令和4年12月16日(金)Vol.857
生産持ち直しも一部に弱さ
経産省 10月の鉱工業生産・出荷・在庫速報発表
経済産業省は11月30日、10月の鉱工業生産・出荷・在庫速報を発表した。
それによると10月の鉱工業生産は、需要の減少等を受けて、生産用機械工業や電子部品・デバイス工業などが低下したことから、全体として前月比−2.6%と、2カ月連続低下した。経産省ではこれにより、基調判断を「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に引き下げた。
10月生産は2カ月連続の前月比低下
10月の鉱工業生産は、季節調整済指数95.9、前月比−2.6%と、2カ月連続の低下となった。
これまでの生産の動向については、本年4月と5月に中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月に中国でのロックダウン等の解除などを受けて上昇に転じ、7月と8月は部材供給不足の影響が緩和したことなどから、上昇していた。
こうした中、9月はこれまでの上昇の反動などから低下し、10月はこれまでの上昇の反動に加えて、海外需要の減少等を受けて、生産用機械工業や電子部品・デバイス工業などが低下したことから、2カ月連続で低下した。
前月比 8業種前月低下、7業種上昇
10月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち8業種が前月比低下、7業種が前月比上昇という結果だった。
10月は、これまでの上昇の反動に加えて、海外需要の減少等を受けて、生産用機械工業や電子部品・デバイス工業などが低下したことから、全体として低下した。
低下寄与度の最も大きかった生産用機械工業は、半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレイ製造装置等が主な低下要因となっている。半導体製造装置については、前月までの上昇の反動などを受けて、フラットパネル・ディスプレイ製造装置については、海外需要の減少等を受けて、低下したものと考えられる。
次に低下寄与度の大きかった電子部品・デバイス工業は、モス型半導体集積回路(メモリ)や固定コンデンサ等が主な低下要因となっている。これらについては、海外需要の減少等を受けて、低下したものと考えられる。
出荷は2カ月連続低下
10月の鉱工業出荷は、季節調整済指数94.1、前月比−1.1%と、2カ月連続の低下となった。
業種別にみると、全体15業種のうち7業種が低下、8業種が上昇となった。10月は、生産用機械工業や自動車工業などが低下したことから、全体として低下した。
低下寄与度の最も大きかった生産用機械工業は、半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレイ製造装置等が主な低下要因となっている。これらについては、生産と同様の理由により、低下したものと考えられる。
次に低下寄与度の大きかった自動車工業は、普通乗用車や自動車用エンジン等が主な低下要因となっている。これらについては、部材供給不足の影響などを受けて、低下したものと考えられる。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が前月比0.3%の上昇、非耐久消費財が同0.5%の上昇、建設財が同0.2%の上昇となる一方で、資本財(輸送機械除く)が同4.0%の低下、耐久消費財が同2.3%の低下となった。
在庫5カ月振り低下
10月の鉱工業在庫は季節調整済指数103.0、前月比−0.8%と、5カ月振りの低下となった。
業種別にみると、15業種のうち6業種が低下、9業種が上昇となった。低下寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や普通トラック等が主な低下要因となっている。これらについては、部材供給不足の影響などを受けて、生産の低下幅が出荷の低下幅よりも、相対的に大きかったことなどから、低下したものと考えられる。
在庫率2カ月振り低下
10月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数118.3、前月比マイナス5.1%と、2カ月振りの低下となった。
業種別にみると、15業種のうち8業種が低下、7業種が上昇となった。
在庫循環図をみると、昨年第3四半期までは「在庫積み増し局面」にあり、第4四半期には、「在庫積み上がり局面」に達し、本年第3四半期まで継続していたが、第4四半期(速報)では、「在庫積み増し局面」に逆戻りしている。これまでの部材供給不足などによる生産減少の影響等が含まれているため、概ね「在庫積み上がり局面」に位置しているものと考えられるが、今後も注視していく必要がある。
10月の生産基調判断 「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に引き下げ
10月の鉱工業生産は、前月比2.6%の低下となった。生産は、本年4月と5月に中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月に中国でのロックダウン等の解除などを受けて上昇に転じ、7月と8月は部材供給不足の影響が緩和したことなどから、上昇していた。
こうした中、9月はこれまでの上昇の反動などから低下し、10月は、これまでの上昇の反動に加えて、海外需要の減少等を受けて、2カ月連続で低下した。
また、先行きに関しては企業の生産計画で11月と12月がともに上昇となっているが、11月の補正値は前月比0.8%の低下を見込んでいることに加えて、電子部品・デバイス工業が11月と12月、ともに低下を見込んでいる。
このため、ならしてみると緩やかに持ち直しているものの、電子部品・デバイス工業など一部に弱さがみられる状況となっている。
経産省ではこうした状況を踏まえ、鉱工業生産の10月の基調判断については、「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に引き下げた。
経産省では今後も引き続き、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や、部材供給不足の影響、物価上昇の影響などについて、注視して行きたいとしている。
製造工業生産予測指数
製造業の生産計画
経産省経済解析室では、毎月初旬に主要製品の生産計画を調べている。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象にその月と翌月の生産計画を調査している。今回は、11月初旬に調査した11月と12月の生産計画の状況と、11月初旬での企業の生産マインドについて解説する。
結果の概要【2022年11月調査】
生産は11月、12月とも上昇予測
11月初旬に実施した11月と12月における企業の生産予測調査の結果、11月の生産計画では、前月比3.3%の上昇見込みだった。この計画通りに生産されれば、11月の鉱工業生産の実績は、3カ月振りの上昇が見込まれる。ただし、生産計画は生産実績よりも上振れする傾向があり、11月の生産計画について、生産実績との間で生じるズレを統計的に補正すると、11月の生産実績の見通しは、前月比−0.8%の低下見込みである。
なお、12月の生産計画については、11月の計画から2.4%の上昇見込みである。
11・12月を通じた生産計画
11月と12月の2カ月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、次のようになる。
11月の生産計画では、全体11業種のうち6業種が前月比上昇、5業種が前月比低下、12月の生産計画では、7業種が前月比上昇、3業種が前月比低下、1業種が前月比横ばいの計画となっている。製造工業全体の生産は、11月、12月を通して上昇する見込みだ。
11月の生産計画は、納期変更により「半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置」が生産計画を伸ばしていることなどから、生産用機械工業などが上昇を見込んでおり、全体も上昇の見込みだ。
ただし、海外景気の下振れ等により生産計画が下方修正されるリスクもあり、先行きについては注視が必要である。
12月の生産計画については、自動車産業を中心とした輸送機械工業等が生産計画を伸ばしており、全体としては上昇する見通しだが、需要の減少から「集積回路」の生産計画が落ち込む電子部品・デバイス工業では、低下を見込むなどの動きもみられる。
11月、12月の計画を通してみれば、製造工業全体は回復基調で推移すると考えられる。
11月生産計画の強気と弱気
次に企業の生産マインドについてみていきたい。企業の生産マインドは、10月当初に調べた11月の生産計画が、11月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか(予測修正率)をみることで確認することができる。11月の生産計画における予測修正率は−3.0%となっており、20カ月連続で下方修正となっている。
生産計画が下方修正される状況が長期間続いている背景には、これまでの半導体不足や中国における経済活動の抑制等の様々な供給制約の影響が及んでいることが考えられる。
足下においても、部材供給不足等の懸念が続いていることから、引き続き、企業の生産マインドは弱気であると考えられている。
生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができる。この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ね−5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高い傾向がみられる。
11月の生産計画では、この数値の単月の値は−5.4、月々の上下動をならしたトレンドは−8.3となっている。単月、トレンド両方の数値が−5を下回っており、このことからも企業の生産マインドは弱気であると考えられる。
生産計画からみる今後の見通し
生産計画は11月、12月を通して上昇が期待されるものの、予測修正率等からみる企業の生産マインドは、弱気が続いている。経産省では引き続き、海外景気の下振れや供給制約等の影響について注視する必要があるとしている。
令和4年12月16日(金)Vol.858
粗鋼 前年比10カ月連続減
燃料油 前年比再び増
経産省 10月の生産動態統計速報発表
経済産業省は11月30日、10月の主要品目の生産動態統計速報を発表した。10月の粗鋼生産は734.2万トンと前月比2.8%増だが、前年同月比10.7%の2桁減となった。これで前年同比では10カ月連続の減となった。
また、10月の石油製品生産量は燃料油計が1,253.4万㎘と前月比4.7%、前年同月比3.0%のともに増となり、前年同月比で2カ月振りの増となった。
【10月鉄鋼生産】
10月の銑鉄生産は520.4万トンと前月比2.9%増だが、前年同月比11.3%減となり、前年同月比では10カ月連続の減となった。
粗鋼生産は734.9万トンと前月比2.9%増だが、前年同月比10.6%減となり、前年同月比では10カ月連続の減となった。10月の1日当たり粗鋼生産は23.7万トンで、9月の同23.8万トン比0.4%減となった。
炉別生産では、転炉鋼が530.3万トンと前月比3.2%増だが、前年同月比11.8%減。電炉鋼が204.6万トンと前月比2.3%増だが、前年同月比7.5%減となり、前年同月比では転炉鋼は10カ月連続の減で、電炉鋼は3カ月連続の減少となった。
鋼種別生産では、普通鋼が571.4万トンと前月比4.8%増だが、前年同月比9.6%減。特殊鋼が163.5万トンと前月比3.1%、前年同月比14.1%のともに減となり、前年同月比では普通鋼は10カ月連続の減、特殊鋼は9カ月連続の減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は660.9万トンと前月比5.8%増だが、前年同月比7.7%減となり、前年同月比では10カ月連続の減少となった。
普通鋼熱間圧延鋼材の生産は520.5万トンと前月比7.3%増だが、前年同月比7.9%減となり、前年同月比では5カ月連続の減少となった。特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は140.4万トンと前月比0.6%増だが、前年同月比6.8%減となり、前年同月比では9カ月連続の減少となった。
主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が309.5万トンと前月比9.8%増だが、前年同月比7.6%減。冷延広幅帯鋼が121.9万トンと前月比0.4%の微減で、前年同月比7.5%減。鋼板が77.5万トンと前月比3.6%増だが、前年同月比4.9%減。小形棒鋼が67.6万トンと前月比8.1%増だが、前年同月比7.3%減。冷延電気鋼帯が10.8万トンと前月比0.0%の横這いだが、前年同月比10.9%の2桁減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が140.6万トンと前月比0.8%の微増だが、前年同月比6.7%減。冷延広幅帯鋼が22.6万トンと前月比1.0%、前年同月比6.0%のともに減。特殊鋼磨棒鋼・線類が16.2万トンと前月比4.2%減だが、前年同月比0.8%の微増となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が31.0万トンと前年同月比8.7%増だが、前年同月比0.0%の横這い。特殊鋼熱間鋼管が8.8万トンと前月比13.6%、前年同月比18.7%のともに2桁減となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が74.6万トンと前月比5.0%、前年同月比1.0%のともに増となった
【10月の鉄鋼出荷】
10月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼では鋼帯が157.6万トンと前月比9.3%増だが、前年同月比9.0%減。鋼板が82.6万トンと前月比14.2%の2桁増だが、前年同月比1.9%減。小型棒鋼が65.8万トンと前月比5.3%増だが、前年同月比5.8%減。冷延広幅帯鋼が42.9万トンで前月比5.3%減、前年同月比19.7%の2桁減。H形鋼が30.8万トンと前月比6.2%増だが、前年同月比0.3%の微減。冷延電気鋼帯が11.5万トンで前月比3.7%、前年同月比0.1%の微減。線材が10.6万トンと前月比2.6%減で、前年同月比23.4%の大幅減となった。
特殊鋼では、熱間圧延鋼材が101.8万トンと前月比4.4%、前年同月比8.7%のともに減。冷延広幅帯鋼が22.9万トンと前月比25.5%の大幅増で、前年同月比6.1%増。特殊鋼磨棒鋼・線類が15.3万トンと前月比2.5%減だが、前年同月比1.1%増となった。
鋼管では、普通鋼熱間鋼管が26.7万トンと前月比9.0%増だが、前年同月比2.4%減。特殊鋼熱間鋼管が7.8万トンと前月比11.0%、前年同月比14.3%のともに2桁減となった。
めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が75.3万トンと前月比12.1%の2桁増だが、前年同月比0.4%の微減となった。
【10月の石油生産】
10月の石油製品の生産を油種別みると、重油は233.8万㎘と前月比2.2%、前年同月比5.1%のともに増。ガソリンが386.4万㎘と前月比6.9%の増だが、前年同月比1.3%減。軽油が323.2万㎘と前月比1.2%減だが、前年同月比も1.5%増。灯油が109.5万㎘と前月比55.0%の大幅増で、前年同月比も11.1%の2桁増。ナフサが113.3万㎘と前月比6.9%増だが、前年同月比8.4%減。ジェット燃料油が87.1万㎘と前月比15.8%の2桁減だが、前年同月比40.2%の大幅増。液化石油ガスが24.8万トンと前月比5.9%、前年同月比3.1%のともに減。アスファルトが21.2万トンと前月比10.3%の2桁増で、前年同月比3.2%増。潤滑油が16.7万㎘と前月比7.7%増で、前年同月比15.1%の2桁増となった。
【10月の石油出荷】
10月の石油製品の出荷をみると、燃料油計では1,463.5万㎘と前月比4.4%増だが、前年同月比2.7%減となった。
油種別では、重油が231.8万㎘と前月比0.8%の微減だが、前年同月比0.1%の微増。ガソリンが401.0万㎘と前月比6.3%増だが、前年同月比1.8%減。軽油が316.3万㎘と前月比10.5%の2桁減で、前年同月比も8.1%減。灯油が120.4㎘と前月比73.4%の大幅増で、前年同月比も6.2%増。ナフサが303.8万㎘と前月比18.9%の2桁増だが、前年同月比8.8%減。ジェット燃料油が90.3万㎘と前月比19.6%の2桁減だが、前年同月比23.4%の大幅増。液化石油ガスが32.8万トンと前月比9.6%、前年同月比2.1%のともに減。アスファルトが15.3万トンと前月比14.5%、前年同月比16.1%のともに2桁減。潤滑油が15.9万㎘と前月比18.0%の2桁減で、前年同月比も1.0%減となった。
【10月のコークス・石灰石生産と出荷】
10月のコークスの生産は、241.7万トンと前月比2.0%増だが、前年同月比4.9%減。出荷は70.9万トンと前月比24.2%の大幅増で、前年同月比も2.2%増となった。
10月の石灰石の生産は、1,112.1万トンと前月比9.0%増だが、前年同月比3.6%減。出荷は898.8万㌧で前月比11.5%増だが、前年同月比4.8%減となった。
※添付資料
鉄鋼統計速報 令和4年10月 Excel
資源エネルギー統計速報 令和4年10月 Excel
令和4年12月16日(金)Vol.859
燃料油販売 前年比1%増
エネ庁 10月の石油統計速報発表
資源エネルギー庁は11月30日、10月の石油統計速報を発表した。概要は次の通り。
原油の動向
10月の原油輸入量は1,343万㎘、前年同月比115.7%と15カ月連続で前年を上回った。輸入量の多い順にみると次の通り。
(1)アラブ首長国連邦(539万㎘、前年同月比132.7%)
(2)サウジアラビア(502万㎘、同115.1%)
(3)クウェート(124万㎘、同92.9%)
(4)カタール(70万㎘、同177.8%)
(5)アメリカ合衆国(38万㎘、前年同月実績なし)
なお、10月の中東依存度は94.7%、前年同月に比べ5.4ポイント増と8カ月連続で前年を上回った。
燃料油の生産
燃料油の生産は1,253万㎘、前年同月比103.0%と前年を上回った。油種別にみるとジェット燃料油、灯油、軽油、A重油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ガソリン及びナフサは前年同月を下回った。
燃料油の輸入、輸出
燃料油の輸入は301万㎘、前年同月比98.3%と9カ月連続で前年を下回った。輸出は201万㎘、前年同月比89.3%と10カ月振りに前年を下回った。
燃料油の国内販売
燃料油の国内販売は1,263万㎘、前年同月比101.0%と前年を上回った。油種別にみるとガソリン、ジェット燃料油、灯油、軽油、A重油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ナフサは前年同月を下回った。
燃料油の在庫
燃料油の在庫は985万㎘、前年同月比97.4%と9カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、ナフサ、ジェット燃料油及びB・C重油は前年同月を上回ったが、ガソリン、灯油、軽油及びA重油は前年同月を下回った。
※添付資料
石油需給概要 令和4年10月 Excel