令和3年7月14日(水)Vol.822
生産 前月比3カ月振り低下
経産省 5月の鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済産業省は6月30日、5月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。それによると、5月の鉱工業生産は前月比-5.9%と3カ月振りの低下だった。世界的な半導体不足の影響等から、自動車工業が大幅に低下したことなどを受けて、全体として3カ月振りの低下となった。経産省では5月の基調判断を「生産は持ち直している」と据え置いた。
生産 3カ月振りの前月比減
5月の鉱工業生産は季節調整済指数94.1、前月比マイナス5.9%と、3カ月振りの低下となった。
これまでの生産については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、昨年2月から5月まで大幅に低下した後、6月以降は一転、回復基調が続いている。本年2月は一時的に低下したが、3月と4月は2カ月連続での上昇となり、5月は再び低下となった。
その結果、本年5月の生産水準は、感染症拡大前の昨年1月(指数値99.1)の水準を下回った。
13業種が前月比低下
5月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇という結果だった。
5月は、生産用機械工業等が先月からの反動減などにより低下したことに加えて、半導体不足の影響などを受けた自動車工業等が低下したことなどから、全体として、昨年5月(-10.5%)以来の大幅な低下となった。
主な低下寄与業種についてみると、低下寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比19.4%の大幅な低下で、昨年6月(指数値59.9)以来の水準である指数値80.0となった。乗用車や車体・自動車部品等が主な低下要因となっている。世界的な半導体不足の影響を受けて、大幅な生産減になったと考えられる。
低下寄与2位の生産用機械工業は、前月比5.9%の低下で、2カ月振りの低下となった。半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置や金属加工機械等が低下要因となっている。先月の生産増からの反動減などが背景にあったと考えられる。
出荷 3カ月振りの低下
5月の鉱工業出荷は、季節調整済指数93.1、前月比マイナス4.7%と、3カ月振りの低下となった。
業種別にみると、全体15業種のうち13業種が低下、2業種が上昇となった。
低下寄与業種の中では、特に自動車工業の低下寄与が大きくなっている。乗用車や車体・自動車部品等が主な低下要因となっており、生産と概ね同様の動きとなっている。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が前月比5.6%の低下であったことに加え、耐久消費財が前月比7.9%の低下、資本財(輸送機械除く)が前月比3.0%の低下、非耐久消費財が前月比2.4%の低下と、建設財を除き低下となった。
在庫 2カ月連続低下
5月の鉱工業在庫は、季節調整済指数93.1、前月比マイナス1.7%と、2カ月連続の低下となった。2013年1月以降の今基準内で最も低い水準となっている。
業種別にみると、15業種のうち6業種が低下、9業種が上昇となった。低下寄与業種の中では、特に自動車工業の低下寄与が大きくなっている。
自動車工業の生産水準が大幅に低下したことを受けて、出荷水準も併せて低下しているものの、その一部に対して在庫の減少により対応したことがうかがえる。
在庫率 2カ月振り上昇
5月の鉱工業在庫率は季節調整済指数107.7、前月比0.3%と、2カ月振りの上昇となった。上昇はしたものの、先月を除くと一昨年5月の指数値107.0以来の低い水準となっている。
業種別にみると、15業種のうち9業種が上昇、5業種が低下、1業種が横ばいとなった。
特に、鉄鋼・非鉄金属工業が上昇に大きく寄与している。
在庫循環図をみると、昨年第4四半期と本年第1四半期は、「意図せざる在庫減局面」にあり、景況感の改善を眺めつつ、本年第2四半期には、「在庫積み増し局面」に向かう動きにあると考えられる。
ただし、生産前年同期比(横軸)については、昨年の生産水準が新型コロナウイルス感染症の影響で大きく低下していることから、その点には留意が必要と考える。
生産基調判断 「持ち直し」に据置
5月の鉱工業生産は、前月比5.9%の低下となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で昨年2月から5月まで低下が続いた後、6月以降は一転、回復傾向が続いている。本年2月は一時的に低下したものの、3月と4月は2カ月連続での上昇となり、5月は再び低下となった。
この背景には、5月の生産が前月からの反動減などにより、生産用機械工業等で低下したことに加えて、世界的な半導体不足の影響から、自動車工業等で大幅に低下したことがあると考えられている。
一方、先行きに関しては、企業の生産計画で6月上昇、7月低下となっている。生産は、上下の振れはありつつも、均してみれば引き続き回復傾向にあると考えられる。
こうした状況を踏まえ経産省では、鉱工業生産の5月の基調判断について、「生産は持ち直している」に据え置くこととしている。
他方、先行きは半導体不足による経済活動への影響や、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響について、引き続き注視していく必要があるとしている。
製造工業生産予測指数
6・7月の製造業生産計画
経産省が調査した6月及び7月の製造業の生産計画では、6月が5月比上昇するものの、7月が6月比低下となっている。世界的な半導体不足の影響などが懸念されるものの、生産用機械工業や輸送機械工業等が上昇し、生産は持ち直し傾向が続くと期待されている。
生産 6月上昇、7月低下の計画
経産省が6月上旬に実施した6月と7月の企業生産予測調査の結果によれば、6月の生産計画は前月比9.1%の上昇を見込むという結果となっている。
ただ、この生産計画には上方バイアスが含まれており、この上方バイアスを過去の傾向に基づき補正し、6月の鉱工業生産の実績を推計試算してみると、最頻値では前月比5.4%程度の上昇、90%の確率で収まる範囲は前月比3.6%~7.2%の間、という計算結果となる。
また、7月の生産計画は、補正前の6月計画値から前月比1.4%低下する計画となっている。
6月は8業種上昇、3業種低下
6月の生産計画では、全体11業種のうち8業種が前月比上昇、3業種が前月比低下の計画となっている。
特に、上昇寄与の高かった業種が生産用機械工業や輸送機械工業で、低下寄与の高かった業種は汎用・業務用機械工業となっている。
これは、半導体不足の影響などが懸念されるものの、世界的な需要の増加を受けて、生産用機械工業や輸送機械工業などが増産する計画となっていることが背景として考えられる。
7月は5業種低下、6業種上昇
7月の生産計画では、全体11業種のうち5業種が前月比低下、6業種が前月比上昇の計画となっている。
特に、低下寄与の高かった業種が生産用機械工業であり、上昇寄与の高かった業種が輸送機械工業となっている。
これは、低下寄与の高かった生産用機械工業でみると、6月の大幅な生産水準の上昇による反動減などでの減産を予定していることが背景として考えられる。
他方で、上昇寄与の高かった輸送機械工業については、世界的な需要の増加などを受けて、2カ月連続での増産を予定していると考えられる。
ただし、現調査時点が6月上旬であったため、最新の世界的な半導体不足の影響などは十分に反映されていない可能性があり、その点も注意しておく必要がある。
6・7月通期でみると
6月と7月の2カ月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、まず7月では、生産用機械工業での反動減による影響はあるものの、輸送機械工業などが上昇を継続することなどから、生産は5月比で上昇する見込みとなっている。
ただし、調査時点の影響から7月の生産計画については、最新の世界的な半導体不足の影響が十分に反映されていない可能性があり、次回の調査時点では、この下振れリスクがより顕在化してくることも想定しておく必要がある。
しかし、内外での設備投資の回復や自動車関連需要の増加などから、製造工業の生産全体では均してみると、持ち直しが続くことが期待される計画となっている。
仮に企業の生産計画通りの前月比で生産が行われると、6月の鉱工業生産の指数値は102.7、7月の指数値は101.3となる。
一方、6月計画に含まれる上方バイアスを過去の傾向に基づき補正すると、最頻値で前月比5.4%の上昇となり、その場合の指数値は99.2となる。
生産計画には通常、上方バイアスが含まれていることなどを考えると、6月に計画値ほどの高水準には至らない可能性が高いものの、一昨年9月の指数値102.4以来の100.0超の生産水準となる可能性もあると考えられる。
生産の先行きについては、上下の振れはあるものの、持ち直しが続くことが期待される。ただし経産省では、半導体不足による経済活動への影響や、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響については、引き続き十分注意しておく必要があるとしている。
令和3年7月14日(水)Vol.823
燃料油生産 19カ月振りの前年比増
エネ庁 5月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は6月30日、5月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
1.原油の動向
5月の原油輸入量は1,191万㎘、前年同月比105.9%と17カ月振りに前年を上回った。輸入量の多い順にみると次のようになっている。
(1)アラブ首長国連邦(463万㎘、前年同月比128.8%)
(2)サウジアラビア(406万㎘、同88.5%)
(3)カタール(127万㎘、同168.1%)
(4)クウェート(86万㎘、同72.5%)
(5)ロシア(70万㎘、同153.9%)
5月の中東依存度は92.9%で前年同月と同様となった。
2.燃料油の生産
燃料油の生産は972万㎘、前年同月比101.6%と19カ月振りに前年を上回った。油種別にみるとガソリン、ジェット燃料油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ナフサ、灯油、軽油及びA重油は前年同月を下回った。
3.燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は359万㎘、前年同月比134.1%と7カ月連続で前年を上回った。輸出は123万㎘、前年同月比81.1%と15カ月連続で前年を下回った。
4.燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,125万㎘、前年同月比107.2%と3カ月連続で前年を上回った。油種別にみるとガソリン、ナフサ、ジェット燃料油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、灯油、軽油及びA重油は前年同月を下回った。
5.燃料油の在庫
燃料油の在庫は1,029万㎘、前年同月比106.6%と4カ月連続で前年を上回った。油種別にみるとガソリン、軽油、A重油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ナフサ、ジェット燃料油及び灯油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要 令和3年5月 Excel
令和3年7月14日(水)Vol.824
粗鋼3カ月連続増、燃料油19カ月振り増
経産省 5月の生産動態統計速報発
経済産業省は6月30日、5月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は842.0万トンと前月比7.7%増で、前年同月比42.2%の大幅増となった。これで前年同月比では3カ月連続の増となった。主要鉄鋼製品は前年同月比で大幅増が目立ち、鉄鋼生産に持ち直しがみられた。
また、石油製品生産量は燃料油計が972.4万㎘と前月比8.7%減だが、前年同月比1.6%増となり、前年同月比で19月振りに増となった。
【5月の鉄鋼生産】
銑鉄生産は612.4万トンと前月比7.9%増で、前年同月比39.1%の大幅増となり、前年同月比では3カ月連続の増加となった。
粗鋼生産は842.2万トンと前月比7.7%増で、前年同月比42.2%の大幅増となり、前年同月比では3カ月連続の増加となった。5月の1日当たり粗鋼生産は27.2万トンで、4月の同26.1万トン比4.2%増となった。
炉別生産では、転炉鋼が633.2万トンと前月比9.5%増で、前年同月比47.2%の大幅増。電炉鋼が209.0万トンと前月比2.6%増で、前年同月比29.1%の大幅増となった。前年同月比では転炉鋼、電炉鋼とも3カ月連続の増加となった。
鋼種別生産では、普通鋼が646.1万トンと前月比8.0%増で、前年同月比35.0%の大幅増。特殊鋼が196.1万トンと前月比6.8%増で、前年同月比72.9%の大幅増となった。前年同月比では普通鋼特、殊鋼とも3カ月連続の増加増加となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は707.8万トンと前月比2.7%増、前年同月比36.3%の大幅増となり、前年同月比では3カ月連続の増加となった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は552.1万トンと前月比3.6%増で、前年同月比28.3%大幅増となり、前年同月比では3カ月連続の増加となった。
特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は155.7万トンと前月比0.1%減だが、前年同月比75.0%の大幅増となり、前年同月比では5カ月連続の増加となった。
5月の主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が339.7万トンと前月比4.8%増で、前年同月比44.7%の大幅増。冷延広幅帯鋼が140.2万トンと前月比1.8%増で、前年同月比42.8%の大幅増。鋼板が76.8万トンと前月比5.2%、前年同月比8.4%のともに増。小形棒鋼が63.0万トンと前月比2.2%減だが、前年同月比2.6%増。H形鋼が31.9万トンと前月比11.9%、前年同月比13.9%のともに2桁増。冷延電気鋼帯が11.6万トンと前月比2.1%減だが、前年同月比37.2%の大幅増。線材が14.0万トンと前月比11.7%減だが、前年同月比53.9%の大幅増となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が155.9万トンと前月比0.1%の微増で、前年同月比75.2%の大幅増。冷延広幅帯鋼が24.8万トンと前月比0.7%の微増で、前年同月比56.5%の大幅増。特殊鋼磨棒鋼・線類が15.0万トンと前月比18.6%の2桁減だが、前年同月比68.8%の大幅増となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が28.1万トンと前月比4.9%減だが、前年同月比19.1%の2桁増。特殊鋼熱間鋼管が9.0万トンと前月比8.6%減で、前年同月比も17.4の2桁減となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が82.1万トンと前月比0.8%の微増で、前年同月比49.8%の大幅増となった。
【5月の鉄鋼出荷】
5月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼では鋼帯が171.6万トンと前月比14.2%の2桁増で、前年同月比37.2%の大幅増。冷延広幅帯鋼が50.0万トンと前月比4.5%増で、前年同月比43.3%の大幅増。鋼板が66.7万トンと前月比10.0%の2桁減で、前年同月比6.0%減。H形鋼が29.8万トンと前月比12.1%の2桁増で、前年同月比も9.8%増。線材が13.2万トンと前月比7.2%減だが、前年同月比52.6%の大幅増となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が109.8万トンと前月比0.3%の微増で、前年同月比71.3%の大幅増。冷延広幅帯鋼が21.5万トンと前月比3.2%増で、前年同月比34.8%の大幅増。特殊鋼磨棒鋼・線類が14.1万トンと前月比19.9%の2桁減だが、前年同月比38.6%の大幅増となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が23.7万トンと前月比2.9%減だが、前年同月比14.2%の2桁増。特殊鋼熱間鋼管が5.8万トンと前月比32.4%、前年同月比42.3%のともに大幅減となった。
めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が76.2万トンと前月比3.0%減だが、前年同月比45.1%の大幅増となった。
【5月の石油生産】
5月の石油製品の生産を油種別みると、重油が188.7万㎘と前月比12.9%の2桁減だが、前年同月比4.7%増。軽油が248.0万㎘と前月比6.9%減で、前年同月比0.4%の微減。灯油が67.6万㎘と前月比2.2%増だが、前年同月比26.0%の大幅減。ナフサが86.9万㎘と前月比17.1%の2桁減で、前年同月比も7.6%減。ジェット燃料油が62.0万㎘と前月比5.6%減だが、前年同月比6.7%増。液化石油ガスが26.6万トンと前月比2.2%減だが、前年同月比24.4%の大幅増。アスファルトが10.5万トンと前月比36.6%、前年同月比37.1%のともに大幅減。潤滑油が13.8万㎘と前月比18.3%の2桁減で、前年同月比も4.6%減となった。
【5月の石油出荷】
5月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,215.6万㎘と前月比4.1%減だが、前年同月比も2.9%増となった。
油種別では、重油が195.6万㎘と前月比10.3%の2桁減だが、前年同月比4.5%増。ガソリンが351.0万㎘と前月比4.4%減だが、前年同月比13.8%の2桁増。軽油が254.6万㎘と前月比7.1%、前年同月比4.8%のともに減。ナフサが287.8万㎘と前月比0.1%の微増で、前年同月比1.4%増。ジェット燃料油が67.5万㎘と前月比23.2%、前年同月比31.6%のともに大幅増。液化石油ガスが37.3万トンと前月比2.4%減だが、前年同月比36.9%の大幅増。アスファルトが13.4万トンと前月比21.3%の大幅減で、前年同月比も16.5%の2桁減。潤滑油が15.5万㎘と前月比17.2%の2桁減だが、前年同月比2.2%の増となった。
【5月のコークス・石灰石】
5月のコークスの生産は、2,624万トンと前月比3.7%、前年同月比7.5%のともに増。出荷は65.6万トンと前月比0.5%の微増だが、前年同月比0.5%の2微減となった。
5月の石灰石の生産は、1,106.0万トンと前月比4.1%増で、前年同月比12.5%の2桁増。出荷は892.9万トンと前月比横這いだが、前年同月比14.6%の2桁増となった。
※添付資料
鉄鋼主要製品統計速報 令和3年5月 Excel
資源エネルギー統計速報 令和3年5月 Excel