No.96:自動車向け需要34年振りに造船向けを下回る 粗鋼生産は前年同月44.2%減の547万トン 鉄連、『鉄鋼需給の動き 2009年3月』発表

平成21年3月27日(金)Vol.96

自動車向け需要34年振りに造船向けを下回る

粗鋼生産は前年同月44.2%減の547万トン

鉄連、『鉄鋼需給の動き 2009年3月』発表

 
【概 況】

生産の急激な落ち込みによる企業業績の悪化が、設備投資、賃金・雇用、さらには個人消費を抑制しており、日本経済は大きく後退している。海外経済も悪化に歯止めがかかっておらず、各国は金融緩和、財政出動など政策を総動員している。

1月の粗鋼生産量は、前年同月比で37.8%減の638万トンとなり、鋼材受注量も内需向けが同 44.3%減、外需向けも50.1%減と、大幅なマイナスが続いている。1月末の普通鋼鋼材国内在庫は6ヵ月ぶりに減少し、前月末比で11万トン減の577万トンとなったが、在庫率は同10.2ポイント増の 165.2%となり、依然として過去最高水準にある。

海外においても、鋼材需要の急減に伴う減産が続いており、1月の世界粗鋼生産量は前年同月比で24.0%減の8,577万トンと、2ヵ月連続で2割強のマイナスとなった。欧米・CISが対前年でほぼ半減となるなか、最大の生産国である中国は前年比2.4%増の4,152万トンと、5ヵ月ぶりの増加に転じている。今後、各国の景気刺激策発動の効果発揮や、内外需要分野における在庫調整進展などが期待されるものの、金融不安は依然継続しており、足元の世界経済は予断を許さない状況にある。このような中、急速な雇用悪化を背景に幾つかの国で保護主義的な動きが顕在化している。内外鋼材需給動向および各国の経済産業政策、通商政策により一層の注意を払う必要がある。

1.経済動向

輸出、生産が過去最大の下げ幅を3ヵ月連続更新、景気はさらに悪化

2.鉄鋼需要産業動向

厳しい状況続く製造業、建築も1月の住宅着工が年率100万戸を下回る等低調

3.鋼材受注(内需)

普通鋼、特殊鋼ともに大幅減続く、普通鋼の自動車は著減、75年12月以来造船を下回る

4.鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)

2月の粗鋼生産(速報)は前年同月44.2%、434万トン減の547万トン

2009年1月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比48.8%減の90万トン、3ヵ月連続の2桁減

5.鋼材流通、鋼材輸入

1月の普通鋼鋼材輸入は前年同月比42.0%減の18万トン、約23年ぶりの20万トン割れ

6.鉄鋼輸出

1月の全鉄鋼輸出は、前年同月比34.4%・105万トン減の200万トン、4ヵ月連続のマイナス

7.海外市場

世界経済に底入れの兆し窺われず、生産の大幅な減少が依然続く

1.経済動向

~輸出、生産が過去最大の下げ幅を3ヵ月連続更新、景気はさらに悪化~

・1月の鉱工業生産(確報)は、輸送機械をはじめほぼ全業種が低下し、前月比10.2%減の75.8と4ヵ月連続で低下。下げ幅は比較可能な53年2月以降、3ヵ月連続で最大を更新。先行きは、2月(▲8.3%)が低下、3月(2.8%)は上昇と予測。基調判断は「急速に低下している」と2ヵ月連続で据え置かれた。出荷は11.4%低下、在庫は2.0%低下、在庫率は11.9%上・1月の機械受注は、前月比3.2%減の7,183億円となり、遡及できる87年4月以降では初の4ヵ月連続の減少となった。内訳は、製造業が27.4%減で2ヵ月ぶりの減少、うち、鉄鋼業(75.0%減)、一般機械(28.9%減)を中心に15業種中11業種が減少した。非製造業は13.5%増と2ヵ月ぶりに増加。基調判

断は「大幅に減少している」と2ヵ月連続で据え置かれた。

・2月の乗用車販売は23.7%減と7ヵ月連続減。普通車、小型車の依然二桁減に加え、軽四輪(8.7%減)も3ヵ月連続減。

・1月の小売業販売額は2.4%の減少で5ヵ月連続のマイナス。基調判断は3ヵ月連続で「減少傾向」としている。1月の全世帯消費支出は5.9%減で11ヵ月連続のマイナス。

・1月の完全失業率は4.1%と前月比で0.2ポイント改善したが、同月の完全失業者数は前年比21万人増の277万人と、3ヵ月連続で増加し、依然として厳しい状況にある。

・1月の有効求人倍率は前月比0.06ポイント低下の0.67倍と、8ヵ月連続で低下し、03年9月以来の低水準を記録。

・1月の輸出数量指数(原指数)は前年同月比41.1%減と6ヵ月連続で低下し、下落幅は比較可能な98年以降、3ヵ月連続で最大を更新。季調済指数も前月比6ヵ月連続で低下し、向先別では米国、EU、アジアのいずれも前月比二桁減と急落した。実質輸出(日銀、季調済)も前月比15.7%減で、下落幅は08年11月(14.0%減)を上回り過去最大となった。

・08年10~12月期の日本の実質GDP成長率(改定値)は、季調済前期比3.2%減(年率12.1%減)と、速報値から0.1ポイント(年率0.6ポイント)の上方修正となった。7年ぶりの3期連続マイナス成長で、第1次石油危機時の74年1~3月期の3.4%減(同13.1%減)に次ぐ下落幅であった。輸出(13.8%減)が過去最大で落込み、設備投資(5.4%減)も4期連続で減少。

2.鉄鋼需要産業動向

<土木>

〇2月の公共土木前払金保証請負金額は前年同月比7.7%減。

・ 国の機関は同4.9%減と2ヵ月振りにマイナスとなったのに加え、地方の機関(同10.0%減・5ヵ月連続)も減少、合計では同7.7%減となり、5ヵ月連続のマイナスとなった。

〇1月の公共土木受注金額は前年同月比14.8%減。

・ 地方の機関(13.9%減)では治山・治水、道路などの減少から3ヵ月連続マイナス、国の機関(14.8%減)は道路の減少もあって2ヵ月振りに減少、全体でも14.8%減と3ヵ月連続のマイナス。

〇1月の民間土木工事受注金額は前年同月比5.7%減。

・ 農林漁業は同36倍と著増したものの、ウェイトの高い運輸通信業(3.7%減)が4ヵ月振りに減少したほか、製造業・鉱業・建設業(48.4%減・4ヵ月連続)もほぼ半減したことから、全体でも5.7%減と6ヵ月振りに前年実績を下回った。

<建築>

〇1月の新設住宅着工戸数は前年同月比18.7%減の7.1万戸。

・ 雇用情勢や資金調達環境の悪化、マンション在庫の高止まり等が影響し、持家(10.8%減)、貸家(18.4%減)および分譲(26.4%減)いずれも2桁の減少、全体でも同18.7%減と2ヵ月連続のマイナス。着工戸数は1年3ヵ月振りに8万戸割れとなり、1月としても7万戸台となるのは99年以来10年振りと低調であった。

・ 年率換算着工戸数は95.7万戸と2ヵ月振りに100万戸を下回る。

〇1月の非住宅着工床面積は前年同月比0.3%減。

・ 用途別では公益事業用が倍増、公務文教用(16.4%増)も増加したが、鉱工業用(4.7%減)が7ヵ月振りに減少に転じ、 商業・サービス業用(17.4%減)も3ヵ月連続で2桁減となるなど主要部門がマイナスとなったことから、全体でも同0.3%減と3ヵ月連続減少。年率換算値は6,083万㎡と5ヵ月振りに6,000万㎡を超えた。

使途別では、工場(2.9%増)は増加も、倉庫(2.6%減)が7ヵ月振りに減少したほか、店舗 (24.5%減)は大幅減となった。

厳しい状況続く製造業、建築も1月の住宅着工が年率100万戸を下回るなど低調

<自動車>

○2月の国内販売(除く輸入車)は前年比23.9%減の37万台と7ヵ月連続のマイナス。

・ 車種別では、乗用車(23.7%減)は、普通車(40.5%減)、小型車(25.3%減)がともに7ヵ月連続、軽(8.7%減)も3ヵ月連続の減となり、乗用車全体では7ヵ月連続の前年割れとなった。一方、トラック(25.4%減)は、普通車(42.8%減)が28ヵ月連続、小型車(34.6%減)は30ヵ月連続、軽(14.0%減)も15ヵ月連続の減となり、トラック計では30ヵ月連続のマイナスとなった。四輪車計では37万台と2月としては77年(32万台)以来の低水準となった。

○2月の完成車輸出は前年比63.9%減の21万台と5ヵ月連続のマイナス。

・ 2月の完成車輸出は、主力の北米向け(66.0%減・7ヵ月連続)が大幅な減少となったのをはじめ、EU向け(57.9%減・7ヵ月連続)も下げ幅が拡大し、全体では63.9%減と5ヵ月連続のマイナスとなった。また、前月記録した59.1%減を4.8ポイント更新して、3ヵ月連続の過去最大の下げ幅となった。

・ 2月の米国新車販売(新聞情報)は、69万台(41.4%減・16ヵ月連続)となり、季節調整済み・年率換算では912万台と、1981年12月以来の低水準となった。米ビッグスリーは、クライスラー、フォードは4割超、GMは5割超の大幅な減。日系ブランド車もトヨタ、ホンダ、日産がそろって3割超の大幅減となった。

○2月の四輪車生産は、前年比56.2%減の48万台、5ヵ月連続のマイナス。

・ 車種別では、乗用車は、堅調に推移してきた軽(13.2%減)が6ヵ月ぶりに減少に転じたのをはじめ、普通車(71.9%減)が5ヵ月連続、小型車(46.9%減)も4ヵ月連続のマイナスとなったことから、全体でも57.4%の減と5ヵ月連続のマイナスとなった。トラックも小型車(47.7%減)が10ヵ月連続の減、普通車(63.8%減)は5ヵ月連続、軽(20.7%減)が4ヵ月連続のマイナスとなり、トラック計では47.8%減と5ヵ月連続のマイナスとなった。なお、四輪車生産計では前年同月比で56.2%減と、前月記録した41.0%減を15.2ポイント更新して、4ヵ月連続の過去最大の下げ幅となった。

<産業機械>

○1月の受注は前年同月比59.7%減と6ヵ月連続のマイナス。

・ 内需(43.4%減)は、官公需(4.8%増)は3ヵ月ぶりに増加したが、製造業を中心とした民需(48.9%減)が大幅に落ち込み7ヵ月連続のマイナス。また、外需(73.4%減)も、原動機(77.2 %減)、運搬機械(71.1%減)、建設機械(77.1%減)、工作機械(82.0%減)等の主要機種が軒並み7割を超える大幅な減少となり4ヵ月連続のマイナス。全体では59.7%減と6ヵ月連続のマイナスとなった。また、日本工作機械工業会によると、2月の工作機械受注実績(確報)は、前年同月比84.4%減の204 億円と過去最低の1月(190 億円)から若干持ち直したが、依然として低水準で推移している。

○1月の生産は前年同月比36.3%減と11ヵ月連続のマイナス。

・ 化学機械(58.9%増)は大幅な増加となったが、ボイラ・原動機(28.5%減・4ヵ月連続)、土木建設機械(58.0%減・9ヵ月連続)、運搬機械(9.0%減)、農業機械(6.1%減)、金属加工工作機械(34.4%減)、冷凍機(40.1%減)が減少、全体では36.3%減と11ヵ月連続のマイナス。

<電気機械>

○1月の生産は前年同月比39.7%減と4ヵ月連続のマイナス。

・ 重電(25.8%減)は回転電機(46.9%減)が3ヵ月連続の2桁減となった他、静止電機(4.3%減)、開閉制御装置(17.2%減)も減少し4ヵ月連続のマイナス。

・ 民生用電機(6.7%減)は白物家電の不振により3ヵ月連続のマイナス。民生用電子(32.9%減)は液晶テレビ(4.8%減)が2ヵ月連続の減少、デジカメ(47.5%減)、カーナビ(46.3%減)等も大幅に減少し4ヵ月連続のマイナス。また、通信機械(43.8%減)が12ヵ月連続、電子部品(40.3%減)は4ヵ月連続で減少した。

<造 船>

○2月の新造船受注(建造許可ベース)は、前年同月比3.4%増の147万G/Tと2ヵ月ぶりのプラス。

○1月の起工量は、前年同月比25.8%減の82万G/Tと5ヵ月ぶりのマイナス。

○2月末手持工事量は、前月比2.0%減の6,493万G/T と5ヵ月連続のマイナス。

・ 2月の輸出船契約量は前年同月比84.0%減の29万G/Tと5ヵ月連続で7割を超える減少となっており、日本造船工業会では「実質新造船の受注ゼロという状態が当面続くのではないか」 との見方を示している。普通鋼・特殊鋼とも大幅減続く、普通鋼の自動車は著減、75 年12月以来造船を下回る

3.鋼材受注(内需)

○1月の普通鋼鋼材受注(内需計)は、前年比40.3%減の277万トン、6ヵ月連続マイナス。

・ 建設用(26.0%減)は、建築(28.4%減、40万トン割れは86年3月以来)、土木(13.1%減)およびその他建設用(34.0%減)がそれぞれ6ヵ月連続でマイナスとなったため、全体でも6ヵ月連続で前年実績を下回った。

※その他建設用:建築金物、建築用付属資材(配管・配線用、サッシ、シャッター等)、仮設材(足場鋼管、メタルフォーム等)など。

・ 製造業用(45.9%減)は、造船(8.3%増・22ヵ月連続)が堅調を持続するも、自動車(64.4%減・6ヵ月連続、40万トン割れは75年3月以来)は60%超の大幅な減少により造船を下回る水準となり(75年12月以来)、産機(68.1%減・4ヵ月連続)および電機(36.8%減・9ヵ月連続)も減少幅が拡大したため、全体でも6ヵ月連続のマイナスとなった。

・ 販売業者向け(41.5%減・6ヵ月連続)も大幅減が続き、内需全体では40.3%減の277万トン、69年4月以来の300万トン割れとなった。

○1月の特殊鋼鋼材受注(内需計)は、前年比59.2%減の50万トン、4ヵ月連続のマイナス。

・ 製造業用(62.7%減)は、自動車(68.3%減・6ヵ月連続)、産機(63.0%減・3ヵ月連続)、次工程用(60.8%減・4ヵ月連続)いずれも60%超の大幅減、全体でも4ヵ月連続の前年割れとなった。

・ 販売業者向け(54.9%減・4ヵ月連続)も半減し、内需全体では59.2%減の50万トン、4ヵ月連続のマイナスとなった。 %減・4ヵ月連続)いずれも

4. 鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)

~2月の粗鋼生産 (速報)は前年同月44.2%、434万トン減の547万トン~

○2月の粗鋼生産・普通鋼鋼材生産、1月の普通鋼鋼材出荷・在庫動向

4.鉄鋼需給(生産・出荷・在庫)

・2月の粗鋼生産(速報)は、前年同月比44.2%、434万トン減の547万トンで5ヵ月連続の減少となり、1968年6月の546万トン以来の低水準であった。うち転炉鋼(42.7%減)は418万トンで5ヵ月連続、電炉鋼(48.4%減)は130万トンで6ヵ月連続の減少となった。

・2月の普通鋼鋼材生産は、前年同月比42.6%減の401万トンで5ヵ月連続の減少となり、3ヵ月連続で500万トン台を割り、1968年6月の390万トン以来の低水準であった。

・1月の普通鋼鋼材国内向け出荷は、前年比30.4%減で6ヵ月連続の減少、輸出向け出荷は同47.0%減で3ヵ月連続の減少となった。

・1月末の普通鋼鋼材国内向在庫は、前月末比11万トン減の577万トンと6カ月振りの減少となった。なお、在庫率は同10.2ポイント上昇して165.2%となり、1976年1月の169.8%以来の高水準となった。

○1月の生産、出荷、在庫動向

特殊鋼鋼材需給 ~2009年1月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比48.8%減の90万トン、3ヵ月連続の2桁減~

・1月の特殊鋼鋼材生産は、前年同月比48.8%・86万トン減の90万トンと3ヵ月連続の2桁減となった。鋼種別には、すべての鋼種で2桁減となり、高抗張力鋼、軸受鋼を除く鋼種では同50%以上の落ち込みとなった。

・1月の特殊鋼鋼材出荷は、国内向け(47.0%減)、輸出向け(36.4%減)ともに3ヵ月連続の減少となった。

・1月末の特殊鋼鋼材在庫は、前月末比7千トン増の153万トン、在庫率は出荷数量の急減により42.7ポイント上昇し162.1%となった。

1月の普通鋼鋼材輸入は前年同月比42.0%減の18万トン、約23年ぶりの20万トン割れ

5.鋼材流通、鋼材輸入

○1月における鋼材流通の動向

・市中販売(確報)は前年同月比22.6%・68万トン減の233万トンと6ヵ月連続の減少で、過去最低を3ヵ月連続で更新した。品種別には、H形鋼(15.9%減)、小棒(12.6%減)、厚中板(19.6%減)、熱薄類(33.6%減)、冷薄類(39.2%減)、亜鉛めっき(25.2%減)、鋼管(14.2%減)等、全ての品種が3ヵ月連続で過去最低水準を更新した。

・市中在庫(自社所有分)は、前月末比1.7%・4.8万トン減の284万トンと2ヵ月ぶりに減少した。品種別には、厚中板(3.6%増)、冷薄類(1.8%増)は増加したが、H形鋼(2.8%減)、小棒(7.2%減)、熱薄類(1.0%減)、亜鉛めっき鋼板(2.5%減)は減少した。

〇1月の普通鋼鋼材輸入の動向

・ 1月の普通鋼鋼材輸入は、前年同月比42.0%減の18.3万トンと3ヵ月連続の減少で、 単月としては1986年6月(17.6万トン)以来、約23年ぶりの20万トン割れとなった。品種別には、線材(9.2%減)、厚中板(50.4%減)が減少、熱延薄板類(57.4%減)、 冷延薄板類(38.1%減)、亜鉛めっき鋼板(15.9%減)等の薄板3品も大幅に減少した。 ・ 国別には、韓国(40.1%減)は3ヵ月連続、台湾(19.2%減)が9ヵ月連続で減少したほか、中国(63.4%減)も2ヵ月連続の減少と、主要3ヵ国全てが2桁減となった。

1月の全鉄鋼輸出は、前年同月比34.4%・105万トン減の200万トン、4ヵ月連続のマイナス

6.鉄鋼輸出

○ 1月の全鉄鋼輸出は、前年同月比34.4%・105万トン減の200万トンと4ヵ月連続で減少し、比較可能な1964年1月以降では、1972年6月(30.0%減)を上回る過去最大の下げ幅となった。仕向先別では、米国向け(19.5%増)が3ヵ月ぶりの増加となったが、韓国向け(25.6%減)が4ヵ月連続の2桁減、中国向け(35.0%減)、ASEAN向け(47.1%減)がともに3ヵ月連続で減少した。品種別では、厚中板(1.7%増)が2ヵ月連続で増加したが、熱延鋼板類(56.0%減)が4ヵ月連続の2桁減、亜鉛めっき鋼板(39.0%減)、冷延鋼板類(51.4%減)がともに3ヵ月連続の減少となった。

○ 1月の輸出平均単価は、全鉄鋼ベースで前月の1,424ドルを17ドル下回る1,407ドルと、2ヵ月連続で低下した。

7.海外市場

~世界経済に底入れの兆し窺われず、生産の大幅減少が依然続く~

1.概 況

世界経済は底入れの兆しがみられず、悪化の度合いを強めている。10~12月期は、米国のGDP成長率が-6.2%にまで低下、EU主要国もマイナス成長となった。主要国では雇用と消費マインドが悪化、設備投資や鉱工業生産も低迷し、主な製鉄国では厳しい減産対応が続いている。需給環境が改善したとされた中国でも、減産を緩めた途端に流通在庫が急増するなど、未だ需要回復に至っていない。実需が減少するなか、在庫調整を進めるという 困難な状況を脱し、主要製鉄国の生産が上向くまでには、暫く時間を要するとみられる。

2.主要国の鉄鋼需給動向

○ 米国 10~12月期の実質GDP成長率(季調済年率)は改訂値で-6.2%と速報値の-3.8%から下方修正された。鉄鋼需要産業は自動車や住宅建設などの減退が続くなか、12月の鋼材出荷は前年同月比45.7%減と大幅減が続いている。12月の鋼材輸出は前年同月比18.6%減と2ヵ月連続で減少も、08年は年前半の高水準により前年比20.8%増の1,348万トンと過去最高を記録した。一方、1月の鋼材輸入(速報)は前年同月比12.2%減と低調である。

2月の鋼材市況は前月に続いて全面安の展開ながらも落ち込みは軽微に止まっている。

○ 欧州 10~12月期の実質GDP成長率は季調済前期比で-1.5%と、主要国揃ってマイナスとなった。特に、域内最大のドイツは同-2.1%と東西統一以来最大の落ち込みとなった。鉄 鋼需要産業は製造業、建設ともに依然低迷が続いており、1 月の粗鋼生産は前年同月比45.9%減の955万トンと2ヵ月連続して1,000万トンの大台割れとなった。また、域内市況は落ち込みが小幅ながらも多くの品種で軟化が続いている。

〇中国 成長率の鈍化が強まるなかで、全人代は09年のGDP成長率目標を8%と定めている。鉄鋼需要産業は引き続き自動車や家電が減速しており、政府による消費拡大に向けた梃入れ策の効果に期待がされている。こうしたなか、2月の鋼材生産(重複分を含む)は前年同月比8.3%増と7ヵ月振りの増加となった。一方、2月の鋼材輸出は前年同月比49.8%減と4ヵ月連続のマイナスとなった。なお、昨年末以降持ち直しをみせていた鋼材市況は在庫圧力が増大したため2月末は再び鈍化傾向を辿り始めている。

○ 韓国 1月の鉱工業生産は3ヵ月連続で過去最大の下げ幅を更新するなど、景気低迷が更に深刻化している。鉄鋼需要産業は主に自動車や機械類の落ち込みが続いており、建設関連も民間部門は依然低迷している。こうしたなか、1月の粗鋼生産は前年同月比25.6%減と3ヵ月連続のマイナスとなった。1月の鋼材輸出入は、輸出が前年同月比21.6%減、輸入も同47.5%減とともに2桁減となった。

○ タイ 10~12月期の実質GDP成長率は輸出が急減したため前年同期比-4.3%と99年1~3月期以来のマイナスとなった。鉄鋼需要産業は建築を始め、自動車の低迷が続くなど依然低調で、1月の鋼材生産は棒・形鋼、熱冷延薄板、亜鉛めっき鋼板いずれも大きな落ち込みが続いている。なお、12月の鋼材貿易は、輸出が前年同月比33.1%増、輸入が同27.8% 増とどちらも2桁増となっている。

○ マレーシア 10~12月期の実質GDP成長率は輸出と投資の落ち込みから前年同期比0.1%増と01年7~9月期(同-0.4%)以来の低成長となった。鉄鋼需要産業は建設が減退色を強め、輸出型製造業も生産活動が停滞しており、いずれも厳しい情勢にある。こうしたなか、12月の鋼材生産は棒鋼・線材、亜鉛めっき鋼板、溶接鋼管いずれも前年同月を大幅に下回っている。

○ インド 10~12月期の実質成長率は前年同期比5.3%増と04年10~12月期以来の5%台の伸びに止まった。こうしたなかで、中央銀行は3月4日、昨年10月以来5度目となる

政策金利引き下げを行なった。一方、鉄鋼需要は建設や自動車部門で底入れの期待感が出始めており、1月の鋼材生産は前年同月比1.2%増と小幅ながらも増加した。しかしながら、鋼材市況は今のところ上向く気配を見せていないとされる。

全国市中鋼材調査速報 2009年2月 Excel

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