%の大幅増で、前年同月2.8%増。潤滑油が15.0万㎘と前月比2.8%減で、前年同月比28.1%の大幅減となった。
【11月の石油出荷】
11月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,415.1万㎘と前月比1.9%増だが、前年同月比13.3%減となった。
油種別では、重油が248.4万㎘と前月比10.9%の2桁増で、前年同月比2.3%増。ガソリンが393.2万㎘と前月比3.0%、前年同月比9.5%のともに減。軽油が299.7万㎘と前月比0.7%の微減で、前年同月比12.0%の2桁減。ナフサが294.6万㎘と前月比1.8%増だが、前年同月比13.4%の2桁減。ジェット燃料油が53.8万㎘と前月比2.4%増だが、前年同月比55.7%と2分の1を越える大幅減。液化石油ガスが35.3万トンと前月比2.3%増だが、前年同月比13.0%の2桁減。アスファルトが20.1万トンと前月比7.9%、前年同月比7.5%のともに増。潤滑油が16.9万㎘と前月比11.8%の2桁減で、前年同月比27.3%の大幅減となった。
【11月のコークス・石灰石】
11月のコークスの生産は、246.0万トンと前月比0.9%の微増だが、前年同月比5.8%減。出荷は77.6万トンと前月比11.8%の2桁減で、前年同月比4.2%減となった。
11月の石灰石の生産は、1,138.4万トンと前月比3.7%、前年同月比4.5%のともに減。出荷は926.2万トンと前月比1.9%、前年同月比5.5%のともに減となった。
※添付資料